0073:最期に想うはビデオと ◆lEaRyM8GWs
「マヒャド!」
フレイザードの右手から放たれた強烈な冷気の下を掻い潜った銀時は、
髪の一部を凍らせながら逆刃刀で
フレイザードの足を薙ぐが、剣と足の間に炎の剣を突き立てられた。
逆刃刀の一撃を止められただけではなく炎の剣が足元の雪を蒸発させた蒸気によって視界が閉ざされる。
刹那、
フレイザードの足に顔面を蹴飛ばされた。
「痛ぇぇぇぇぇっ! 熱ぅぅぅぅぅぅっ! 反則だろこれ! どっちか片っぽにしやがれ!」
後ろに転がりながら銀時は逃げ、顔面を雪に押しつけて冷やす。
その間にルキアは、鞄から支給武器『火竜鏢』を取り出した。
本当は二本一組なのだが、右手を火傷しているので使うのは一本だけ。
宝貝という異なる世界の武器のため使いこなす自信は無いが、破道でろくなダメージを与えられないのだから仕方ない。
フレイザードの半身は氷、ならばそこだけを狙って焼けばダメージを与えられるはずだ。
「行け!!」
ルキアの投げた火竜鏢を見て、
フレイザードはニンマリ笑いながら横っ飛びに避けた。
「ほお、いい武器持ってるじゃねぇか。炎を出しながら飛ぶ武器か、オレと相性がよさそうだ!」
笑いながら
フレイザードは炎の剣を振りかざしてルキアに迫った。
その背後から避けたはずの火竜鏢が飛来する。持ち主の元へ戻るついでに敵を焼き殺すつもりだ。
「甘ェよ!」
フレイザードは振り向き様に炎の剣を振るって火竜鏢を上に弾き飛ばしたが、
火竜鏢はそれで勢いを止める事はなくルキアの手へと戻っていった。
一度武器を投げただけのルキアだが、その呼吸は乱れつつあった。それを見て
フレイザードは悟る。
「なるほど、そいつも宝貝らしいな」
「何? まさかこの武器は貴様の世界の物か!?」
「違ェよ。だがなぁ……オレも持ってんだ、その宝貝ってやつをよォッ!!」
かざした
フレイザードの右腕の中から水塊がポコポコと宙に浮かんだかと思いきや、
一瞬で蜘蛛の巣のように広がりルキアに迫った。
再び火竜鏢で相殺しようとするルキア。互いに宝貝を使いこなしてはいないが、
宝貝本来の強さは、純潔の仙女
竜吉公主の所有していた霧露乾坤網の方が上だった。
火竜鏢は水膜の一部を散らしたものの、すぐ周囲の水が集まり空中で捕縛してしまう。
武器を失ったルキア目掛けて、蜘蛛の巣状の水の一部が矢となって放たれる。
咄嗟に後ろへ飛んで逃げた瞬間、今度は
フレイザードの口から放たれた凍える吹雪が迫る。
「くっ……!」
ある程度距離が離れていたため身体の前面にわずかな氷が張りつくだけで済んだが、これでは動きが鈍ってしまう。
「霧露乾坤網! オレに素晴らしいプレゼントを持ってきてくれたその小娘を楽にしてやりな!」
生後一歳の化け物は、外見をはるかに越える年齢の死神の女を殺すよう宝貝に命じた。
火竜鏢を捕らえたままの霧露乾坤網は、再び水の矢を放った。
「クハハハハハハハハガゲッ!?」
フレイザードの笑い声を遮るよう、その口腔から刀の切っ先が飛び出していた。逆刃の切っ先が。
「おいおい、女の子ばっかに夢中になるなんてアンタ結構いい趣味して――」
「ガアアッ!!」
人間であれば致命の一撃のはずなのに、
フレイザードは口から飛び出した逆刃刀を右手で掴んで凍らせた。
背後からの奇襲に成功し気が緩んでいた銀時は、予想外の事態に慌てながら逆刃刀を引き抜こうとする。
だが
フレイザードの腕力には遠く及ばず、刀を引き抜けない。
「グガッ……ガッ!!」
苦しそうというよりも喋りにくいといった様子で言葉にならない声を出した
フレイザードは、
凍りついた逆刃を力強く握り締め、真っ二つに砕いた。
「嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
驚愕した銀時は逆刃刀を手放し、
フレイザードから距離を取ろうとした。
だが振り向き様に放たれた
フレイザードのメラゾーマが、銀時の左足に直撃する。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
フレイザードは喉から口へと貫いた逆刃刀を引っ張り出し、雪の上に放る。
「ゲベッ……デ、テメェッ、やってくれるじゃねぇか」
砕けた口周辺の岩石の修復が済んだのか、
フレイザードは何事も無かったかのように喋り出した。
だがそれでも受けたダメージを癒すため、ある程度の生命力を消費していたが。
雪面を転がって炎を消す銀時にトドメを刺そうとした
フレイザードだが、背後の足音に気づき振り向く。
空中で制止したままの霧露乾坤網に捕まっている火竜鏢を、ルキアが引っ張っていた。
「オイッ! それはオレ様の物だァー! 霧露乾坤……」
