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『雲母、荒巻が保護動物に指定されちゃったから、もう一緒にはいられないんだって』 ……とんでもないことを、平然とマスターは言い出した。 荒巻と一緒にいられない? そんなことを受け入れられるはずがない。 『悪いけど、荒巻がいたままじゃ雲母もうちに入れられないよ。だから……』 「……っ!?」 マスターが最後まで言い終わる前に、夢から覚める。 これ以上は見たくないと言わんばかりに、意識もはっきりと覚醒した。 ……しかし、とんでもない夢だった。 だいたい荒巻が絶滅とか酔狂なこと、有り得ない。絶対。 有り得ない、有り得ない。うん、有り得ない。 ……荒巻、荒巻はどこ? ◇ ◇ ◇ ◇ 「な、なぁ雲母……」 無視。 「あの、えーっと……俺、何かしたかな?」 やっぱり無視。 朝、こうして顔を合わせてからずっとこんな調子だ。 荒巻をきつく抱きしめて、俺には背を向ける。いったい何なんだろうか。 「マスター、雲母ちゃんと喧嘩でもしましたか?」 「……いや、そんなことないけど」 自分で気づかないうちに傷つけたということも考えられるが……。 「雲母ちゃん、何かあったの? ちゃんと話さないと、仲直りできないよ」 「……何でもない。機嫌が悪いだけだ」 「いや、確かにそれは分かるけど……ごめん、睨まないで」 うぅむ、とりつく島もないって奴か。 「はぁ……仕方ない。とりあえず仕事行かないと。ご飯の準備手伝うよ」 「あ、はい。じゃあお弁当を先に用意しておきますね」 仲直りするのは後回しだ、このままでは遅刻してしまう。 何で朝からこんな調子にならなきゃいけないんだか。 えーと、弁当箱弁当箱……。 「いただきます」 今日は雲母と二人で食べる朝食。黒曜石は台所で追加の調理中だ。 ……気まずい。雲母の視線がない分、逆に気まずい。 「なあ、やっぱり俺何かしたか? だとしたら自覚ないから……その、すまん」 駄目だ、全然聞く耳を持ってくれない。 ホント、何なんだよ……。 「……何?」 雲母が呟く。 いや、俺に尋ねたわけではない。横で手を引く荒巻に言ったようだ。 で、なぜか二人で目を合わせて……意思疎通? 「……マスター、ごめん」 そして俺に謝る雲母。 何なんだいったい……。 「い、いや、気にしてない。よく分かんないけど……荒巻と何か話したのか?」 黙ってこちらを見据えてくる雲母。 そして一言。 「マスターは、自分を私から引き離したりしないって」 「はぁ……そりゃまあそうだけど」 うぅむ、話が見えてこない。 でもなんだか仲直りできたみたいだし、よしとするか。 しかし何で俺が荒巻を取ったりしなきゃいけないんだ? まぁ、なんだ、とりあえず荒巻に感謝しろ……てことか。 ----
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