0179:歯車は常に絡み合い… ◆HKNE1iTG9I





そこに居るのは、二人の男。そして、無数の、無数の黒い蝶。

「ふん…先客が居たのか」

 蝶々仮面の男、蝶野攻爵ことパピヨンは、不満げな呟きを漏らす。
目の前に居たのは、一人、何かに取り憑かれたかのようにうわ言を奏でる金髪の男、中川圭一のみ。
つまらなさそうな顔で、廃人のようになった中川の顔を一瞥すると、パピヨンは中川の襟元をつかみ、引き上げ、その身体を手刀で貫いた。

 即死ではなかったらしく、未だに血を吐きつつも空ろな、媚びたような笑いを零す中川への興味は霧散し、
代わりに先客への警戒心が這い寄るようにパピヨンの思考を侵食していく。

 (フン…先客は何故この男を殺していかなかった?わざわざ殺すこともないということか?
  それとも、殺すことは出来なかった?殺す以上に優先する事情ができた?それとも――)

 今も何処かに潜んで、俺を殺そうと企んでいる―――?

 敵の能力は、自分の高祖父、Dr.バタフライと同じようなもの。相手の精神、脳髄に直接働きかけ、正気を砕くチカラ。
ならば、その媒介は何だ?ご先祖様と同じように、光?それとも音?匂い?射程距離は?幻覚に陥れられたとして、回復するには何が必要?
パピヨンの脳裏に様々な可能性がよぎり、流れ、検証され、消えていく。

 (戦闘になったとして…この男に、加えられて間もない物理的な損傷は見当たらない…即効性の毒の可能性は低い。
  よしんば、この肩の傷口に毒を注がれていたとして…先程の狙撃の精密さからみて、それもないか。
  やはり、物理的干渉力を持たない精神攻撃…
  ならば、屋内で戦う方がいい。攻撃の媒介も少しは防げるだろうし、俺のニアデスハピネスならこの程度の障壁は苦も無く爆破できる)

 自分の武装錬金、ニアデスハピネス。有視界内でなくては起爆できない、総量がかなり削減されているなどを差し引いても、
今はコレを使わざるを得ない状況だとパピヨンは認識した。まだ見ぬ存在、一輝を侮れぬ脅威だと確信したがために。

 一部の隙も無く、蝶々仮面は辺りを睥睨する。無数の蝶が羽ばたく世界を、あくまでエレガントに。
その姿、死を告げる妖精のように―――

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 (ナルトの小宇宙がおかしい…!)

 少年、一輝は既にその場には居なかった。
ナルトに起こった異変、強大、かつ凶悪なチカラの暴走を感知し、そちらへと既に向かっていたからだ。

 先程感じた、大きな小宇宙。一つは狙撃手の居た場所へ向かって、一つはナルト達から離れるように。
そして、ナルトからは。黒い、暗い、獣のような小宇宙。噴出すように、染み出すように。暴れまわるようで、侵しつくすように。

 確かなのは、ナルトに何かが起こったということ。そして、それは緊急を要する事態であるということ。
一輝は走る。焦燥に駆られて。憤激に任せて。決意を宿して。


 それは、主催者に対する、純然たる怒り。炎のような、煌く怒り。


 不死鳥は飛ぶ。輝く翼を背負うかのように。黒い蝶を顧みることなど毛頭なく。

 不死鳥は飛ぶ。その姿、気高い天空の覇者の如く。

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 ヒソカは笑う。抑えきれない喜びに。悦びに。歓びに。
あの少年も美味しそうだ。まだまだ実践不足だが、輝くような可能性を秘めている。
今はまだ駄目だ。まだ、殺してしまうわけにはいかない。このゲームで磨き上げられれば、もっと、もっと美味しく実る。
楽しみだ。楽しみだ。楽しみだ。

(やだなぁ…興奮してきちゃったよ)

 人知れず、ヒソカは昂ぶる。昂ぶりながら思うことは一つ。

「誰でもいいや。この興奮…鎮めなきゃ…」

 幽鬼のような表情。恐らく、次に遭遇した相手は、その実力に関係なく、躊躇無く殺す気だろう。
奇術師は震える。その愉悦を想像するだけで、もう快感を覚えだして。

 何の変哲も無いただの生き物が、ワン、ツー、スリーで亡骸に変わる。それはヒソカの得意な奇術。

 奇術師が駆け抜けた跡、いくつかの鴉の死骸が道を彩った。赤と、黒。そして、アスファルトの灰色。
そのコントラストは、妙に寂しく、華々しかった。

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 ――しばらくして。


 「何をしてるんだい?」
 「………」

 パピヨンは、背後から掛けられたヒソカの声に、渋面をもって振り返る。つまりは、そういうことだ。
先客は既にこの場を離れていたのだろう。内心、やるせない思いを抱きつつも、パピヨンには今、返すべき言葉が無かった。
おもむろに、横たわる中川を持ち上げると、

 「フフフ…アハハハハハハ…ゴポ…冗談キツイですよ…せんぱ!?」

 ドサッ。

 首を引きちぎり、乱暴に投げ捨てる。中川の首は、一度鈍くバウンドすると、コロコロと転がり、壁にぶつかる。
パピヨンはそれを掴み上げると、首輪を抜き取り、ビルの窓から乱暴に投げ捨てた。アスファルトに、また、赤と灰色の花火が一輪。
 「さて、目的のものは手に入れた」
 「で、何をしてたんだい?」
 「……これから、邪魔が入りにくそうな、南九州に向かう。ついでに工具も欲しいな…」

 二人の怪人は姿を消した。奇しくも、様々なところで様々な者たちが、今、脱出のための方策を考えてはいたが。
それが実るのかは誰も知らない。知る術も無い。

 一陣の風が流れていく。





【福岡県(市街地)/午前】
【パピヨン@武装錬金】
 [状態]:健康(打撲は再生しました)
 [装備]:核鉄LXX@武装錬金(ニアデスハピネス少量消費)
 [道具]:荷物一式(食糧二食分消費)×2
 [思考]:1、内心、憤慨している。南九州へ移動(戻る)
     2、知り合いとの合流、ヒソカと行動

【ヒソカ@HUNTER×HUNTER】
 [状態]:健康、全身に軽い打撲、裂傷(処置済み)、中程度の疲労
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式(食糧一食分消費) ベアークロー(片方)@キン肉マン、スナイパーライフル(残弾13発)
 [思考]:1、誰か殺したい
     2、剣八、ナルト、玉藻を含む強者と戦いたい
     3、知り合いとの合流、パピヨンと行動

【一輝@聖闘士星矢】
 [状態]:健康
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式
 [思考]:1、突然小宇宙が乱れたナルトへの救援
     2、ハーデスを倒す


【中川圭一@こち亀 死亡確認】
【残り101人】


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175:Lie!Lie!Lie! ヒソカ 215:すっぱい15
175:Lie!Lie!Lie! 一輝 183:チャクラ爆発!妖孤忍法帖!!の巻
175:Lie!Lie!Lie! 中川圭一 死亡

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最終更新:2023年12月28日 13:09