再び宝貝を操る
フレイザードだが、再び銀時の方を振り返った。
折れた逆刃刀を拾い、
フレイザードの足を斬ろうとしている。
「この死に損ないがァッ!」
「その武器を持って逃げろぉぉぉぉぉぉっ!!」
フレイザードの炎の剣が銀時の右腕を貫き、傷口を焼く。
「小僧っ!」
「ぐぅっ……いいから逃げろ! その武器をこいつに渡すんじゃねぇ! 俺達だけじゃ勝て――」
「黙りやがれッ!!」
フレイザードは炎の剣を手放し、拳を燃え上がらせて銀時の頭部に体重を乗せた一撃を叩き込む。
「ぐがっ! ……に……逃げ…………」
「――すまぬっ!」
ルキアは霧露乾坤網から火竜鏢を引きずり出し、
フレイザードに背を向けて走り出した。
「しまった! 霧露乾坤網、奴を……」
「火竜鏢! 頼む!」
ルキアは火竜鏢を足元に投げて雪面を焼き払った。
フレイザードがやったように蒸気でその身を隠す。
これでは霧露乾坤網の矢を放とうにも狙いがつけられない。やむを得ず霧露乾坤網を自身の腕に戻し、叫ぶ。
「小娘がアァッ!!」
フレイザードは目を血走らせながら蒸気の中へ身を投じ、ルキアの後を追う。
しかしルキアは火竜鏢を投げさらに広範囲の雪を溶かし蒸気の煙幕を広げていた。
ルキア本人も視界の悪さのせいで足場の確認も出来ない状況だが、
フレイザードに見つかるよりはマシだ。
しばらくして――
フレイザードは立ち止まる。完全にルキアを見失ったからだ。
「クソッ……火竜鏢、面白ェ武器だったのによぉ。逃がさねぇぞあの女ァ」
身体の中に埋めておいた遊戯王カードを一枚取り出した
フレイザードは、それを天にかざして叫んだ。
「出ろ! 幻獣王ガゼル!!」
その命に従い、カードから角を生やしたライオンのようなモンスターが生まれる。
カードには『走るスピードが速すぎて、姿が幻のように見える獣。』と書かれていた。
「さあ行け! お前の足であの小娘を探して殺してこい!
何なら他の獲物でも構わねェ、誰か見つけたら殺して武器を奪って戻ってくるんだ。お前が消える15分以内にな!!」
その言葉に従い幻獣王ガゼルは凄まじいスピードで雪原を駆け出した。
「……クソッ、あの小娘を見つけられるかどうかは微妙だな。
今さら後悔してもしょうがねぇが、カードを使ったのはもったいなかったか?」
フレイザードは幻獣王ガゼルのカードを体内にしまうと、自身もまた雪原を歩き出した。
今はとりあえずどこかで休み体調を万全にしよう。それからまた狩りの始まりだ。
頭蓋を砕かれ、頭皮を焼かれ、それでも彼はまだかすかに生きていた。あくまでも、かすかに。
「…………くそぉ……」
痛みは無い、ただ身体の感覚がやけに希薄だった。
「こんな……とこ……ろで…………」
自分が立っているのか寝転んでいるのかも分からない。視界は白くぼやけている。
「延滞した……ビデオ、まだ……返し…………」
その中に眼鏡をかけたオタクっぽい男と、うるさそうな少女の姿が浮かぶ。
「……延滞料…………」
そうだ、こんな所で死ぬ訳にはいかない。まだやるべき事があるのだから。
立ち上がって、あの化け物を倒して、あいつらと一緒に元の世界へ帰って、延滞料が溜まる前にビデオを返さねば。
あいつらと一緒に元の世界に帰って。
「…………」
しかしもう銀時には、指一本動かす力も残っていなかった。
二人の姿が闇に埋もれ、彼自身の意識も深い深い闇の淵へと落ちていく。落ちていった……
【場所:北海道南西部/黎明~早朝】
【フレイザード@ダイの大冒険】
[状態]:疲労、成長期、核鉄で常時ヒーリング
[装備]:霧露乾坤網@封神演義、炎の剣@BASTARD!! -暗黒の破壊神-、核鉄LXI@武装錬金
[道具]:荷物一式
遊戯王カード@遊戯王(『青眼の白竜(次の0時まで使用不能)・サイコショッカー(罠破壊)
幻獣王ガゼル(現在使用中、残り15分)・他二枚』)
[思考]:1 どこか安全な場所で休みながら幻獣王ガゼルの帰りor15分経過を待つ。
2 ルキアを殺して火竜鏢を得る。
3 出会った参加者を出来る限り殺す。ダイ、ポップ、マァムを優先。
4 優勝してバーン様から勝利の栄光を。
【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]:疲労、右腕に軽度の火傷
[装備]:火竜鏢@封神演義
[道具]:荷物一式
[思考]:1 フレイザードから出来るだけ遠くへ逃げる。現在西へ逃亡中。
2 仲間を集めてフレイザードを倒す。仲間は一護優先。
【坂田銀時@銀魂 死亡確認】
【残り117人】
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最終更新:2024年08月15日 07:22