LEVEL4 -justice- ◆j1I31zelYA













      \アッカリ~ン/












「はーい! バトロワ、はっじまーるよー」








京子「さて、あかりの出番はここまでなわけだが」

「ふええっ!?」

――アッカリ~ン!
パッ(アッカリ~ンの擬音と共に、あかりの体が透明人間に!)



「どういうこと~っ? だってあかり、予約された時はちゃんといたよね~っ!?」


【歳納京子@概念】
[状態]:ナレーション

【赤座(略)@概念】
[状態]:もうすぐ出……るのか?
※上記の文章はフィクションです。本編とはあまり関係ありません。








「……つまり、『天界』という存在を受け入れなければ、話が進まないということですのね」
「そういうこったな。クロコのいう『超能力』だってオレは初耳なんだけどよ」

ホテルの最上階付近に設けられたスイートルームのベッドに腰掛けて、白井黒子は密談を行っていた。
ベッドルームの内装は、きらびやかさと落ちつきが絶妙に調和した豪華なものだったが、
常盤台中学で上流階級の生活に慣れている彼女にとっては、そこまで眼をみはるものでもない。
むしろ、ディバックの中にいた『支給品』こそが、どう考えても興味深いものだった。

「そしてテンコさんは、その『神様決定バトルロワイアル』の中で、植木さんという方の率いるチームに味方していらしたと。
つまり、少なくとも、チーム内の植木さん、佐野さん、宗屋さんは安全な人物と考えてよろしいですのね」
「おうよ。あと、マリリンも大丈夫だな。植木たちにこないだの試合で負けてからはいい奴になったぞ。
ただ、ロベルトとバロウは危険だな。ロベルトに至っては本名アノンっていう地獄人だしよ」

実に流暢に人語を喋るその生き物の名を、テンコというらしい。

地球上の生き物で例えるとすれば、猫の体に蝙蝠の翼、牛の角をミックスさせた外見が、それに近い。
ただし後足はない。黒板消しのような形をした台座から、直接に胴体が生えていて、ふよふよと黒子の目線で滞空している。

なるほど、白井黒子とて、最先端の技術を全て把握しているわけではない。
特に彼女が所属する『学園都市』の暗部は、とても表には出せないような秘密裏の生物実験を行っているとも聞く。
しかし、だからと言ってこのような珍獣を生みださねばならない理由などないはずだ。
このテンコという生き物は、間違いなく常識の通用しない世界から来たのだろう。

「しかし、あなたの話を受け入れるとしても、符に落ちないことがありますわ。
あなたの話では、『神様』とやらは天界人の神候補の中から決めるはず。
それなのに、この殺し合いでは私たちの中の誰かに『神の力』を授けるというではありませんの」
「そこがオレにも分からないんだよ。コースケたちはあくまで『神候補が選んだ能力者』のはずなんだ。
ましてや、もう三次選考も佳境なのに、参加者を選び直してバトルロワイアルだってのもおかしい」

しかし、現状に対して答えを持っているわけではなさそうだ。
つまり、この生き物もここに呼ばれた50人余りと同じ。
何も知らされず理不尽に巻き込まれた、被害者の一人ということ。

「そしてこれからのことですが、テンコさんは植木耕助さんの大事な『神器』を預かっている身なので、何としても合流しなければならない。それでよろしいですのね?」
「そう! そうなんだよ。コースケがレベル2になってから神器を戻してやらないと、ロベルトクラスの敵は倒せねぇんだ」

やっと意思疎通が完了したことを喜んで、黄色い生き物が万歳する。

「コースケの奴、正義の心が強いからな。『神器』が使えないのに、誰かを助けるために無茶をやってそうで心配なんだよ」

テンコは大きな白い瞳を悩ましげに細めた。
その言葉から、だいたいの想像はつく。
おそらく、自分の身を顧みず、他者を助けようとする類の人物なのだろう。

「正義、ですか……」

黒子自身も、身を挺して正義を貫く人間は嫌いではない。
……もちろん、そうなった時に自分自身が生きて帰ることは、絶対条件として。
そのような信念を通す為に風紀委員(ジャッジメント)に所属しているのだし、彼女の周囲にもそういう仲間や先輩がいるのだから。

