乙女の木登り - (2007/05/01 (火) 21:12:57) の最新版との変更点
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「雲母ちゃーん、降りなきゃダメですよー」
たまには外に出ようと、雲母ちゃんに誘われた散歩。
最初は二人で林道を歩いていただけだったけれど、一際大きな木を見つけた雲母ちゃんが、そのまま木登りを始めてしまった。
ドレスが破れたりしたら大変なのに、降りてくる気配はない。
その上、私に向かって手招きをしてくる……うぅ、木登りなんて出来ないのに。
気づけば、雲母ちゃんは自分の身長の何倍も高い場所の枝に座っている。
荒巻ちゃんを背負って、よくあそこまで登れると思う……。
「……いい眺めだぞ」
雲母ちゃんの声が、頭の上から聞こえる。
ちょっと不思議な気分。
「そ、それはそうかも知れませんけど」
「登れ」
「出来ないですよぉー……え?」
目の前に垂れ下がるロープ。
「体に巻き付けろ」
いったいどこに持っていたんだろう……。
「は、はい」
雲母ちゃんの言うとおり、垂れ下がったロープを自分の体にしっかり巻き付ける。
何をやるか、大体想像はつくけれど……。
「巻いたか?」
「一応……」
「よし……しっかり掴まれ」
その言葉と同時に、私の体が宙に浮かぶ。
小さな体なのに、どうしてこんなに力があるんだろう。
「す、スカートがぁー」
「誰もいない、誰も見ていない」
「そうですけどぉ……」
「もう着く。我慢しろ」
やっと雲母ちゃんと顔を合わせられる高さまで……た、高いっ!
「震えてるぞ?」
「た、高いですよぉ~……」
「当たり前だ。怖いのか?」
図星。
あまり高いところに登ったことがないから、どうしても体が震えてしまう。
「あうぅ……」
「下を見るな。こっちを見ろ」
雲母ちゃんの指差す先を見てみる。
青い空、様々な色の屋根、大きな建物。
……久々に、いい眺めを見た気がする。
「きれいですねー」
「声が震えてるぞ」
「……あはは」
きれいだけど、やっぱり高いのは怖かった。
「嫌か?」
唐突に、雲母ちゃんが尋ねてくる。
「え、そんなこと全然思ってませんよっ」
「そうか」
風景に目をやる雲母ちゃん。
「たまには、見下ろすのもいい。そう思わないか?」
私も、同じように風景を眺める。
「人も、建物も、木も、見上げているだけではつまらない」
「そうですね。でも私、木登り苦手ですから」
下にいるときよりも、肌に感じる風が強い。
木の葉のこすれる音が、いつもより近くに聞こえる。
緑色の葉が、スカートに落ちた。
「私に任せろ。いつでも連れてきてやる」
「え、それは……はい、お願いします」
本当はちょっと怖いけれど。
でも、雲母ちゃんの言うとおり。
たまには、こういうのもいいと、そう思う。
「帰ったら洗濯、しましょうね」
「……うん」
雲母ちゃんと、手をつなぐ。
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「雲母ちゃーん、降りなきゃダメですよー」
たまには外に出ようと、雲母ちゃんに誘われた散歩。
最初は二人で林道を歩いていただけだったけれど、一際大きな木を見つけた雲母ちゃんが、そのまま木登りを始めてしまった。
ドレスが破れたりしたら大変なのに、降りてくる気配はない。
その上、私に向かって手招きをしてくる……うぅ、木登りなんて出来ないのに。
気づけば、雲母ちゃんは自分の身長の何倍も高い場所の枝に座っている。
荒巻ちゃんを背負って、よくあそこまで登れると思う……。
「……いい眺めだぞ」
雲母ちゃんの声が、頭の上から聞こえる。
ちょっと不思議な気分。
「そ、それはそうかも知れませんけど」
「登れ」
「出来ないですよぉー……え?」
目の前に垂れ下がるロープ。
「体に巻き付けろ」
いったいどこに持っていたんだろう……。
「は、はい」
雲母ちゃんの言うとおり、垂れ下がったロープを自分の体にしっかり巻き付ける。
何をやるか、大体想像はつくけれど……。
「巻いたか?」
「一応……」
「よし……しっかり掴まれ」
その言葉と同時に、私の体が宙に浮かぶ。
小さな体なのに、どうしてこんなに力があるんだろう。
「す、スカートがぁー」
「誰もいない、誰も見ていない」
「そうですけどぉ……」
「もう着く。我慢しろ」
やっと雲母ちゃんと顔を合わせられる高さまで……た、高いっ!
「震えてるぞ?」
「た、高いですよぉ~……」
「当たり前だ。怖いのか?」
図星。
あまり高いところに登ったことがないから、どうしても体が震えてしまう。
「あうぅ……」
「下を見るな。こっちを見ろ」
雲母ちゃんの指差す先を見てみる。
青い空、様々な色の屋根、大きな建物。
……久々に、いい眺めを見た気がする。
「きれいですねー」
「声が震えてるぞ」
「……あはは」
きれいだけど、やっぱり高いのは怖かった。
「嫌か?」
唐突に、雲母ちゃんが尋ねてくる。
「え、そんなこと全然思ってませんよっ」
「そうか」
風景に目をやる雲母ちゃん。
「たまには、見下ろすのもいい。そう思わないか?」
私も、同じように風景を眺める。
「人も、建物も、木も、見上げているだけではつまらない」
「そうですね。でも私、木登り苦手ですから」
下にいるときよりも、肌に感じる風が強い。
木の葉のこすれる音が、いつもより近くに聞こえる。
緑色の葉が、スカートに落ちた。
「私に任せろ。いつでも連れてきてやる」
「え、それは……はい、お願いします」
本当はちょっと怖いけれど。
でも、雲母ちゃんの言うとおり。
たまには、こういうのもいいと、そう思う。
「帰ったら洗濯、しましょうね」
「……うん」
雲母ちゃんと、手をつなぐ。
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