宝石乙女まとめwiki内検索 / 「模様……替え?」で検索した結果

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  • 模様……替え?
     天気良し、部屋良し、俺良し。 「よし、思い立ったら即行動。化石、模様替えするぞ!」 「模様替えっ。シマウマのしましまを横にするんやな!」 「なんでやねん」  とりあえず、元気いっぱいにボケてくれた化石にツッコミを入れつつ、部屋を見渡す。  ……さて、模様替えとは言ったが、家具らしい家具が片手で数えられるぐらいしかないわけだ。  四畳半にあるのは小さいタンス、丸いちゃぶ台。後は最近ついに手に入ったテレビに、 極めつけの段ボール製テレビ台。俺の力作だ。 「とりあえずタンスを右から左へ」 「受け流すん?」 「流しません」 「そやなー。でもマスタ、模様替えはうちも賛成やけど、代わり映えしないと思うんや」  うぅむ、いきなり事実を言われるとくじけそうになってしまう。  ……いや、ダメだ。模様替えならまだまだやることはある。 「そうだな。じゃあ...
  • 小説-化石メイン
    ...ても」より 模様……替え? 130スレ目 「黒曜石やみんなが総出で家の模様替えに勤しんでも」より
  • 衣替えの季節です!
    蛋「衣替えの季節です!」 殺「いきなりですわね、蛋白石」   テレビを見ていたら衣替えという単語を発見! 蛋「しかし……衣替え……いったい何をするんでしょう……」 殺「私たちには関係ありませんわ」 電「衣……替え……衣を替える……衣替え」 殺「そのまんまで変わってませんわよ……」   ううーん……衣を替える……衣……着ている物だよね? それを替える……そうか! 蛋「わかった!! 着ている物を替えるんだ!」 殺「そのまんまの意味ですわね。まぁある意味間違いではありませんが」 蛋「あってるんだよね? それじゃ殺生石! 替えよう!」 殺「……はい?」 蛋「だって、着てる者を取り替えっこすることなんでしょ?」 電「私も……するー」 殺「違いま――」 蛋「よーし! お姉さまもやりましょう! さぁ! 殺生石も衣替えしましょう!!」 殺「ちょっと! 人の話を聞きなさ……っ...
  • あこがれの海
    『これ、蛋白に渡してあげてねぇ』   帰り際に出会った爆弾岩さんに手渡された紙袋。   中身はもちろん見ていないし、教えてもらってもいない。気にはなるけど。   でも、蛋白石に手渡したとき、とても嬉しそうな顔してたなぁ。きっといいものなんだろう。 「ご主人様ーっ」   と、明るい声が居間に響いたのは夕食後。   食事を終えてすぐに隣の部屋へ籠もった蛋白石の、ふすま越しからの呼びかけ。   テレビを見ていた僕、そして殺生石と電気石が声の方向に振り返る。 「どうしたの?」 「えへへー、見ててくださいねー」   その一言と同時に、ふすまが開け放たれる。   現れたのはもちろん蛋白石……いや、え? 「……どうしたの、その格好」   正直、目のやり場に困った。   いつもより明るい笑顔を浮かべる蛋白石。その姿は普段の胸を強調したドレス姿ではなく、それよりさらに胸を強調する...
  • コスプレ電気石
      確かに電気石は電気を放出する事が出来る。しかもゲームさながら派手な奴を、だ。 主「だからといってピカ○ュウのコスプレはないんじゃないかなぁ」 蛋「そうですかぁ? すっごい可愛いですよー」 主「まぁそうだけどね……」   黄色い体に大きな耳。そして独特の尻尾に背中の模様。 電「……ぴっぴかちゅー」   うん、ラブリーだっ。思わず撫でたく……。 殺「主様……」   って、なんか殺生石が怖い! 背中から紫色のオーラが……って、コレ毒ガス! 主「せ、殺生石っ毒ガスは勘弁!! 蛋白石、窓開けて!」 蛋「はいっ、お任せ下さいご主人様ああぁぁー!」   ……彼女の手は、何故か窓枠ごと窓を外に落していた。   そして思わず涙が出てきそうな破壊音。蛋白石のばかぁー! 蛋「……あー」 殺「……ふん」 電「……がちゃーん?」 主「……あぁ」or...
  • 旦那様のお好みは?
    「だんな様」 「ん?」 「だんな様は、蛋白石のように乳の大きい方がお好きですか?」 「えぇ!? ……そういうのは、その。気にしないというか」 「正直におっしゃってくださいませ。妾にとってはとても大切なことなのです」 「んー、なんていうのかな。たとえばさ、僕は『胸が大きいから蛋白石が好き』とか、そういうのはないんだよ」 「……」 「単純に、好きだから。だから、もしも殺生石の胸が蛋白石くらいに大きくなったらもっと好きになるかっていうと、違う」 「……」 「うまく言えないけど……だからその、気にしなくてもいいってこと! これでいい?」 「今のお言葉は分かりますが、あいにくそれでは答えになっておりません」 「え?」 「ではもっと単刀直入にお聞きします。だんな様は巨乳と貧乳、どちらがお好みですか?」 「ぶッ!! ……あぁもうわかった答えるよ。僕は大きい方が好みです。おしまい...
  • こいのぼり?
      お空に浮かぶ、大きなお魚。   ひらひらで、青とか、ピンクとか、いろんな色。   ……あまりおいしそうじゃない。皮だけ? 「鯉のぼりがどうかした?」 「んー?」   こい、のぼり? 「うちの大家さん、いつもこうして大きな鯉のぼり立てるんだよ」   こい、のぼる……お空に?   んー……。 「僕の家でもこんな感じの立ててたけれど……電気石、何してるの?」 「のぼりー……のぼれない」 「しょんぼりする気持ちは分かるけど、危ないから登っちゃダメだよ」   マスターの、だっこ。   ……あまりのぼれない。   こい、のぼり……。   こい……? 「そんなに鯉のぼり気に入ったの?」   マスターから、おやつをもらう。 「あんまり見上げてると首が疲れちゃうよ。食べながら休憩しよう」   チョコレート……。   …...
