「ビンボー人と、チョコレート」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ビンボー人と、チョコレート - (2007/02/10 (土) 06:51:47) の1つ前との変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

  本業とは別にアルバイトをやっていると、人間関係がけっこう深まるというもの。~ 「お疲れ様です」~   帰宅途中、そう言って声をかけてきてくれたのは瑪瑙ちゃんだった。~   今日は同じバイト先で働いていたが、予想以上に忙しくて話ができなかったなぁ。~ 「瑪瑙ちゃんこそお疲れ」~ 「いや、あなたの方が大変そうだったから」~ 「いやいや、瑪瑙ちゃんだって……」~   って、こんなやりとりじゃキリがない。何か話題を……。~ 「ところで、瑪瑙ちゃん帰り道こっちだっけ?」~ 「あ、違うんです。あなたに渡したい物があったから」~   普段使っている鞄から、ラッピングされた小さな箱を取り出す。~   小さいとはいえ、人間サイズでの話。宝石乙女は人間より小さいから、その箱は瑪瑙ちゃんの手に余るほどのサイズだ。~ 「いつもありがとうございます」~   そしてその箱を差し出してくる……これはつまり。~ 「んと、チョコレート? 季節的に考えて」~ 「はい」~   そっか、バレンタインデーだもんなぁ……ずいぶんとご無沙汰だが、義理チョコでももらえるのは嬉しい。~   チョコ……チョコレートかぁ。~   何年ぶりだろう、食べるの。~ 「ありがとう。今日はいいご馳走ができたよ」~ 「ご、ご馳走なんてそんな……大げさですよぉ」~ 「だってチョコレートなんて食べた記憶ほとんどないんだもん……ないんだもん!!」~   やばい、涙が溢れる。~ 「ま、まぁまぁ……」~   差し出されるハンカチ。それを受け取り、涙を拭く。~ 「うぅ、すまないねぇホント」~ 「あはは……そ、それじゃあ僕はこれで」~ 「ああ、また明日……ホントにありがとう、本当にっ!!」~ 「はは……あ、味わって食べて下さいね」 「化石っ、今日はご馳走だっ!」~   瑪瑙ちゃんのチョコレートをもらってテンション最高の俺。~   家に帰って、早速その箱をテーブルに置く。~ 「なんやー? マスタ、ごっつ嬉しそうやね」~ 「当然だ。ご馳走だ、チョコレートだ!」~ 「チョコ? ギブミーのあれやのっ?」~ 「おう、ギブミーチョコレートだ!!」~ 「やったなマスタ……って、米兵から空箱もろたとちゃうよね?」~   なんだか話が変な方向に……。~ 「ンなわけないだろー。どれ、さっそく開封だ」~ 「わくわくさんやなー」~   というわけで、瑪瑙ちゃんにもらったチョコとご対面。~   包装紙を綺麗にはがし、出てきた白い箱を開けてみると……。~ 「……お」~ 「……ハート型やな」~   うぅむ……深い意味はないと思うけど……言っては悪いが、瑪瑙ちゃんらしからぬチョコレートだ。~   しかもデコレーションとか、すごく手が込んでいるような。~ 「マスタ、もしかして自慢したかったん?」~ 「は? 何でそうなるんだ」~ 「だって……バレンタインデーでハートのチョコちゅーたら、本命やん」~   まぁそういう考え方もあるか。~   しかし瑪瑙ちゃんが俺に本命? 絶対有り得ない。~ 「いやいや、きっと深い意味ないって。瑪瑙ちゃんのことだから手の込んだ物を作ったんだろ」~ 「そか……相手は瑪瑙ちゃんやな」~ 「いやだから……って、化石さん? なんだか背景が歪んでるように……」~ 「……ん、別に。うち、気にしてへんよ、うん……別に」~   え、もしかして俺誤解されてる?~   って、何を誤解されるんだと。誤解するようなこと別にないだろ。~ 「あのさ、なんか全然的はずれなこと考えてない?」~ 「ンなことないよー。うん、ないよー」~   ……まぁ、結局この妙なムードが一日続いたわけで。~   チョコの甘さが、わずかに感じられなかったような、そんな感じだった。 「あ、あの……マスター」~ 「あぁ瑪瑙か。どうしたんだ?」~ 「うん、あのね……あれ、これは……あれれ?」~ 「ん?」~ 「……どうしよう。渡すの、間違えた……」~ 「お、おい、顔が青いぞ。大丈夫か?」 ----
