真庭鳳凰は、その存在を目にし、心よりの戦慄を覚えた。
 それと同時に自らの幸運を喜び、打ち震えた。
 この英霊を従えることが出来るのならば、聖杯をめぐる激戦に勝利することだとて夢ではないと、そう思った。

 この世のどんな鎧よりも禍々しい甲殻は、断じて見てくれだけの張りぼてなどではない。
 物の怪の類に列挙するしかないであろう異形の躰を軋ませる姿に、神と呼ばれた男をして背筋を粟立せずにはいられない。
 滲み出る闘気に見境はなく、現にこの狂戦士は今、主であるおのれとすら事を構えたがっているように見えた。

「問おう」

 地の底から響くような声は、しかしその重さに反して喜悦の色を帯びていた。
 鳳凰は、この英霊が何を望み、何を喜んでいるのかを既に理解し終えている。
 武人であれば誰もが当然に持ち得る、強者と戦いたいという欲求。
 卑怯卑劣、権謀術数を生業とする鳳凰には無縁のものであったが、そういった思いを抱くのはごく当然のことだ。
 鳳凰が思うに、この英霊はその欲求が他者のそれに輪をかけて強いのだ。
 まるで己が生命はおろか……魂までも、全てが戦うことの為だけにあるとでも言うかのように。

「此度の宴に我を呼び寄せ、走狗とするのを望んだのは――貴様か」
「然り。我が名は真庭鳳凰。聖杯を求め、おぬしをこの地へと召喚した」

 狂的な執念を気迫として溢れ出させるその姿を目にすれば、常人など小水を垂れて膝を屈することだろう。
 しかし鳳凰は臆することなく彼へ向き合い、恐れなどおくびにも出すことなく問いへ答える。
 畏怖の念は確かにあったが、彼はそれに押し潰されて平伏すほど矮小な人間ではない。
 どれほどの存在であろうとも駒は駒。
 自分を高みへ導く為に呼び寄せたものを賞賛こそすれど、それに屈服するのは道理が通っていない。
 そこはやはり、長年に渡り曲者揃いの忍軍を率いてきた頭取の貫禄といえるだろう。

「ならば良し。此の闘争、我は貴様の望むがままに武勇を奮おう」

 喜悦の色はよりはっきりとしたものになりつつあった。
 考えるまでもなく当然のことだ。
 聖杯戦争は古今東西、あらゆる時代と世界から選り取り見取りの英雄豪傑を呼び寄せ、殺し合わせる儀式である。
 そこに如何ほどの強者が集結するかなど想像に難くはなく、より激しく苛烈な戦いを所望する者にとって、聖杯戦争はまさしく楽園と呼ぶに相応しい宝の山に違いない。
 鳳凰が召喚したこの英霊は、見た目の通りに人ならざるものだ。
 幽世ともまた異なった、星の彼方より来たりし侵略者。
 英霊の種別は狂戦士――最も強力であるが、最も扱いの困難とされる曲者だ。

 しかしながら、戦闘狂いと種が割れているなら話は早い。
 要は適材適所の理論である。
 戦鬼である彼を前線へ出しつつ、自らは影に徹して闇討ちを行い敵の頭数を減らす。
 英霊と使役者の双方の腕前が確かであることが大前提となるが、そこについては問題などあるまい。
 真庭鳳凰はしのびである。それも、最強と呼んでもいい域の。
 暗殺者の英霊にすら悖らない技と力を併せ持つ我ならば、決して他の使役者に遅れを取ることはありえない。
 慢心でも過信でもなく、事実として鳳凰はそう考えていた。
 彼の戦いに誇りはない。
 そもそも、しのびとはそういった概念とは無縁の生き物である。

(そうだ――我は、勝たねばならん)

 真庭の里の復興。
 真庭忍軍の頭として、自分以外にそれを成せる者はよもや居るまい。
 そしてこの戦争へ勝利することがもし叶えば、その悲願は遂げられる。
 真庭の歴史は今後も途絶えることなく永久に続き、没落の底から這い上がって再び歩み始めるのだ。

 その為ならば、子女であれ殺そう。
 老人であれ友人であれ、たとえ己の親であれ。
 一切の例外なく全てを殺し、殺し、殺し、殺し――その生命を贄に、古の願望器を降臨させようではないか。
 杯に満たされた美酒を嚥下する光景を想像し、鳳凰は弧状に口元を歪めた。
 召喚の余韻として右腕の令呪が発し続ける痺れるような痛みですら、自分を賞賛しているように感じる。
 一方で彼の召喚した狂戦士もまた、こらえ切れぬほどの喜びに打ち震えていた。