  • 避けられぬ別れ
    ア「失礼する」 黒「あれ……アメジストさん?」 マ「珍しいね、君がここに来るなんて」 ア「あぁ……いい茶葉が手に入ってね、よかったら一緒にどうだい?」 黒「あっ、ありがとうございます。今淹れてきますね」 マ「頼むよ黒曜石」 ア「……」 マ「どうしたんだい? さっきからずっと黒曜石のほうばかり見ているけど」 ア「ん? いや……いい娘だな、あれは」 マ「いきなりどうしたんだい?」 ア「うん? 私が妹のことを褒めるのはそんなにおかしいかい?」 マ「いや、いつもここに来た時はからかうってばかりの印象しかなかったから……」 ア「ふむ……そういえばそうかもね……」 黒「どうかしたんですか?」 ア「あぁ、なんでもないよ……邪魔したね、そろそろ帰らせてもらうよ」 黒「え? もう帰るんですか? せっかくお茶菓子ができたのに……」 ア「すまないね。それはまたの機会にいただ...
  • マスターはパパ?
    「あら、可愛いこと……いらっしゃい」 「うわあ、いい匂い~」 「ふふ、だんな様……私たちもこんな可愛い子が欲しゅうございますね?」 「(お茶を噴いて)ぶっ!! 殺生石、変なこと言わないでよ!」 「……ぱぱ?」 「んなっ!?」 「ほらほら、お父様ですよ~」 「いい加減にしてよー!!」
  • 色々呼ばれてる人
    「兄様ぁ」 「……どうしたの、殺生石?」   ものすごい猫なで声……殺生石、君は狐でしょ? 「あら、嬉しくなさそうですね。今の流行ではないのですか?」   と、首をかしげる。 「いや、僕いつもお兄ちゃんって呼ばれてるんだけど」 「あ、それもそうですね。小さい子達の相手が多いのですから」 「何というか、お兄ちゃんとかパパとかご主人様とか、色々呼ばれてると感覚が麻痺するんだよ。もちろん殺生石のだんな様も」   これらで一斉に呼ばれたら、どっちに振り返ればいいか分からなくなるね、うん。 「あらあら、そんな事言ってますと夜中に背後から刺されますよ?」 「こ、怖い事言わないでよ……」   でもこればかりはどうしても……嫌じゃないんだけど、それが普通というか何というか。   それにしても、一体どこからそんな話題が……。 「案外ペリドットの言葉も当てにならないものですね」 「...
  • マスターのストライクゾーン
    置「ふっふっふー、今日はいい物手に入っちゃったさぁ~」 虎「……それがいい物とは思えない」   今日の晩ご飯、何作ろうか。そんなことを考えながら家へと到着した僕。今日もお疲れ様でした。というわけで帰宅。今日は殺生石と二人きりの夜だからちょっとだけ緊張かなぁ。 主「ただいまー」 殺「おかえりなさいませ」 主「うわぁっ!?」   玄関で正座した殺生石がいきなり迎えてくれる。でも気配を消すことはないと思う……声かけられるまで気づかなかったよ。 主「え、えーっと、出迎えてくれるなんて珍しいね」 殺「はい、居間で待つのが少々息苦しかったもので」   ……息苦しかった? 一体どういうことなのか……。 殺「お話があります。こちらへ」 主「え……うん」   よく分からない。なんだか知らないけどよく分からない。別に怒っている素振りもないし、何か約束しているわけでもないし……もし...
  • 椛の頃
      ただ一つのことを伝えるのに、どうしてこんなに緊張しなければならないのか。でも男としては……やっぱ、その、ね……うん。 「ね、ねぇ殺生石」 「何でしょうか?」 「えーと、今度の休みにね、ちょっと一緒に来て欲しい場所があるんだ」 「妾とですか? 珍しいですね。初めてではありませんか」   そう、殺生石とは一度も一緒に外を出歩いたことがない。家でのつき合いは……親密なわけだが、これまでデートの類というものは、互いに全く経験したことがなかった。そういう意味でも、今回は殺生石を是非とも誘いたかった。 「うん。殺生石って身なりの関係でいつも家の中に篭もってるでしょ、だからちょっと……」 「その身なりで奇異の目に晒されるのは主様ではありませんか。妾が無理につき合わなくてもよろしいのでは?」 「いや、人のいないところだから大丈夫だよ」   人のいないところ……本当に誰もいない。予想は...
  • 瞑った目の先
    「なんだ、殺生石まだいたんだ」   冷たい口調、鋭い視線。   ……どうして、そんなことを仰るのですか?   いつもの優しい貴方は、どこへ行ってしまったのですか? 「この際はっきり言うよ。いい加減うっとうしいんだよね、君」   ……嫌、突き放さないで。 「僕だって今まで我慢してつき合ってあげたけどさ……いっつも遠慮ないんだもん。いいかげんこっちはうんざり」   ……嫌だ、そんなの。   もう、冷たいのは、嫌……。 「うちだっていろいろ大変なんだから、そろそろ出て行ってもらっても……」 「嫌ぁー!!」   月明かりの射す、暗い部屋。夜の指定席。   わたくし、いったい……。 「……だんな様っ」   見渡してみても、誰もいない。   ……これは、不安?   今まで感じたことのない、冷たい感触。   身体が、寒い……嫌。   一人は嫌。冷たいのも嫌。 ...
  • お返しじゃなくてもいいじゃない
      今日はホワイトデー。財布の中身が苦しくなる日。   僕はそんな日に、蛋白石と人気のない公園にやってきた、もちろん明確な理由があって。 「はい、バレンタインデーのお返し」   そう言って、蛋白石に買ってきたお返しを渡す。   包装されていて中身は分からないだろうが、蛋白石に似合うかなと思って買ってきたネックレスだ。   まぁ、ちょっと高い買い物にはなったけど、これぐらいは当然……。 「……あの、ご主人様。私……」   でも、お返しを渡された蛋白石は浮かない顔をしている。   予想していた反応ではあるけど……まぁ、覚悟の上で渡すことにしたわけで。 「えっと、渡す前に全部食べちゃったの、まだ気にしてる?」 「あう……うぅ」   言葉通りだ。   蛋白石は、僕に渡すために買ってきたというチョコレートを、渡す前に全部食べてしまった。   十四日の夜、そのことを土下座で謝...