「そういうわけだから、オレはコースケを探しに行くぞ! クロコがもしコースケに会ったら――」
「お待ちなさいな」

話し終えたとばかりに飛び立とうとしたテンコに軽く触れると、「ふぎゃ」と叫んでベッドの上に転移し、めり込んだ。
白井黒子の『空間移動能力(テレポート)』は、その手で触れさえすれば発動する。

「それではあまりに危険ですわ。あなたが1人で敵と遭遇した場合、自分の力で身を守れる保証はありますの?」
「そりゃあもちろん! …………難しいかも、な。前にドグラマンションにいた時みたいに、巨大化できなくなっちまってるし」
「ならば、私の保護下におかせていただきますわ。人探しをするなら、私のテレポートを使った方が効率的ですし」
「そうなのか? 恩に着るぞ!」

殺し合いに乗らない安全な人物なのだとしたら、テンコともども、保護しない理由はない。
それに、種類は異なれどもいち『能力者』として、殺人ゲームに乗りかねない危険な『能力者』を、野放しにするわけにはいかない。
もしその『植木チーム』とやらが、正義の為にロベルト・ハイドン達を止めるというのなら、救援ないし共闘の申し入れが必要だとも考えていた。
(基本的に白井黒子は民間人を巻き込むことを好まないが、状況が状況である以上はやむを得ない)
1人の『能力者』として、『他者を害する能力者』を看過することはできない。
風紀委員(ジャッジメント)の管轄外である学園都市の外でも、それは同じだ。
己の信念に従い正しいと感じた行動を取るべし、なのである。


 ◆◇◆◇◆


「とはいっても……テレポートを使っても、ホテルの全室を探しまわるのは骨が折れますわね」

そういうわけで、一旦エレベーターを使って降りることにした。
下から見て回ることにしたのは、一階にホテルの調理場があるはずだったからだ。
そこならば、普段使っている金属矢の代用となる刃物があるかもしれない。

「ほぉー。高いなー。数十万年閉じ込められてる間に、人間界も進歩したもんだ」

テンコが分厚いガラス窓に張り付いて、エレベーターからの夜景に見入る。

「数十万年前なら、まだジャワ原人の時代ですわよ……」

その小動物のような外見と、いかにも子どものような声で数十万歳とは。
つくづく、先入観を持って接するのはよくない。

「しかし灯りが少ないなー。近くにあるのはこの建物だけなのか?」
「おそらく、このエレベーターが山側を向いているせいでしょう。
このGPSと夜景だけでは、地名を特定するまでには至りませんけれど」
「そうなのか。しかし静かな夜だなー。今この時も殺し合いをしてるなんて嘘みたいだ」
「仮に、ここから見える範囲で戦闘音がしたとしても、これは防音ガラスのようですから届かないと思いますのよ」
「そっか……そういや、クロコの支給品にそういう戦闘音とかを知る道具があったんじゃねえの?」
「ああ……『日記』のことですの」

チン、と音を立てて、エレベーターが一階に到着。
電波が届く環境になったところで、黒子は携帯電話と『日記』を取りだした。

「確かに、この『正義日記』とやらを使えば……近辺の『倒すべき悪』が予知されるそうですけれど。
それでも私は、現時点でこれと『契約』するのは早急だと思いますの」
「リスクが大きすぎるからか? でもその『ボイスレコーダー』を壊されない限りは安全なんだろ」
「それだけではありませんのよ。」

黒いやや旧式のボイスレコーダーを手の中で弄ぶ。
所定の電話番号に電話をして『契約』すれば、そのレコーダーから未来予知が流れてくるらしい。
普段の黒子なら、眉つばと疑ってかかるような話だ。
予知能力(ファービジョン)の応用と考えたとしても、無能力者を能力者にするようなケースはあり得ない。
それに近いことをしたのが『幻想御手(レベルアッパー)』だが、それだって本人の持っている能力レベルを引き上げたのに過ぎない。
しかし、それはあくまでも、白井黒子の住む世界の常識なのだった。
テンコを受け入れるなら、未来日記とやらも受け入れなければならない。
そういう意味では、未来日記の性能はあまり疑っていなかった。
だから白井黒子が契約を躊躇うのは、別の理由だ。