「感じる――感じるぞッ」

 感じる。
 この都に集まり、蠢く強者の波動を。
 自分はこれから彼らと矛を交え、壮絶な闘争を繰り広げるのだ。
 アークスとはまた異なった趣と新鮮さをもって、その闘いは自分を満たしてくれることだろう。
 そう考えれば考えるほど高揚は際限なく膨れ上がっていく。

「さあ始めようか、猛き闘争をな!」

 号砲は高らかに鳴り響いた。
 これより、彼らの聖杯戦争は幕を開ける。
 神と呼ばれた鳥は願いを求めて闇を駆け。
 巨躯から分かれた戦鬼は闘いを求めて猛り狂う。
 その在り方は決して交わることのないものであったが――

 それでも、彼らは強い。
 戦の達人と呼ぶべき主従が、狩場の街を俯瞰して嘲笑っていた。


【クラス】
バーサーカー

【真名】
ファルス・ヒューナル@ファンタシースターオンライン2

【パラメーター】
筋力A+ 耐久C 敏捷B+ 魔力A 幸運C 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。

【保有スキル】
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

変化:A+
バーサーカーはより凶暴かつ、破壊的な形態へと自らを変化させることが出来る。
ただしそうなった彼はこれまで以上に容赦なくマスターの魔力を食い潰しながら戦闘するため、諸刃の剣である。

ダーカー:EX
あらゆる惑星、地域に現れる正体不明の敵性存在。
ファルス・ヒューナルはその大元である【巨躯】の化身である為、最高ランクとなっている。
ダーカーは浸食と呼ばれる概念の力を有し、この力を用いた攻撃は一時的に相手の最大HPを減少させ、一定時間の間癒えることのない手傷を与える。
ダーカーは必ず身体のどこかに赤いコアを持ち、皆共通してこれを弱点とする。
それ以外にも光属性の攻撃を特効として受けるため、聖女・聖人系の英霊は彼との戦いで有利に立ち回れるだろう。

【宝具】
『星抉る奪命の剣(エルダーペイン)』
ランク:A 種別:対人宝具
触れるものを微塵に切り裂くと謳われる禍々しい鋭刃。
エルダーペインは敵を斬る際、刀身からその生命力を吸い上げる特性を持つ。
つまりバーサーカーは敵手を斬れば斬るほど、殺せば殺すほど、この剣によって万全の状態へと近付いていくのだ。
またバーサーカーが打倒された時、この宝具は消滅せず『ドロップアイテム』としてその場に残る。真名解放の概念を持たない宝具ではあるが、英霊であるなら誰が握ってもその真価を引き出すことが可能だろう。

【weapon】
『星抉る奪命の剣』

【人物背景】
ダーカーを統べる存在と言われる、作中におけるボス的存在『ダークファルス(DF)』の一体。
かつて猛威を奮っていたが、四十年前の闘いで敗北し辺境の惑星ナベリウス遺跡に封印される。しかしストーリー開始後ゲッテムハルトにより復活させられたことで彼を宿主として今代に復活。
手始めにアークス達と激闘を繰り広げた後、封印された本体を引き摺り出して復活し、再び【巨躯】としての肉体を取り戻すに至る。尤も、完全な復活にまでは未だ至っていないらしい。
『ファルス・ヒューナル』という人形形態とDF『巨躯』としての形態を持ち、【巨躯】として顕現した場合には巨星に匹敵する膨大な規模を誇る超巨大生命体として顕れる。
尤も電脳世界という特異な空間に召喚されたこと、マスターの存在という枷があることが災いして、ヒューナル以降への変身を行うことは現状不可能。

【サーヴァントの願い】
聖杯に興味はない。ただ、猛き闘争を望んでいる


【マスター】
真庭鳳凰@刀語

【マスターとしての願い】
真庭の里の復興

【weapon】
素手

【能力・技能】
様々な忍法と鍛え抜かれた身体能力を駆使して戦闘する。

【人物背景】
没落に向かいつつあるしのびの一軍、『真庭忍軍』の頭取を務めるしのび。
それぞれが生物の名を冠している真庭忍軍の中で唯一実在しない動物の名を持つ男。通称『神の鳳凰』。
今作では毒刀・鍍に意識を乗っ取られるよりも前からの参戦で、毒刀はそもそも所持していない。

【方針】
バーサーカーを上手く扱いつつ、確実に聖杯に近付く

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最終更新:2015年12月08日 18:11