  • 君は宝石
      『――きらびやかで美しく、そして高価な宝石は、王侯貴族にとって自己の権力の象徴であり――』 主「ふむふむ……」 殺「……美しい、輝きですね」 主「うん。確かにこの輝きは、人を惹きつける力があるよ」 殺「……うらやましいです」 主「え……殺生石?」 殺「……かつての妾は、死の象徴でありました。人だけでなく、その土地をも殺してゆく魔の産物……」 主「はいすとっぷ。よっ」   グイッ 殺「ひゃ!? だ、だんな様!?」 主「はは、膝の上に乗るのも久しぶりだね……あのさ。今の殺生石はすごく綺麗で、人を惹きつける力を持ってる。それでいいんじゃないかな」 殺「ぁ……」 主「確かに過去は違ったかもしれないけど、今は間違いなく宝石なんだよ。僕にとっては何よりも魅力的な、ね」 殺「だんな、様……」 主「……だから、それでよしってことで」 殺「……くすっ。だんな様のお顔、真っ赤...
  • ポンッ
      お外にお散歩。   今日は、マスターのお部屋で……面白い物、拾った。   引っ張ると、ぽんってなる。面白い。   でも、これなんなんだろ。 「イインダヨー」 「ぐりーんだよー?」   虎眼姉様。   聞いてみよう……。 「これ、なぁに?」 「ん……」   虎眼姉様が、ぽんってなるのを見ている。 「……卒業証書入れる筒」 「そつぎょ……筒?」 「うん」   そつぎょ……んー? 「引っ張ると、ぽんっ」 「うん」 「……面白いよ」 「うん」   虎眼姉様もうなずく。みんな面白い、嬉しい。 「おっ、虎ちゃんと電ちゃんやー。こんなとこで何しとん?」   化石姉様……。 「ぽんっ」 「ポンッ」 「ぽ……それがどないしたの?」   ぽんってなるの、化石姉様にも。 「ん、卒業証書の筒やな」 「引っ張ると、ぽんっ」 「おぉ、いい音やー」 「……面...
  • 手をつなごう
      このごろは日差しが暖かい。ちょっと前までの寒さが嘘のようだ。 「いい天気だねえ、電気石」 「んー」   電気石と二人、のんびりと散歩。たまにはこういうのもいいものだ。 「……ん」   唐突に差し出された手。 「えっと、電気石? 手をつなぎたいの?」 「ぐりーんだよー」   断る理由もないので手をつないで歩く。   ちょっと照れくさいけど、傍から見たら親子みたいできっとほほえましいだろう。   空もよく晴れて、散歩するのも気分がいい。 「電気石ってけっこう甘えん坊だね」   何の気なしに言った言葉。 「……手、つなぐ……マスター、いるって安心する……」   電気石は一瞬大人びた笑顔を浮かべ、そう言った。 「え……」   歩みを止めないまま、電気石は言葉を続けた。 「姉様……蛋白石と、二人だったとき……さみしくて、こわくて」   いつになく饒...
  • 街を眺める
    「変ったねぇ……。」   もう、いつからここに来るようになったか忘れた。ふわふわと漂っているうちにここにたどり着いた。   高くて見晴らしが良かったから。ただそれだけでここにいた。 「見晴らし、悪くなったなぁ……。」   背の高い建物がどんどん増えてきて、見える景色もずいぶん変った。   晴れた日には冠雪をいただいた山も見えたのに……。   下で、男の人が話してる……廃業……取毀し……マンション……。   そっかぁ。とうとうここも無くなるのかぁ。   あーあ、次はどこに行くかなぁ……。   今日は下が賑わってる。ここが賑わうのも久しぶりね……。 「お月様……見えないなぁ……。」   住人が引っ越していった。あのお爺さん、家族と同居して大丈夫かな……。   あれから数日、この煙突が温まることは もう無い。熱気が抜...
  • 姉妹のつながり
    「あーん……」   ソーダにアイスを一口。 「えへへ、あまーいっ」   で、どこかのコンビの片方と同じ反応。   でもソーダの方が可愛いし、こちらの方が見ていて気分がいい。 「何だかんだで、料理上手よねぇ」   爆弾岩さんが、ニヤニヤしながらこちらを見ている。   きっと結婚したらいい奥さんにとか思っているに違いない。 「一人暮らしですから。でもアイスは初めて作りました」 「ママー、もっとー」 「ママじゃなくてマスターだよ。はい、あーん」   爆弾岩さんの視線を感じながら、もう一口ソーダにアイスを――。   ピンポーン。   インターホンの音が、部屋に鳴り響く。 「真珠さんかな?」 「真ちゃんは今日来れないって言ってたわよ」   じゃあ誰かな。NHKの集金とかだったら嫌だな。   とりあえず玄関へ……。 「おでむかえー」 「こーら、ソーダはここで待って...
  • ひとりきりの子狐
      僕はいつの間にか、広い野原に立っていた。   ケーーーーーーーーン。   物悲しい獣の鳴き声が、夕日に照らされたすすき野原に響いた。   そこには子供が立っていた。古風な着物を身にまとい、狐のような耳と、一本の尾を生やしている。   ケーーーーーーーーン。   (おかあさま)   ケーーーーーーーーン。   (おとうさま)   あまりにも悲しげな鳴き声に、僕は近づいて声をかけた。 「どうして泣いてるの」 (だれもいなくなったの) (ひとりはいやなの) (だれか、そばにいてほしいの)   その子供があまりに寂しそうなので、僕は手を伸ばし……。   そこで、目が覚めた。 「……殺生石?」 「はい、何ですか?だんな様」 「うわあっ!?」   寝ぼけて発した声に答えられ、僕は情けない声を上げてしまった。...
