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梅雨雲を眺めながら

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匿名ユーザー

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 空は灰色。予報では午後から雨が降ると言っていた。
 まぁ、日本のこの季節はこんなものなのだろう。
 傍らに傘を置き、わずかに湿ったベンチに腰を下ろして空を眺める。
 灰色一色だが、所々に濃淡のある雲。それが雲の流れを現している。
 ――今日は、風が強い。
 案外予報よりも早く雲行きが怪しくなるかも知れない。
 あまりのんびりもしていられない、か。ここからならペリドット達の家が近い。
そこに寄らせてもらうか。
 ……足に、何か柔らかいものが触れる。
「ん……」
 猫、か。
 白黒茶の三毛猫というやつだ。
「お前にやる物はないぞ」
 人語を解せないこいつらに、そんなことを告げても意味無いのだが。
「……はぁ」
 もう少しだけ、一人を満喫することにするか。

 予想通り、午前中のうちに雨は降りだした。
 傘があるからなんと言うこともないが、現在私はベンチから動けない状況にいる。
「……別の場所で雨宿りしろ」
 猫が、私の傘の中に入って雨宿りをしている。
 しかも居座っているのは私の膝の上。迷惑この上ない。
 払い除ければいいことなのかも知れない。だがそれをするのは何かためらわれる……。
 ……雨が傘を叩く音が、やたらと大きく聞こえる。
「私は行かねばならない場所があるんだ。だからそこをどけ」
 人語を解せないのは分かっている。
 だが、私の言葉に、この猫は首をかしげる。
 理解しようとしているのか、それとも私に動くなと命じているのか。
 ……どちらにしろ、猫に動く気配はない。私に目線を送るだけだ。
 いくら傘があるとはいえ、雨の中ベンチでずっと座っているのは気分が悪い。
「……どうしても動かない気か?」
 にゃあと一声鳴く。
「そうか……それは肯定と取っていいんだな」
 ならば、私にも考えがある……。

 左手に傘、右手に猫を抱き、道を歩く。
 雨の中に放置するのはさすがに気が引ける。仕方ないのでこのままペリドットの家まで
連れて行く。
 あいつは猫が好きだからな。まぁ問題はないだろう。
「お前は、帰る場所はちゃんとあるのか?」
 大きなあくびをする。
「……そうか、お前達はこの街全体が家だったな」
 ここがこいつらの家。
 屋根だってあちこちに無数にある。雨の中でも過ごせる立派な家だ。
「どうだ、この街は過ごしやすいか?」
 答える相手はにゃあの一言だけ。
「そうか……私は、なかなか過ごしやすいと思っているぞ」
 あまり一つの場所に居着くのは得意じゃない私だが、この街はもう居着いて1年近く経つ。
 新記録、とまではいかないが、いつもの滞在に比べれば遙かに長い。
「……妹の面倒を見ねばならなかった時は、大変だったな」
 ふと、昔のことを思い出す。
 どこか遠くへ行きたいと思っていても、妹がいるから放浪するわけにも行かない。
 あのときに比べて、私は自由になったものだ。
 ……その分、姉妹のふれあいは減った、が。
「……この街は居心地がいいな」
 きっと、姉妹が揃っているからなんだろう。
「すまないな、訳の分からない話を聞かせてしまって」
 小脇に抱いた猫に謝罪する。
 理解などしていないし、そもそも話を聞いてなどいなくて、雨音に酔いしれているのかも
知れない。
 だが、黙って私の顔を見つめているその姿。
 こいつは、なかなか聞き上手な猫だ。そう思う。
 ……さて、ペリドットの家に着いた、か。
 この猫を見てあいつがどういう反応を見せるのか、少し楽しみだ。

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