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クリスマスの夜 - (2007/01/01 (月) 15:32:09) のソース

  誰か俺に教えて欲しい、どうしてクリスマスはイブに祝うんだ?
  まぁ、そんなことはどうでもいいか。
  それにしても……。
「何で俺の家にみんな勢揃いなの?」
  リビングにありったけのテーブルが並べられ、そこにはご馳走やケーキが満員電車のように。
  そして何より、宝石乙女+そのマスターがそろい踏み。宝石乙女オールスターズ状態になっている。
「マスターの家が一番広かったので……その、ごめんなさい」
「あ、あぁいいよ黒曜石、謝らなくて。どうせパーティはするつもりだったんだから」
  もちろんこんな規模でやるつもりはなかった。軽い宴会だろこれ。忘年会か?
「何けちけちしてるのよー? にしし」
「ちょっ、月長石ちゃんっ。勝手に背中乗らない!」
「だってー、アメジスト賑やかなの嫌いだって言って来なかったんだもーん。だから相手してよー」
  だったらアメジストの方に行けばいいじゃないか……。

「ご主人様ー、すごい賑やかですねっ」
「そうだね。でも突然呼び出すから何事かと思ったよ」
  だいたい家でクリスマスの準備してたら突然連れてこられたからなぁ。あー、ケーキどうしよう。
「……パーティ♪」
  まぁ、蛋白石や電気石がいるから平気か。特に蛋白石なら……。
「黒曜石たちが地道に準備を進めていたようですよ。ほら、あそこのくりすますつりーという物。あれは虎目石たちが用意したとか」
「私も……飾りつけした」
「へぇー。すごいね、あんな大きいツリーを」
  電気石だったら僕が抱っこしないと上の星が見えるかどうかも怪しいような。
  でもみんなすごいなぁ。料理や飾りつけも全部宝石乙女のみんなでやったんだ。
  なんだかまったく手伝っていないのが悪い気分……。
「パパーっ」
「あ、ソーダちゃん。こんばんは」
「パパー、だっこー♪」

「アレが……ソーダのパパ」
  うぅむ、思っていたより線の細い人なんだ。しかもどちらかといえば同性の雰囲気が……きっと家事全般できるタイプだね。
「何見ているの?」
「え? ただソーダがパパって呼んでる人がどんな人か気になって」
「へぇー、初対面なのねぇ。挨拶しておけば?」
「いや、ちょっと……」
  ソーダがいる前で挨拶したらどうなるか。
  ママなんて呼ばれたら絶対気まずい。あたしこの場にいられなくなるよ……。
「それにしてもあの子たち、ずいぶんと張り切っていたのねぇ」
「あれ、真珠さんは手伝わなかったんですか?」
「クリスマスを祝うって柄でもないのよ。爆ちゃんと二人でご馳走食べるのが関の山かしら」
「そうねぇ。去年は朝までしゃべり場だったわぁ」
「結構爆弾発言も出たり。他人に聞かれたら冷や汗ものねぇ、あれは」
「そうそう、真ちゃんったらものすごいこと言うのよー。例えば……」
「爆弾岩さんっ、人前で話せないことは話さない方が……」

  見渡してみると、いろんな人がいるモンだ。
  というか見たことない宝石乙女もいる。あの眼鏡の子とか、初めて見るぞ。
  しかし女のマスターっていうのもいたんだなぁ。結構好みかも……。
「主、何をぼんやりしているのだ。準備を手伝え」
「な、今日は招かれた側だからいいだろうが……」
「何を言うか、天河石はあの通り手伝っているぞ。もちろん某もだ」
  確かに天河石は黒曜石ちゃんと一緒に巨大なケーキを運んでいる。
  しかし今にもかぶりつきそうだな……涎垂らしてないだろうか、あの顔。
  しかしまぁ……ったく、こいつらは真面目というか何というか……むしろあの女のマスターと話をっ。
「主っ!」
「は、はいっ」
「ぼんやりしていないで食器を運ぶのを手伝ってくれ」
「いや、俺は俺のやるべきことを見つけ……ゴメンナサイオノシマッテテツダウカラ」
「よろしい。なかなか積極的だな、主。皿を追加してやろう」
「珊瑚ーっ!」

  う、うぅ……すっごい居づらい空気。
  なんというかこういうクリスマスパーティっていうのかな、そういうの初めてで……。
「マスタ、貧乏揺すりよぉないよ?」
「か、化石、なんか落ち着かないんだが」
「何言うとん? みんないい人ばかりやで。もっとリラーックスや」
「そうですよ」
  と、俺に話しかけてきたのはこの家の宝石乙女の一人、瑪瑙ちゃん。
  この子とは何度か一緒にアルバイトをしていて、顔見知りだ。
「あっ、瑪瑙ちゃんー。今日はおおきになー♪」
「いいんだよ。みんなで楽しんだ方が楽しいから。だから貴方も、そんな堅い顔しないで」
「あ、あぁ。努力する」
  化石の言う通り、みんないい子だ。それは同意見。
  しかし慣れないものは慣れないというか何というか……くそ、貧乏生活のせいだ!
「そうそう、リラックスしないとね。特にこういう場では」
「ひゃうっ……あ、アメジスト!? さっきまでいなかったのに……」
  え、何、アメジスト? 誰だそれは……。
「フフフ、君が油断しているときならいつどこでも現れるのさ。さぁて……」
「え、ちょっ、ど、どこに連れて……きゃーっ」
  ……こ、こえぇ! アメジストこえぇ!!
「うはぁ、愛の泥沼やな」