  • 別離
     今年もまた、桜の季節がやってくる。  差し込む日差しは暖かく、外は新緑の様相を見せ始め、わたくしの名前とは正反対の、 命に満ちた光景が広がる。  こんな日は、誰よりも大切なあの方と、ただ静かに寄り添っていたい。  日差しを目一杯浴びながら、うたた寝をするあの方の顔を、ただ眺めていたい。  ……でも、あなたはもう、わたくしの隣にはいませんね。  春の陽気は、確かに周りの空気を暖めてくれる。  だけど、わたくしの隣はとても寒い。体ではなく、心が凍えそうになってしまう。  あぁ、だんな様……どうしてあなたはここにいないのですか? 「殺生石ぃー、ご主人様明日帰ってくるんだよっ。あと少しだからがんばって……あっ、お姉様! そっちはほこりが溜まってるから駄目ぇー」  散らかり放題の部屋で、蛋白石が掃除機を持って歩き回る。  そしてわたくしは……右手には...
  • 下弦の月と果て無き闇と
      柔らかな月明かり。暖かな談笑。三つの笑顔。彼女たちは他愛のないことで笑いあう。   そのひとときが永遠に続くことを信じて疑わず。それが崩れる日がそう遠くないことも知らず。   月長石が話を振り、アメジストが膨らませ、ホープが慎ましやかな意見を言い、それをネタに月長石が話題を振ってゆく。そうやって三人の談笑は進んでいく。   それはありふれた日常。それはいつも通りの光景。   けれど今宵ばかりは少し違っていた。元より言葉数の多い方ではないホープが、平生以上に寡黙で、放心しているようにも見えた。 「……どうしたの、ホープ?」   不思議そうに月長石が尋ねた。 「あ……すみません、少し月に見惚れていたんです」 「月?」   ホープの視線をたどった二人は、確かに月が出ているのを見つけた。けれどそれは一般に美しいとされる満月や三日月ではなく、その中間……下弦の月だった。 ...
  • October
      ――宝石乙女は、マスターの命令に逆らえない。   少なくとも、彼女はそう教え込まれてきた。   彼女自身、主のために仕えるのは苦手だと自覚していた。   だから何も言わない。たとえどんな罵声を浴びせられようとも、何も言えない。   彼女は笑顔で耐えていた。自分の意見など、人間には関係ないのだから。   この後自分を襲う理不尽な苦痛すら、逃げることを許されない。   でもその苦痛に耐えれば、その日の糧を得られる。   ――宝石乙女は、マスターなしには生きられない。   少なくとも、彼女はそう教え込まれてきた。   彼女に妹ができたのは、それからしばらくしてからのこと。   同じ10月の誕生石の名前を持つ少女。金髪の癖毛が、とても可愛らしい少女。   彼女は、宝石乙女の言いつけを少女には教えなかった。 「電気石は、電気石らしく生きればいいんだよ」 「…...
  • 尻尾のお手入れ
    「♪~」 「ん? 殺生石、何してるの?」 「あ、主様。いえ、久々に尾の手入れをと思いまして」 「なるほど。でも手入れって、どんな風にやるの?」 「簡単です。このようにブラシで梳くだけですから」 「ふぅん。じゃあ、僕がやってみてもいい?」 「主様が? ええ、もちろんです。こちらこそ、よろしくお願い致しますわ」 「それじゃちょっと失礼して……うわ、すごいふかふか。これって手入れする必要あるのかな……」 「もちろんです。妾はいつ何時でも主……いえ。だんな様のために、自らを美しく保つ必要があるのですから」 「……う、えと、その、ありがとう。 そ、それじゃやってみるね」 「はい。 ええ、そうそう……さすがはだんな様、お上手です」 「むしろやってる僕が気持ちいいんだけど、これ。つやつやのふかふかだよ」 「ありがとうございます、だんな様」 「ところで、これってどこま...
  • 誤解の相合い傘
     自宅前。 「先輩、ホントすみません」 「ううん、気にしないで」  そう言うのは、家が近所にある大学の後輩。  偶然駅前で雨宿りしている姿を見つけ、うちの傘を貸すためにここまで 来てもらった次第。  でも、僕より身長の大きい彼女に傘を持ってもらっている姿は、端からは 姉妹の相合い傘にでも見えたんだろうなぁ。 「今度ちゃんとお礼しますね。それじゃあ、また明日」 「うん、気をつけてね」  ビニール傘を差し、道路へ向かう彼女の後ろ姿を見送る。  ……さて、晩ご飯の用意しないと。改めてドアを開けて室内へ。 「ただい……うわっ!?」  靴を脱ぎ、自分の部屋の前を通り過ぎようとしたところで、突然そこに引きずり込まれる。  気付けばそのままの勢いで畳の上に押し倒され、何かが僕の上に馬乗りになる。  ……緊迫した面持ちの殺生石が、そこにいた。 「今の女は何者ですか?」 「...
  • マスターの……
     今日は七夕。  だからって何があるわけではない。いつも通りの仕事だ。 「で、今日はペリドットさんのとこで七夕の祝いするんだって?」  真剣に短冊への願い事を書いているレッドベリルを、後ろから覗き込む。 「あっ、み、見るなぁーっ!」  すぐに短冊を手で隠される。  というか、何も書いてなかったのに隠す必要はないだろう……。 「はいはい……レッドベリル、2枚も書くのは贅沢だと思うぞ?」 「う、うるさいっ。早く仕事行ってきなさいよ! あと、ちゃんと早く帰ってきてよね。 みんな待ってるんだからっ」 「はいはい。じゃあ行ってきますっと」           ◇  七夕……なんだか願い事を書く風習があるというのを聞いただけで、実はよく知らない。  で、ペリドット姉さんからもらったたんざくっていう紙。これに願い事を書くんだ……。 「んー……」  願い事、考える...
