◆



       わたしは どうして 夢を見ないのだろう?



                ◆



 私の名前は空条徐倫

 私は父親が好きだ。彼との思い出は多くはないが、どれもが貴重な思い出だ。
 幼い時、肩車をしてもらった、あの楽しさが忘れられない。
 大きな背中におぶってもらいると、ついついそのまま遊び疲れて、寝てしまったこともあった。
 滅多に笑わない父だったが、私といるときはいつも優しげに微笑んでいた事を覚えている。
 そんな父親が、私は大好きだった。

 私の名前は空条徐倫。

 私は父親が嫌いだ。彼と会うときはいつも悪い話を聞かされるからだ。
 父親は私に興味がない。母にも興味がない。私が問題を起こしても、彼とはいつも電話越しでしか会えなかった。
 母と私を残し別居すると言った時も、離婚すると言った時も彼の声は波一つ立てなかった。
 そんな父親が、私は大嫌いだった。 

 私の名前は空条徐倫、私は―――

「違う……。これは、“わたし”だ。これは、空条徐倫ではない……」



 ……私の名前は空条徐倫。

 私は今、悲しんでいる。私は今、後悔している。
 父親ともっと話しておきたかった。私の気持ちをもっと、伝えたかった。
 私の心の中に、常に父親はいた。いつだって父を求め、信じて、待っていた。
 私の元に駆けつけてくれる父親を、私はいつも待っていた。
 父親なら私を救ってくれる、父親なら何があろうと私を守ってくれる、信じてくれる。そう思っていた。

 大好きだった。愛していた。
 そんな父はもう、いない。

「ならば、何故怒る……? 裏切られたから怒ったのか? 失ったことを怒っていたのか?」



 …………私の名前は空条徐倫、

 私は友人といるのが好きだ。彼らと、彼女らと一緒に過ごす時間はかけがえのないものだ。
 彼らといると私の心は安らいだ。彼女らといるといつも笑いが絶えなかった。
 馬鹿なことをした。いたずらもした。ふざけ合って、くだらない事で盛り上がって、大騒ぎもした。
 エルメェス・コステロ、エンポリオ・アルニーニョ、ウェザー・リポートナルシソ・アナスイ、そしてF・F(エフ・エフ)。
 誰一人かけることのできない、大切な仲間だ。


「『えふ………、え、ふ………?』」


 F・F(エフ・エフ)……?




「空条徐倫……お前はいったい何者なんだ? お前はいったい誰なんだ?
 なぜわたしを知っている? この記憶は何だ? 一体、お前は何を見たんだ?」


 知りたい、お前がいったい何者なのか。
 知りたい、わたしがいったい何者になろうとしていたのか。そして、わたしはいったいどこに向かって行ったのか。

 農場だけが私の世界だった。ホワイトスネイクとトラクター、DISCと知性だけが私の世界。
 失うことはとても怖い。消え去るのは心底恐ろしい。
 存在していられないのであれば、そこに一体何の価値があるのだろうか。
 それが私だったはずだ。その事に疑問を感じたこともなかったし、不思議に思ったこともなかった。

 だから、私は知りたい。

 彼女にとってわたしとは何だったのか。わたしにとって彼女とは何だったのか。
 そして、さよならを言うとはどういう気持ちなのか。


「……行こう」

 空条徐倫、わたしはお前の事を知りたい。
 空条徐倫、わたしはお前になりたい。

「GDS刑務所……そこに行けばなにかわかるかもしれない」

 わたしはいったい何者なのか。お前はいったい何者なのか。答えはお前自身に、そしてわたし自身に問うとしよう。

 今、この時からわたしが空条徐倫だ。




「徐倫……あたしの名前は空条徐倫です」




                ◆



    失う時が いつか来る事も 知っているの あなたは悲しいほど
 それでもなぜ生きようとするの 何も信じられないくせに そんな寂しい期待で



                ◆








【C-3 サンタンジェロ橋/一日目 黎明】

F・F
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前
[状態]:健康、空条徐倫の『記憶』に混乱
[装備]:空条徐倫の身体、体内にFFの首輪
[道具]基本支給品×2、ランダム支給品1~4
[思考・状況]
基本行動方針:存在していたい
0.GDS刑務所へ向かう
1.空条徐倫を知り、彼女となる
2.自分の存在のため、敵を殺すしかない
3.消失したはずのDISCがあったら守りたい

【備考】
※F・Fの首輪に関する考察は、あくまでF・Fの想像であり確証があるものではありません。
※空条徐倫の支給品(基本支給品、ランダム支給品1~2(空条徐倫は確認済))を回収しました。
※空条徐倫の参戦時期は、ミューミュー戦前でした。
※体内にFFの首輪を、徐倫の首輪はそのまま装着している状態です。

投下順で読む


時系列順で読む


キャラを追って読む

前話 登場キャラクター 次話
012:見知らぬオフィーリア F・F 066:川の底からこんにちは

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年07月19日 22:15