  本業とは別にアルバイトをやっていると、人間関係がけっこう深まるというもの。 「お疲れ様です」   帰宅途中、そう言って声をかけてきてくれたのは瑪瑙ちゃんだった。   今日は同じバイト先で働いていたが、予想以上に忙しくて話ができなかったなぁ。 「瑪瑙ちゃんこそお疲れ」 「いや、あなたの方が大変そうだったから」 「いやいや、瑪瑙ちゃんだって……」   って、こんなやりとりじゃキリがない。何か話題を……。 「ところで、瑪瑙ちゃん帰り道こっちだっけ?」 「あ、違うんです。あなたに渡したい物があったから」   普段使っている鞄から、ラッピングされた小さな箱を取り出す。   小さいとはいえ、人間サイズでの話。宝石乙女は人間より小さいから、その箱は瑪瑙ちゃんの手に余るほどのサイズだ。 「いつもありがとうございます」 #ref(http://obsidian.no.land.to/jm/f/jm1051.gif)   そしてその箱を差し出してくる……これはつまり。 「んと、チョコレート? 季節的に考えて」 「はい」   そっか、バレンタインデーだもんなぁ……ずいぶんとご無沙汰だが、義理チョコでももらえるのは嬉しい。   チョコ……チョコレートかぁ。   何年ぶりだろう、食べるの。 「ありがとう。今日はいいご馳走ができたよ」 「ご、ご馳走なんてそんな……大げさですよぉ」 「だってチョコレートなんて食べた記憶ほとんどないんだもん……ないんだもん!!」   やばい、涙が溢れる。 「ま、まぁまぁ……」   差し出されるハンカチ。それを受け取り、涙を拭く。 「うぅ、すまないねぇホント」 「あはは……そ、それじゃあ僕はこれで」 「ああ、また明日……ホントにありがとう、本当にっ!!」 「はは……あ、味わって食べて下さいね」 「化石っ、今日はご馳走だっ!」   瑪瑙ちゃんのチョコレートをもらってテンション最高の俺。   家に帰って、早速その箱をテーブルに置く。 「なんやー? マスタ、ごっつ嬉しそうやね」 「当然だ。ご馳走だ、チョコレートだ!」 「チョコ? ギブミーのあれやのっ?」 「おう、ギブミーチョコレートだ!!」 「やったなマスタ……って、米兵から空箱もろたとちゃうよね?」   なんだか話が変な方向に……。 「ンなわけないだろー。どれ、さっそく開封だ」 「わくわくさんやなー」   というわけで、瑪瑙ちゃんにもらったチョコとご対面。   包装紙を綺麗にはがし、出てきた白い箱を開けてみると……。 「……お」 「……ハート型やな」   うぅむ……深い意味はないと思うけど……言っては悪いが、瑪瑙ちゃんらしからぬチョコレートだ。   しかもデコレーションとか、すごく手が込んでいるような。 「マスタ、もしかして自慢したかったん?」 「は? 何でそうなるんだ」 「だって……バレンタインデーでハートのチョコちゅーたら、本命やん」   まぁそういう考え方もあるか。   しかし瑪瑙ちゃんが俺に本命? 絶対有り得ない。 「いやいや、きっと深い意味ないって。瑪瑙ちゃんのことだから手の込んだ物を作ったんだろ」 「そか……相手は瑪瑙ちゃんやな」 「いやだから……って、化石さん? なんだか背景が歪んでるように……」 「……ん、別に。うち、気にしてへんよ、うん……別に」   え、もしかして俺誤解されてる?   って、何を誤解されるんだと。誤解するようなこと別にないだろ。 「あのさ、なんか全然的はずれなこと考えてない?」 「ンなことないよー。うん、ないよー」 #ref(http://obsidian.no.land.to/jm/f/jm1052.gif)   ……まぁ、結局この妙なムードが一日続いたわけで。   チョコの甘さが、わずかに感じられなかったような、そんな感じだった。 「あ、あの……マスター」 「あぁ瑪瑙か。どうしたんだ?」 「うん、あのね……あれ、これは……あれれ?」 「ん?」 「……どうしよう。渡すの、間違えた……」 「お、おい、顔が青いぞ。大丈夫か?」 ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
目安箱バナー