  • 湿度注意報
     無い。  お皿に乗せておいたまんじゅうが、無い。 「殺生石ー、ここに置いてあったまんじゅう知らない?」 「そこにあったお饅頭ですか? それなら先ほど蛋白石が」  ……え。 「余計なお世話かも知れませんが。主様、自分で食べる物をそのような場所に置いては 駄目でしょう。蛋白石に食べられるのが目に見えているわけで……」 「違うよ……あれ、カビ生えてたから捨てようと思ってたんだけど」  沈黙。  大体こんなところに置いてあったら蛋白石に食べられるのは僕も分かって……。 「ご主人様ー、お昼ご飯の時間ですよーっ」  と、何の前触れもなく現れる蛋白石。  時計を見てみると、ちょうど朝ご飯を食べてから6時間。相変わらずお腹の時計は 正確だな……じゃないっ。 「蛋白石っ、ここにあったまんじゅう食べたでしょっ」 「へっ? え、あ、も、もしかしてあれ、ご主人様……の?」  一気...
  • 夜伽の相手
      真夏最後の足掻きと言わんばかりの熱帯夜。僕は体中の水分を出し切ってまで寝るほど器用ではなかった。   時は深夜。同居人達はすでに深い眠りに就いてるんだろうなぁ。人形って羨ましい……うぅ、眠い 殺「あら主様……ふふ、二人っきりの時はだんな様でした。お眠りにならないのですか?」   そんな僕の部屋に入ってきたのは、十二単を身に纏い、狐耳と尻尾がやたらと強調された一人の少女。名前は殺生石。   彼女は他の子と違って妖怪、夜はむしろ活動の時間なのかな。 主「うん、暑くてねぇ……殺生石こそどうしたの?」 殺「こちらのお部屋から物音がしていたので、様子を。わたくしは眠りませんから」 主「そっか」   僕の隣に腰を下ろす殺生石。一つひとつの動作が優雅で、まさしく見た目通りの和風お姫様といった感じだ。   でも、この二人きりというシチュエーションは問題だ。特に夜は彼...
  • キスの味
      今日も学校お疲れ様。自分にそう言い聞かせながら家のドアを開けると……。 蛋「ご主人様っ、キスってレモンの味って本当ですか!?」 主「;`; ゙;`(;゚;ж;゚; )ブフォッ!!」   帰宅早々、この子はいきなり何を言い出すんだろうか……。 主「そ、そんなことどこで聞いたのさ……」 蛋「お姉様と見てたドラマで」   お姉様……電気石のことだが、作られたのは電気石の方が後だとか。   いや、それよりもだ、一体彼女たちはどんなドラマを見たんだか……。 蛋「ご主人様ー、私レモンの味知りたいですー。実は食べたことないんですよぉ」 主「食べたことないのはどうでもいいけど……で?」 蛋「ご主人様の唇で、レモンの味をですねー」   はいストーップ!! 僕は蛋白石の口を手で塞いだ。 主「あ、あのね……キスって言うのは好きな異性同士がデスね……あだだだ!...
  • 好物
      いい加減日々のおかずを考えるのに苦労を覚え始めたころ、僕は一計を案じた。 「今日の晩ご飯は誰かの好物にしようと思ってるんだけど、どうかな」 「やったーっ♪」 「……電池ー」 「ごめん、それは無理」   なんだか出だしから不安だ……。 「好物、ですか……誰のを作るのですか?」 「それはじゃんけんで決めよう」   これだったら殺生石相手でも公平に決められるよね。 「……神通力か何かで人の考えを読むのはなしだからね」 「妾がそんな卑怯な真似するはずありません。主様ったら、ひどいですよ」 「ご、ごめん……できるの!?」 「当然です。ですが卑怯なのは嫌いです」 「ご主人様ー、早く決めましょうよっ。じゃないとお腹……おなか……ごはーんっ!!」 「ぎゃーっ!!」   話が脱線しすぎたけど、まぁとりあえず……うぅ、噛み跡ついた。 「というわけでおかずじゃんけん」 ...
  • 乳チェッカー・置石ちゃん
    「【蛋白石のマスター】ー、お風呂貸して」  夕食の準備中に来た置石ちゃん。  何を言い出すかと思えば、また唐突な話を……。 「い、いいけど……今日は虎目石ちゃんはいないんだね」 「うん、なんだか変な遊びに熱中してたから、置いてきた」  置いてきたって……結構冷たいんだなぁ。 「それより、上がらせてもらっていい?」 「あ、ああいいよ。でも今は蛋白石が入ってるから、居間で待ってて」  ……あ、言わなきゃ良かった。  今明らかに置石ちゃんの目の色が変わった。 「ほぉー……蛋白石が、ねぇ……」 「い、いや、どうしてそんなにニヤニヤしてるのかな……」           ◇  ご主人様に教えられて初めて入ったお風呂。  もう何回入ったかなぁ……んーっ、気持ちいいー。 「蛋白石ーっ」 「ひゃうっ!」  お風呂のドアが開いたと思えば、突然置石ちゃんが入ってく...
  • そのお金はどこから出した?
      かれんだーというものをこうも凝視するなどということ、おそらく初めてでしょう。最近やっと読めるようになったこの数字、左から右に月日が進んでいるようですが……わたくしが気になっているのは24の数字。確か日曜日というところにある数字で、わたくしにとってとてつもなく重要な日。   ……くりすます、でしたか。その前祝いの日。 「……んー?」   わたくしの隣で、電気石が首をかしげる。今のわたくしよりくりすますについて詳しいこの子なら、よい相談役になるかもしれません。 「電気石、貴女はくりすますの贈り物はどうするのですか?」 「プレゼント……サンタさん、持ってくるよ♪」   ……この子らしいですね。 「殺生石ー、お姉様と何してるの?」 「蛋白石ですか。貴女はくりすますの贈り物、用意しているのですか?」 「え? ちゃーんと、ご主人様に渡すプレゼントは用意してあるよ」   迂闊。ま...