「この説明書によれば、予知される情報は『所有者の主観に寄る』とありますわね」
「そう書いてあるな」
「そして、この『正義日記』は『為すべき善行と倒すべき悪行を予知する』と書いてあります」
「主観に異存して悪行を予知する……つまり、悪人が契約しても、悪いことを予知しないってことか?」
「その可能性も考えられますが……それほどではなくとも、契約した当人の正義感が、偏っていたり、消極的だったりすると、扱いにくくなりますわね」
「どういうことだ?」

テンコは黒子の頭の高さで滞空したまま、小首をかしげる。
黒子はあくまで真面目な顔で、言った。

「例えば、一般的に見て、『無断で女子中学生にセクハラを働く』という行為は痴漢ですし、それに反撃して相手を半殺しにするという行為は過剰防衛ですわね」
「そりゃあ、犯罪行為だな。っつーか、何で痴漢なんだ?
現状は殺し合いなんだから、他にも色々と酷いことがあるはずじゃねーのか?」
「しかし、ですわ。もしこの私が、この会場で愛しいお姉さまと再会を果たせたとしましょう」
「お姉さま……っていうのはミサカっていう姉ちゃんのことか?」
「はい、その場合、再会に感極まった私が愛情表現の一環として、
お姉さまの慎ましやかなお胸に愛撫を加えたり、押し倒してしまったり、
その反撃としてお姉さまから強力な電撃を浴びせられたりしたらくふふふふふふふふ。
……ゴホン! それらの行為を『正義日記』は予知すると思われますでしょうか?」

「…………おい、今なんつった」

「おそらく、残念ながら『正義日記』は再会を予知しないでしょう。
私の主観ではそれは犯罪行為にあらず、日頃から行われている、お姉さまのスキンシップなのですもの」
「つーか一般的にヤバいって自覚あるのに日頃からやってるのかよ!」

ビシッと音がしそうな鋭さで、テンコの突っ込みがとんだ。
したたり落ちそうなヨダレをこらえて、黒子は続ける。

「まぁ、今の例えは極端すぎたかもしれませんが。
例えば、あまり正義感の強くない臆病な人が契約した場合、戦闘行為の予知が行われにくくなったり。
逆に、正義感の強すぎる人物が契約した場合、予知に踊らされて殺人者との戦いを重ねて、撤退すべき局面で撤退できなかったり。
そういう、使いこなせないリスクが大きいのがこの『日記』なんですの」

最初からそう例えろよ、という突っ込みがどこからか聞こえた気がしたが、聞き流す。

「ですから、所有者としてふさわしい方に託せるか、私が契約せねばならないという状況が来るまで、『保留』にいたしましょう。
ルールによると、所有者を他人に上書きすることはできても、解約をすることはできないようですし」
「なるほど、クロコは頭がいいんだな……」
「そしてもう一つの問題ですが、『日記はおそらく複数ある』と思いますの」
「マジか……!? どうしてそう思うんだ?」
「この、ボイスレコーダーを破壊されると死ぬという説明をご覧くださいまし」
「ここか? 『未来日記の破壊は所有者の死を意味する。何故なら、未来日記の破壊は、所有者の未来を破壊することに等しいからである』……」
「この部分では、『正義日記』のことを『未来日記』と称していますの。
つまり、『未来日記』という予知アイテムが複数あり、『正義日記』はその一つだと考えられませんこと?」

さらに言えば、その別の『日記』は、ボイスレコーダーの形をしていない可能性が高い。
『日記』という名称から、基本的に文章の媒体だった方が自然だからである。

「その場合、細かい点で疑問は残りますわ。
例えば、一人の所有者が複数の電話番号を手にした場合、複数の未来日記を『所有』することは可能なのか。
あるいは、例えば携帯電話が未来日記になるような仕様だった場合、複数の参加者が同じ番号に電話をかけると、全ての携帯電話が未来日記になってしまうのか。
可能ならば、一人で未来の完全予知を実現する所有者が現れるかもしれません。
殺し合いに乗った人間がそうなってしまうケースは何としても阻止しなければなりません。
……そうですわね。そこを確認する為だけにも、電話をかけてみるとしますか」

黒子は、説明書に付記された番号に電話をかけた。

「あの、契約を保留として、ルール説明を詳しくお聞きしたいのですの」
『なんじゃ、契約せんのか。それならスマンが、後で電話してくれぬか。
≪只今、回線がたいへん込み合っております≫での。ワシも忙しいのじゃ』