「マスター」
「何だー?」
「……賑やかね」
「あぁ、賑やかだ」
  と、どこか居心地の悪そうなベリル。
  何だろう、別に他の子と仲が悪いなんて聞いたことないし。
「……マスター、隣空いてるから、もう少し詰めて」
「もう隣に座ってるだろう。何をわけの分からんことを……」
「……いや、別に」
  うぅむ、何なんだ今日は。いつもの毒舌もないし、調子狂う。
「あらあら、どうかしましたか?」
「あ、ペリドットさん。そっちのマスターさんどうしたの?」
「急なお仕事で来られなくなってしまったので、今日は一人なんですよ」
  あれま、ずいぶんと忙しい人なんだなぁ。
「ですから今日は誰か話し相手になってくれる人を探しているのですが……レッドベリルちゃん、いいかしら?」
「え? う、うん……」
  俺とは反対側の席にペリドットさんが腰を下ろす。
「緊張してるのかしら?」
「う、ううん、そんなことない……」
「ふーん。まぁ、緊張していないならそれでいいけどさ、何かあったらちゃんと言えよ? 後で何かあったら困るだろ」
「む……普段は優しくないくせに」
  やっとここに来て一回目の減らず口。
  やっぱりこれがないとこいつらしくないんだよなぁ。
「ふふふ、仲がいいんですね」
「そ、そんなことないもんっ。マスターいつも意地悪で……」

  こうしてみると、けっこう若い人が多いこの会場。
  もしかして俺ってこのマスター勢の中で一番年上なのか……?
「マスター、私手伝いに行ってきますね」
「あ、だったら俺も行くよ。何もしていないと落ち着かないんだよ」
「ありがとうございます」
  というわけで漬物石と共に台所へ。
  おぉ、修羅場だ修羅場だ。
「あっ、漬物石ちゃん! よかったぁ、手伝ってっ」
「はい、何を手伝いましょうか?」
  と、金剛石ちゃんに連れて行かれる漬物石。
「……おい」
「ん?」
  足下からの呼びかけ。相手は雲母ちゃんだ。
「届かない。手伝ってくれ」
  指差す先には戸棚。なるほどね。
「分かった。何を取ればいいの?」
「小さい皿」

「虎目石ーっ、早くしないと始まる!」
「分かってる」
  二人列んで黒曜石の家へと走る。
  クリスマスツリーをあの家に運び込んで、一度自宅に帰ったのはよかったのだが……。
「まったくー、何でそんな重要な物忘れるのよぉ。だいたい中身何!?」
「サンタ」
「え、ちょっ、はぁ? もしかしてトナカイ落してサンタ生け捕り?」
「違う。置石じゃあるまいし」
「失礼なー。あたしだってそこまで外道なこと……たぶんしない」
  たぶんは置石にとって最も当てにならない言葉の単位。サンタを見つけたら解剖手術でもするかもしれない。
  ……サンタさん、置石だけには捕まらないように。

  料理は揃った。ろうそくOK。ぬかりなし。
「準備終わりましたぁ……ふぅ」
「ご苦労様。しかしずいぶんと賑やかだなぁ」
「……マスター、瑪瑙が……」
「え? あ……」
  なんかアメジストに無茶苦茶やられてる……あーあ。
  ああなると俺には止められない。瑪瑙、許せ。
「あはは……み、みなさーんっ、そろそろ始めますよー」
  黒曜石が声に、周りが静まる。
  今日の黒曜石は挨拶役。このパーティの主催者だ。
「えっと……今日はお忙しいところ、この場に集まっていただきありがとうございます」
  周りから拍手。
「今日のパーティは、皆さんの協力のおかげで行うことができました。クリスマスツリーの用意や、ご馳走の準備。いろいろなことをみんなで協力してやり遂げました」
  そう、このパーティは俺の知らないうちに、宝石乙女たちが一致団結して実現したもの。
「その、なんと言えばいいか分かりませんけど……この場に集まることができたのは、皆さんのおかげです。本当に、ありがとうございます」
「それは成功してから言うものだろ」
「そ、そうですね……それじゃあ、今日のクリスマスという日を祝って……メリー……」
「メッリークリスマーッス!!」
「きゃっ!」
  虎置双子、突然の登場。
  あまりにも大きな置石ちゃんの声に会場騒然。その上黒曜石が目を回している……。
「いやー、間に合ったっ」
「間に合ってない。黒曜石が挨拶してた」
「え、そう? まぁいいじゃん。あぁみんなー、メリークリスマース。置石ちゃんの登場でーす……あれ、反応ないね、どうしたの?」

「ごめんね、鶏冠石。わざわざつき合ってくれなくても、行ってくればよかったのに」
  体が弱いため、今回黒曜石ちゃんの家で行われているというクリスマスパーティに行けなかった。
  でも、隣には鶏冠石が。独りのクリスマスは過ごさなくてよさそうだ。
「私は祭事を静かに過ごすようにしているのです。細かい詮索など無用ですわ」
  ……二人きりの、クリスマスか。
「それよりマスター、一曲弾いて下さらない?」
「ん、いいよ。それじゃあクリスマスに合わせて……」

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