  • 暑いからといって……
     今日は暑い。それ以外に何を言えばいいだろうか。  雲一つない青空も、輝く太陽も、蝉の鳴き声も、全てが暑さを助長してくる。迷惑なことこの上ない。  ぼんやりと床に寝転がる……別にそれで涼しくなるわけでもなく、日陰に移動しても意味がない。窓から差し込む日光は確実に部屋の中に熱気を運び入れ、窓を開ければ熱風が部屋を抜ける。  ……クーラーが欲しい。  ケチな大家のせいで、我が家には扇風機しかない。もちろん扇風機は回しているが、効果など期待できない。  それでも、ないよりマシというものだ……仕方ない、もっと扇風機に近づくか。だらしないと言われても仕方がない。ナメクジのように地面をはいずって、扇風機の方へ……。 「きゃーっ!」 「え?」  扇風機に近づいたはずが、目の前には白い何か。 「まま、マスターっ!!」 「え、あ、金剛石? ぶぉっ!!」  金剛石の拳が振り下ろされ...
  • 花鳥風月:化石編
    ~花~ 「マスタ、花!」 「おー、綺麗な紫色だな、なんて名前なんだ?」 「名前は知らんやん、でも美味しいやねん」 「……美味しい?」 「マスタ、口開けて」 「んあ」 「くわえて吸ってぇな」 「……確かに美味しい」 「これで今日のお昼代浮いたやな、マスタ!」 「化石」 「?」 「いつかもっと美味いもん食わせてやるからな」 「マスタ、なんで泣いてはるの」   ギュッ 「あわ、ま、ますた?」 「絶対、絶対食わせてやるからな……」 ~鳥~ 「化石、仕事手伝ってくれないか?」 「はいな、何の仕事ですのん?」 「鶏肉を串に刺していくだけの簡単な仕事だ」 「何時までに何本?」 「明日の朝までに3000本だ」 「それ、本当にできますやん?」 「1本20円のところを先方さんが40円にしてくれたんだ、断るわけにもいかんだろ」 「40円! マ...
  • くしゃみツインズ
    「主様、おかえ……くしゅんっ!」  早く授業の終わった今日。帰ってみると、小さなくしゃみが僕を出迎えてくれた。 「殺生石、風邪?」 「わ、妾は風邪など引きませ……くしゅんっ!!」  言葉を無理矢理遮られる。  確かに、殺生石は風邪を引かないって前言っていたけど……。 「へくしっ!」  と、今度は僕がくしゃみ。  寒いとか風邪とか、そういうのとは違う。なんだか鼻の中に異物が入ったような。 「なんか鼻がむずむず……くしっ!!」  くすぐったい。とにかく鼻の中がくすぐったい。 「も、申し訳ございません……くしゅんっ!」 「なんで……せ、せっしょ……へくしっ!」  どうして、くしゃみをすると殺生石が謝るのだろう。 「ご主人様っ、マスクをどうぞー」 「え、あぁありがとう……へくしっ!」  横からマスクを付けて現れた蛋白石。  鼻に何か入った後では遅い気もするけど、無...
  • レディース『真爆』
    真「こら、月長石、置石! またこんなイタズラして、誰かが怪我したらどうするつもり!」 爆「うわー、これはちょっとシャレになんないでしょ。イタズラもいいけど、やるならもうちょっと可愛げのあるのにしなさいよ」 月「はいはい。あーあ、また誰かが引っかかる前に見つかっちゃったか。つまんないの」 置「ほんとほんと。ぎりぎりヤバイことになる手前の威力で仕掛けてるのが分かんないんだもんねえ。いこいこ」 真「ちょっと、まだ話は終わってないわよ! ……まったく、最近二人のイタズラも度を超してきたわねえ」 爆「私たちの言うこともちっとも聞かないし。ペリドットは怖がられてるみたいだから、一度お灸を据えてもらおうか?」 ア「お困りのようですね、姉様がた。ここは私にお任せいただけませんか?」 真「あら、アメジスト。それはかまわないけど、どうするつもり?」 爆「あんまりひどいことしちゃ駄目よ?」 ア...
  • 褒められると、嬉しいね
    「ご主人様ぁー、聞いてくださいよぉ」 「う、うん。いいけど……」   珍しく頬を膨らませて不機嫌モードの蛋白石が、問答無用で僕の隣に座る。   聞いてくださいといっても、実際は無理矢理聞かせられるんだけどね……。 「今日金ちゃんと話してたんですけどねー、お互いのいいところは何かーって。そしたら金ちゃんったら、『蛋白石はやっぱり胸大きいのがいいところだよねー。それ以外なかなか思いつかないし』とか言うんですよぉーっ。しかも他の子だってそう思ってるとか……これじゃあ私、胸だけの宝石乙女みたいじゃないですかっ」   うぅーん、本人には悪いけど確かにそれはあるかも。 「ご主人様ぁー、聞いてますかーっ?」 「あ、あぁ聞いてるよ、うん」 「私は胸だけが取り柄ってわけじゃないんですよー。ちゃんと……えーっと……んー……ご主人様、私のいいところって何ですか?」 「い、いきなりな質問だね……...
  • 大きな想い
    「ご主人様♪」   僕の隣に、蛋白石が腰を下ろす。   周りはみんな酔っぱらっていたり、夜も遅いので居眠りを始めていたりと、先ほどに比べてずいぶんと静かだ。   だから、蛋白石の方も少し大胆だ。僕に密着するや、腕にしがみついてくる。   それを僕は拒まない。なるべく彼女の好きにさせてあげたいから。 「静かになっちゃいましたけど、すごーく楽しかったですよね?」 「うん」   誰かに見られてるかも分からないけど、自然と恥ずかしさはこみ上げてこない。   こうしていることが自然なだけで……。   ……でも、二人きりになりたい。そんな思いがこみ上げる。 「蛋白石、散歩に行かない?」 「お散歩ですかー?」 「うん、少し酔い覚ましに、ね」 「そういうことなら大歓迎ですよ、ご主人様の身はしっかりと守りますからっ」   と、頼もしいことを言ってくれる。   だけどそれよりも嬉...