なるほど、スピーカーの向こうからは、さかんに『トゥルルル、トゥルルル』と複数のコール音が聞こえている。
黒子の答えを待たずして、電話は切れた。

「考えてみれば、無理からぬことですわね。『未来日記』について気になるのは、私たちだけではありませんでしょうし。ここは順番待ちをいたしましょう。
そうですわね……ホテルの探索を終えて、ホームセンターに向かう道中でまたかけてみるとしますか」
「ホームセンターに行くのか?」
「ええ。私が普段使っている金属矢の、代りになる釘か何かが必要ですし。テンコさんには、行きたいところがありますの?」
「いや、オレもアテはないし、そこで構わないぞ。それにホームセンターなら佐野が手ぬぐいを探しに来るかもしれ――」


――どしん!


エレベーターを出て、一旦玄関ホールに出た2人の耳に、何かがぶつかったような衝撃音が届いた。

「敵の攻撃か?」
「いえ、爆音や戦闘音の類ではなさそうですわ」

黒子の眼付きが、瞬間的に鋭敏なものへと変わる。
ヒュン、と空気を切る音を残して、テンコごと壁の向こう側へ飛んだ。


そこには、ホテルの壁面に激突した、箱入りの『何か』がいた。

なぜ『何か』なのかというと、まるで誰かが狙ったかのように、その姿が隠れていたからだ。

奇妙なマスクを被った犬たちが、その『何か』を覆い隠していたからだ。

――ワンワンワンワンワン!


「…………どなた?」


数十頭はあろうかという犬の大群と、その群れに懐かれて埋もれている『誰か』だった。


【C-6/ホテル前/一日目・黎明】

【赤座あか(ry@ゆるゆり】
[状態]: 気絶中。\アッカリ~ン/(犬に隠れて姿が見えない)
[装備]:わんわん日記(飼育日記)@未来日記、手ぬぐいの詰まった箱@うえきの法則、着ぐるみパジャマ(わんわん)@ゆるゆり
[道具]:基本支給品一式
基本行動方針:みんなと協力しておうちに帰る
1: よかった……ちゃんと(?)、出番あった……
2: 京子ちゃん、結衣ちゃん、ちなつちゃん、杉浦先輩と会いたい。
[備考]
数十頭の犬たちにたかられています。
犬たちは全頭揃っているかもしれませんし、あるいは山を下りる最中に何匹かはぐれてしまったかもしれません(次以降の書き手さんに任せます)


【白井黒子@とある科学の超電磁砲】
[状態]: 健康
[装備]:テンコ@うえきの法則
[道具]:基本支給品一式 、正義日記@未来日記、不明支給品0~1(少なくとも鉄釘状の道具ではない)
基本行動方針:正義を貫き、殺し合いを止める
1: これ、誰ですの?
2:しばらく時間がたったら、再度ムルムルに電話をかけて未来日記の制限を確認する。
3:鉄釘を入手する為、ホームセンターに行ってみたい。(いったん、調理室のナイフ類で代用する)
4:お姉さま、初春、佐天さんとの合流。
[備考]
天界および植木たちの情報を、『テンコの参戦時期(15巻時点)の範囲で』聞きました。
あかりと桐山の呼びかけを聞き逃しました。(一度目は防音のきいたスイートルームにいたため。二度目はエレベーターの中にいたため)


【テンコ@うえきの法則】
白井黒子に支給。
植木耕助の連れている天界獣。
15巻、バロウ戦の直前から参戦。
天界獣は天界力を溜めこむ性質を持っている為、この時期のテンコは植木耕助の『神器を使う為に必要な天界力』を保管している。
(植木の近くにいれば、テンコの意思で天界力を植木に戻すことができる)
本来の天界獣に巨大化能力はないが、テンコは突然変異種で先祖返りを起こしている為に、成長するにつれて巨大になった。
(ただし、本ロワでは巨大化及び、巨大化した際のバリアを張る能力などは制限されている)


【正義日記@未来日記】
白井黒子に支給。
未来日記所有者12th、平坂黄泉の未来日記。
『未来になすべき善行と、倒すべき悪』を予知する未来日記。(ただしあくまで所有者主観)
他の未来日記と同じく、ボイスレコーダーの破壊は所有者の死亡を意味する。



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そしてあかりはいなかった 赤座あかり Hello Little Girl
最終更新:2012年05月17日 19:16