0072:魁!!一護100%~血を吐くような思いと共に~





 ラオウが去ってしばらく後。

「東城……西野……さつき……唯……こずえちゃん……ちなみ……」

 圧倒的な闘気に中てられたためか、九死に一生を得た安堵のためか、
真中は再度放心し、独り、何か、自分でもよく分からないことを呟き続けていた。
それを見て、一護は真中の元に駆け寄る。
自分の理解をなにか斜め上に超越した風な生命体――江田島平八に、一応の注意を払いつつも、だが。

「おい、アンタ、大丈夫か?」
「あぁ……死ぬ前に、あの苺パンツを、もう一度、ファインダー越しに、見たかった……」
「おい、アンタ、しっかりしろ!性癖は果てしなく深そうだが、外傷は比較的浅いぞ!」

 真中の外傷といえば、転倒した際についた擦り傷がせいぜいだった。血すら滲んでいない、何の問題もないようなかすり傷。
実際のところは、真中は手首を捻挫しているのではあるが、
闇の中、虚ろに何事かを呟き続ける真中を見て、それに気付けというのは一護には少々酷なことであろう。
だが、と一護は危惧する。自分の家は医院を経営している。だから、人間の壊れやすさも、ある程度は知っているつもりだ。
確かになんでもないような傷だ。が、自分が見逃していただけで、もしかしたら先程転倒した際に頭でも打っていたのかもしれない。
(この場合、頭を振ったら悪影響だったか?)
咄嗟に、肩を揺すっていた手を止める。しかし、自分に出来ることなど多寡が知れている。
(こんなことなら、ユズやカリンみたいに、看護士の真似事でもしとくんだったか)
「いちごパンツの美少女……東城……東城の文才は最高だ……最高……そうだ、俺は最高の映画を撮らなきゃ……」
「おい、おいってば!(くそっ、錯乱してやがるのか。つうか、なんでいちごパンツから映画が連想されんだ?)」
「西野……西野の作ったケーキを……って、うわぁ!!」

 真中が我に返ったとき、眼前にいたのは頭髪をオレンジ色に染めた、いかにもヤンキー然とした青年だった。
(カツアゲ……てこんなゲームでカツアゲも何もないっていうか、殺される?!)
泡を食いつつ、ニューナンブを持ち上げようとしたものの、激痛に襲われ思わずそれを取り落としてしまう。
「おい、アンタ!手ェ怪我してんのか?大丈夫か?」
「うあ、やめて、殺さないでくれ!」
「殺さねぇよ!つうか、殺す気ならとっくに殺ってるっての。まぁ、いいか。オレは黒崎一護。アンタは?」
「俺の名――

     「わしが男塾塾長、江田島平八である!!」

                    ――っていうんだけど」

「平八か、パチキとかしてきそうな名前だな……って、オッサンじゃねーよ!つーか声でかすぎるよ!つーか名前似合い過ぎてるよ!」




 ――――等と一悶着はあったものの。現在、三人は今後の方針について話し合っていた。
真中が北斗七星って八星だったっけと聞いて、 一護が哀れみの涙を零すのをこらえたり、
豪放磊落を地で行くような平八の声量に、一護が「乗ったヤツ」に見つかるのではないかと密かに肝を冷やしたり、といった塩梅ではあるが。
こういうキャラは自分ではなく、知り合いの改造魂魄が担うべきじゃないかと、
血を吐くようなストレスのもと、一護が心の中で慟哭しかけたのも余談ではある。

「俺は、東城や西野、さつき……北大路を探したい。皆、普通の女の子なんだ、きっと震えて助けを待ってる」
「オレはルキア、朽木ルキアって奴を探してる。黒髪で時代がかった喋り方をする、小さいやつなんだが、知らねェか?」
 一護の言葉に、二人は首を振る。真中はすまなそうに、平八は嘆かわしいといった表情で。
都合よくは行かねぇか、と嘆息する一護。
それを受けて、平八が言葉を発する。
「わしはこの下らんゲームとやらを止めるつもりだ」
「オッサンの知り合いはいねぇのか?心配していたりは?」
「合流できるに越したことは無いが、わしの塾生には、こんな戯けたゲームに乗る者も、死ぬ者もおらんわい」
「そうか……で、具体的に、これからどうする?」
「……俺は、東京に行きたい。東城達がどこにいるのか分からないなら、人が集まるところに行けば一番会える確率が高いと思うから」
「あァ?人が集まるってことは危険だってことだぜ。さっきみたいな奴がまた居たらどうするんだ?」
「俺、弱いけど。でも、皆、大切な人だから。
 確かに、人が集まる場所は危険だと思うけど、危険を避け続けて、あいつ等になにか遭ったら、きっと、後悔すると思うから」

 少しの沈黙。そして。

「なぁ。しばらく、三人で行動しねェか?」
「三人で?」
「人を探すんでも、ゲームを止めるんでも、目的地が分からない以上人数が多いに越したことはねェだろ。見落としも減るだろうしな」
「いや、なら三手に分かれたほうが」
「……たく、武器も使えねぇんだろ。ミイラ取りがミイラになったらどうすんだよ」

 そういうと、一護は誰の返事も待たず、自分のデイパックと真中のデイパック、二つを持ち上げて行動を開始する。
面食らったかのように真中も立ち上がり、一護の後を追う。その様子を、平八が微笑ましいものを見るような目で見ていた。





【群馬県の小屋周辺/黎明~早朝】

【真中淳平@いちご100%】
【状態】手首捻挫
【装備】ニューナンブ@こち亀
【道具】水6分の1、食料1食分消費した支給品一式
【思考】1.知り合いとの合流
    2.東京を目指す

【江田島平八@魁!!男塾】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明
【思考】1.「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!」
    2.「日本男児の生き様は色無し恋無し情けあり」

【黒崎一護@BLEACH】
【状態】健康 (名簿に写真がないため、メガネ藍染かオールバック藍染かは知らない)
【装備】シャハルの鏡@ダイの大冒険
【道具】支給品一式
【思考】1.目の前で襲われている奴らがいたら助ける
    2.朽木ルキアとの合流
    3.東京を目指す


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050:魁!!一護100%~死兆星は危険な輝き~ 真中淳平 119:ん?間違ったかな
050:魁!!一護100%~死兆星は危険な輝き~ 江田島平八 130:天才の知略
050:魁!!一護100%~死兆星は危険な輝き~ 黒崎一護 130:天才の知略

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最終更新:2024年08月16日 21:05