  • 汚されて……
     こうも暑いと、水分補給をこまめにしないといけない。むしろしたくなる。  僕も、今日6回目の水分補給だ。  さっきまでは麦茶だったので、今度は好物のマンゴージュースを飲むことにする。  いつもよりちょっと大きめのコップに氷を入れて、さらにそこへマンゴージュースを。  音を立ててひびが入る氷。しばらくしたら、コップの表面に水滴が付く。実に涼しげな光景だと思う。  さてと……後は部屋に持って行って本でも読みながらのんびりしようかな。  コップを持ち、台所を出る。そのまま居間を抜けて自分の部屋へ…… 「うわっ!」  足下に、何かが引っかかる。本のような感触だ。  これでバランスを崩した僕は、重力に逆らうことも出来ずに床へ倒れる。  手に持っていたコップも例外じゃない。僕の手を離れ、重力に従って下へ下へ……。 「あ……」  その下は床ではなかった。  長い黒髪と特徴的な狐...
  • 一件落着……なのかな?
    「……ふぁ……暑い」 寝起き第一声がコレとは、もう真夏はすぐそこなのだろう。 気だるい身体を無理やりに起こしてベッドから出る。 ……すごい寝汗だ。この所為で普段より幾分か早起きをしてしまったようだ。 仕方が無いので、普段は入らない朝風呂と洒落込むとしよう。 僕は風呂場へと直行した。あまりにも寝汗が気持ち悪いからだ。 しかし、もし先にリビングで誰かしらに挨拶をしていたなら、この後の運命は変わったのかもしれない。 脱衣所へのドア。僕は迷いなく開けた。 そこで僕を待ち受けていたのもは……。 「「あ……」」 僕らは暫しの間呆然としていが、数秒の後、僕は無言でドアを閉めた。 何が起こったのか良く分からなかった。 ただ一つ分かったのは、ちょうど風呂場から出てきた一糸纏わぬ姿の黒曜石が居たこと。 ……ああ、やっちまったのか。今までこういう...
  • 四季
      殺生石が、窓の前でくつろいでいる。   夏の終わりが近い日差しは幾分柔らかくなっているようで、それが殺生石にはとても心地いいものなのだろう。 主「殺生石、お茶いる?」 殺「主様……いえ、だんな様もご一緒なら」   今日は二人きり。この前のようにまたこうして二人でお茶を飲む事になった。   殺生石には熱い緑茶。僕は冷たい麦茶。お茶請けには一口サイズのいなり寿司。   何もかも前と一緒。代わり映えしないお茶の風景……いや、こうして夏の終わりを感じながらお茶をするのは、初めてだったかな。 主「いい天気だねぇ」 殺「はい。お洗濯にはちょうど良い日和です」   窓から見える小さな空に、雲が流れる。心なしか遠く感じる雲。 殺「だんな様はおいくつですか?」   唐突に投げかけられる質問。そう言えばもうすぐ誕生日だったんだな、僕。 主「21。あと少しで誕...
  • だってせくしぃなんだもん
    「た、蛋白石っ」 「ご主人様……なんだか……顔、怖いですよ?」 「そ、そ……そんなことはぁ…………蛋白石ぃーっ」 「きゃーっ!」 「うわあぁぁっ!」   なんだなんだなんだぁ!?   ……って、夢か。ふぅ……。   新年早々僕はなんて夢見てるんだか。というか初夢かぁ……。   でもそれが、その……蛋白石を襲う夢っていうのは、どうなんだろう。   そりゃまぁ、蛋白石とはそういうことしたいって思うし……うぅ。 「ご、ご主人様っ、大丈夫ですか!?」   と、今一番顔を合わせたくない相手がさっそく来てしまう。あー、大声出さなきゃよかった。 「すごい声でしたよ。もしかして悪い夢でも見ちゃいましたか?」 「う、うん、ちょっとね……は、ははは」 「? どうしてこっち向いてくれないんですか?」 「……ほ、ほっぺたに枕の跡がついてるんだよっ」   蛋白石の顔、まともに見...
  • 七夕の災難
     短冊に書く願い事。  見せ合っている子もいるけれど、僕のは到底見せられない。  『もう少し女の子らしくなれますように』  ……こんなの見られたら、本当に大変だ。特にアメジストには。 「私には、何だって?」 「うわあぁぁっ!?」  どうして彼女はこんなにも唐突なんだろう。 「ふむ、女の子らしく、か。そうかそうか」  で、いつの間にか僕の手から短冊はなくなっていて……。  短冊を持ったアメジストが、何故かとても嬉しそうに見えた。 「えっ、あ、か、勝手に見ないでよっ!」 「大丈夫、誰にも見せないよ。もちろん月長石にも」 「そ、そういう問題じゃなくてっ……って、えぇっ、ど、どこに行くのっ!?」  突然アメジストにさらわれたと思えば、着いたのは何故か僕の部屋。  いや、僕の部屋というのはおかしいか。マスターの家だし……。 「さて、用意したのはいいが、どうしたもの...
  • 重たくない?
    「ねぇ、殺生石。いつも思うんだけど」  僕の隣でお茶を飲む殺生石。  視線の先には、毛並みの美しい立派な狐の九尾。 「何でしょう……だんな様?」 「ん、あぁごめん。あのさ、その尻尾って重たくない?」  その尻尾は、9本とも殺生石の身長と同じぐらいありそうな、 とても大きなものだ。  ふくらみのほとんどは体毛だとしても、これだけの尻尾を織り成す付け根部分が9本ともなれば、 相当の重さになると思う。  そんなものを、外すわけにも行かずいつもつけている殺生石。もしかしたら、 相当体に無理がかかっているかもしれない。 「重たい、ですか」 「うん。これだけ大きいとさすがに気になっちゃって。もしかして気に障った?」 「いえ、別に。体重のことではありませんから。それにだんな様になら、 わたくしのことを包み隠さず教えて差し上げますよ……ふふふ」 ...
