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鳥 『鳥篭姫』 - (2006/10/21 (土) 11:29:47) の1つ前との変更点

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「鳥は好きよ。見ていると、私も一緒に飛んでいけるような気がするもの」   彼女はよくそう言って窓の外を眺めていた。 「ふうん。小鳥でも飼いたい?」 「ううん、見てるだけでいい」 「閉じ込めてしまうのが可哀想とか?」 「ううん、そういうわけでもないけど。鳥篭の中の小鳥は、たぶん、主に歌を聞いてもらえて嬉しいわ。でも、主がいなくなったらどうするのかしら。主がい なくなっても歌い続けるのかしら」 #ref(20793.gif)   そう言った彼女の姿が篭の中に囚われた鳥のように見えて、私はいたたまれなくなって彼女の手をとった。 「アメジスト?」 「……庭に、出ようか」   中庭の庭園に足を踏み入れると、鳥たちがいっせいに飛び立ち、一瞬喧騒に包まれる。舞い落ちる真っ白な羽の中で、鳥を見つめる彼女。   私は庭園を歩く彼女を見ながら、先ほどの主と小鳥の話を考えていた。   ずっと一緒にいればいい。互いに朽ち果てるまで、共に。そんな馬鹿げた考えが頭をかすめ、私はそれを払い飛ばすかのように頭を振った。 (ずっと一緒になんていられるわけがない) 「……アメジスト?」   いつの間にかそばに来ていた彼女に声をかけられ、我に返る。 「また難しいお顔になってる」 「そう? ごめんごめん」 「なんだかごまかされた気がするわ」 「君を見てたんだよ」 「もう、またそうやってごまかす」   頬を膨らませる彼女と笑う。   今はこうして、共にさえずっていよう。いつか別れの日が来るとしても、それまでは、せめて穏やかな日々を送れるように。   小鳥たちはいつまでも、寄り添いたたずんでいた。
「鳥は好きよ。見ていると、私も一緒に飛んでいけるような気がするもの」   彼女はよくそう言って窓の外を眺めていた。 「ふうん。小鳥でも飼いたい?」 「ううん、見てるだけでいい」 「閉じ込めてしまうのが可哀想とか?」 「ううん、そういうわけでもないけど。鳥篭の中の小鳥は、たぶん、主に歌を聞いてもらえて嬉しいわ。 でも、主がいなくなったらどうするのかしら。主がいなくなっても歌い続けるのかしら」 #ref(20793.gif)   そう言った彼女の姿が篭の中に囚われた鳥のように見えて、私はいたたまれなくなって彼女の手をとった。 「アメジスト?」 「……庭に、出ようか」   中庭の庭園に足を踏み入れると、鳥たちがいっせいに飛び立ち、一瞬喧騒に包まれる。舞い落ちる真っ白な羽の中で、鳥を見つめる彼女。   私は庭園を歩く彼女を見ながら、先ほどの主と小鳥の話を考えていた。   ずっと一緒にいればいい。互いに朽ち果てるまで、共に。そんな馬鹿げた考えが頭をかすめ、私はそれを払い飛ばすかのように頭を振った。 (ずっと一緒になんていられるわけがない) 「……アメジスト?」   いつの間にかそばに来ていた彼女に声をかけられ、我に返る。 「また難しいお顔になってる」 「そう? ごめんごめん」 「なんだかごまかされた気がするわ」 「君を見てたんだよ」 「もう、またそうやってごまかす」   頬を膨らませる彼女と笑う。   今はこうして、共にさえずっていよう。いつか別れの日が来るとしても、それまでは、せめて穏やかな日々を送れるように。   小鳥たちはいつまでも、寄り添いたたずんでいた。

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