  • 同志、君もシベリアで……
    「マスタマスタマスタっ、大変や!!」  いつもより三割増しに騒がしく帰ってきた化石。  このように、慌ててくる化石が持ち込んでくる話は、大抵俺が苦労することになる。 「大変やー!」 「ぐあっ、こ、こら! 手元狂う! 内職がぁぁ!」 「そんなんどーでも……ええ訳ないやん……ちゃう! それより大変や!」  俺の腕をしっかりと掴みながら、そのメガネを鼻先まで近寄らせてくる。  ……というか、ヘタすればくっつくぞ。あんなところとこんなところが。 「うちらに重大任務や! ペリ姉からの直々や!」 「分かった分かった。だからこの距離で大声出すな。つばが飛ぶ」 「クリスマスツリーの準備? 俺達が?」  化石が言う重大任務とは、あまりにも庶民的なものだった。  今年の宝石乙女が集まるクリスマスパーティ。その装飾のメインを飾るツリーを、俺達が用意するというものだった。  方法は...
  • 女の子にさせられた日
      誰が言ったか分からない。   だが、3月3日と5月5日の間に当たる今日。そう、4月4日。   この日をオカマの日と呼んだ面白い人に、僕は少しばかり恨みを抱きそうになった。 「ねーねー、これなんかどお?」 「ふむ……似合うんじゃないかな、彼なら」   椅子に縛られた僕の前で、アメジストさんと月長石ちゃんが服の品定め。   ……僕は、何故か二人の玩具にされていた。   アメジストさんと月長石ちゃん。   特に親しい間柄ではないし、むしろ敬遠されがちと言っても良い。   そんなことがあったから、月長石ちゃんが何気なく僕に話しかけてきたのはずいぶんと驚いた。 『ちょっと話があるからうちに来てよっ』   僕の前に颯爽と現れた月長石ちゃん、一点の曇りのない笑顔。   ちょうど暇だったのも相まって、その時は何も考えずに二つ返事で付き合う事に。   で、連れられてきたの...
  • お勤め、ご苦労様
      世間では勤労感謝の日と呼ばれる休日。しかしなんと運の悪いことか、俺にそんなものは存在しなかった。学生諸君が羨ましい限りだよ、まったく。   というわけで夜。さすがに秋も深まってるせいか、けっこう寒くなってきたと思う。 「ただいまー。うぅ、さぶっ」 「お帰りなさい。祝日なのにお疲れ様でした」   さっそく出迎えてくれる漬物石の笑顔。うーん、癒される。この顔があれば、理不尽な休日出勤も堪えられるというものだ。 「あ、あのぉ、頭あまり撫でられると髪が……」 「え? おっとすまん」   無意識のうちに漬物石の頭を撫でていたようだ。頭がちょうどいい位置にあるからなぁ。 「さてと、飯の準備でもしようか。お腹空いただろ?」 「あ、今日は私が全部やっておきました。匂いしませんか?」 「え、そうなのか……ダメだ、鼻詰まってるみたい」 「風邪ですか?」 「いや、ただ外が寒かっただけ...
  • 濡れ鼠の鉄鉱石
     シャワーだと言って、雨の中ではしゃいでいた子供がいたのは、どこの国だったか。いや、そのときは大人も混じっていたか。ずいぶんと幼稚なことだが、そこは平和そのものだったな。  だが、ここにそんな幼稚な大人はいない。皆が傘を差し、似たような格好をして道を行く。  駅前での雨宿り。この国には梅雨という雨の多い時期があることを、完全に失念していた。  ドレスが水を吸ったおかげで重い。その上スカートの中は湿気が充満して気持ち悪い。  最悪だ。何がとは言わない、すべてが最悪だ。スカートの端から、帽子の端から落ちる水滴が恨めしい。アスファルトに浅い水たまりができるのが恨めしい。この長いスカートを絞ってやろうかとも考えたが、さすがに人前でそれはまずい。金剛石ではあるまいし。  金剛石か……きっとあいつも、外に出ていたら傘など持っていないのだろう。そんなことを考えていたら、不意に隣に駆け込んでくる...
  • 大晦日の……
    「虎目石ー、テレビつまんないんだけどー」 「……テレビ局に言って」   そのテレビ局ははるか遠く。愚痴る相手は虎目石しかいない。   あーあ、退屈だなぁ……日付が変わればそれなりに面白いこともあるんだけどな。   でもどーして年末っていつもテレビつまんないんだろう……年末、年末……ねんまつ。 「……年末なだけに、つまんね。ナンチテ」 「置石、寒い。窓閉めて」 「うわっ、冷たいツッコミ! もう少しツッコミのやり方があるでしょーっ」   だいたいこちらに顔も向けず、表情も変えず……くっ、虎目石ノリが悪い。 「せっかく思いついたのになぁ」 「もし駄洒落のつもりなら、反対から言うのは駄洒落じゃないと思う」   ん、そうなのかなぁ……。 「あまり難しく考えると知恵熱出る」 「むっ、あたしの頭はそんな低スペックじゃないわよっ」   虎目石ってホント、駄洒落には冷たいんだから...
  • 眠り姫
      目が覚める。なんとなく違和感……何だろう……ああ、そうか。自分で起きることなんて、しばらくしていなかったな。朝はいつも起こしてもらっていたっけ。寝坊しそうな時はフライパンを片手に持ってきていたな……どうするつもりだったのだろう……?   それよりも、今何時だ? あれ? やばっ、どうしたんだ今朝は? ペリドットは?    部屋を出て居間に向かう。暗い。静かだ。キッチンにも動いている気配がない……おかしい。っと、猫たちが腹を空かせている。はいはい、すまんがカリカリで我慢してくれ。さて、ペリドットは……。   彼女の部屋に向かう。静かだ……やっぱりおかしい。 「ペリドット、入るよ」   部屋に入る。彼女はまだベッドで眠っていた。なんだ、寝坊か。そりゃ、たまには寝過ごすよな。たまには起こす側にまわるのも、悪くない。 「おはよう。朝だよ。起きて下さい……。おーい、朝だよぉ...
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