この間、古い友人と飲む機会があってね。そこでスタンドの要素について話し合ったんだよ。
彼の持論は『“スタンド”と“能力”は必ずしも一致しない』ってものなんだけどさ。
これには俺もなるほどなと思ったよ。
例えば、パワー超スゴいとかいうランク付け、あれはスタンドそのものの腕力なのか、それが生み出す能力のパワーなのか、ってね。
いやー熱く語ったよ。そのテーマだけで四時間くらいは話したかな。
最後は俺の意見で話がまとまったんだけどね。それが正解かは次回に持ち越して……ん、その意見?

あぁ、それは『スタンドと能力が一致しないとするなら、それに一番影響されるのは“射程距離”だ』――


「フム、幻影装置(ホログラフ)か」
ライターを拾い上げそう呟いた男の名はドルド

ミステリーサークルの中央に飛ばされたドルドは即座に周囲の状況を把握した。
戦場にいた頃の名残がそうさせたんだろうね。
そして同時に考える。この状況はいったいどういう事か?と。
任務に失敗して霞の目博士から処罰を受けるかと思った矢先に巻き込まれた殺し合い。
でもドルドはすぐに察しがつく。組織の仕業で間違いないだろうってね。
一定条件のもとで殺し合いをさせてその過程をデータ化するとか、新たな改造人間の素体を探すとかいった目的でこんな事をしているんじゃあないか?
それが合っているかどうかは別として……と言うより今の彼にその事は関係ない。処刑を免れたという事は、つまりチャンスを与えられたってことで。
要するに如何にここで成績を残し霞の目博士から評価を受けるかということこそドルドにとっての最重要項目なのさ。

周囲の警戒を始めてから何分と経たない内に東に熱源を感知したドルド。距離にして約七百メートル先。
じっくり様子を見ていると、男がライター片手に喚いていた……と思ったら爆死した。
男の名前?エーと……何だったっけ?まぁいいや、重要なのはそこじゃない。ドルドがそのやりとりを見てたって事。
普通の人間ならば見落としてしまいそうな――と言うより忘れられちゃいそうな戦闘だったけど、ドルドには多数の情報を与える事になった。

ライターの炎の奥から映った黒服の影、そして男の傍に立つ巨大な烏の影。これについてもドルドには思い当たる節がある。
「どこだったか、立体映像を用いた攻撃手段を考えていた研究班は」
そう、彼が所属していた組織の名前はドレス。
オカルト気味た、あるいはSF気味た兵器の開発などは飽きるほど見ていたのさ。
それどころか、そんな技術なんかとっくの昔に通り過ぎて、その結果として現在の生体改造があるんだろう?
もしかしたらまた発想が一巡してそういうところに戻ってくるかもしれないけど、とにかく。
そんなことを思いながら誰に言うでもなく三度めの呟き。
「……これの着火がスイッチになっているようだな」

さて、ドルドがこの結論に至った理由をここで明言しておこう。ドルドは“再点火を見ていた”んだ。
すると一つの疑問が浮かぶ。なぜ、彼はブラック・サバスの攻撃を受けなかったのか?って事だね。今から説明しよう。
――答えは単純。距離があり過ぎたのさ。
皆にも心当たりはあると思う。窓から眺めた駅ビル、その一室の電気がついた、あるいは消えた。
あるいはサイレンの音が聞こえたからと慌てて外に出てみるも視界のどこにも救急車はいなかった。
それと全く同じ現象だよ。遠く遠くの場所で起こった事も視覚、聴覚は受け取れる。
ましてドルドはサイボーグ。遠距離スタンドを伸ばして“ライターの近くで点火を見た”んじゃあなく純粋な視力で見ている訳だ。
で……ブラック・サバスの方はあくまで自動遠隔操作のスタンドだろ?何百メートルも先にいて、点火が視界の片隅にちょっとでも入った、なんて連中をいちいち精密に攻撃できるスタンドじゃあない、と思う。
もっと言うなら、普通の人間なら見えないようなもんがドルドには見えたんだ。ブラックサバスの視点からじゃあそっちに人がいたかどうかすら分からないって訳。

さて、ここまで情報があればドルドがとるべき行動も自然と狭まってくる。
「問題は――誰にこれを拾わせるかだな」
自分で点火する訳にはいかない。ピンチを逃れるための手段で自分まで攻撃の対象になるなんていうのは笑い話にもならないからね。
可能な限り多くの人間の手に渡るような、それでいて警戒心の薄い連中に拾わせるのがベスト。
もちろん自分の武装で攻撃することも考えたさ。でもそれは最後の手段。
だってギャングでさえ信頼できる相手にしか能力を明かさないんだよ?元軍人がそうそう自分の武器を披露すると思うかい?え――あぁ、ナチスの人は例外だよ、置いといて。

とにかく、行動方針も決まったとなれば早速移動だ。
あ――そうそう。ドルドはワムウが走っていくのも見てるよ、上空からね。これでミステリーサークルから飛んで行ったってのもわかるだろ。
相手の頭上を取るってのは何にしても有利だ。そして一番評価するべきはワムウと接触するのを避けたこと。これは賢い。
で、ワムウを避けつつ行動しようとなれば地図の北ラインに沿って移動するか東ラインに沿って移動するかの二択。
その内北ラインは、まあエリア二つとは言え通ってきているんだから自然と東ラインに沿って南下する、目指す第一の目的地は駅と。こうなる訳だ。


さて――ここから先ドルドがどう行動するかは別の機会に話すとしよう。
皆はスタンドの要素で一番重要なのはなんだと思う?俺とアイツが導き出した結論か、あるいは純粋な能力か?それとも別の何かか?
……まぁ、俺は個人的には最重要な要素は“精密動作性”だと思ってるんだけどね。
たまにこういう議論すると面白いだろ?どれ、お茶のお代わりを持ってくるから皆で少し話していてよ――





【A-9南西・1日目・黎明】

【ドルド中佐】
[能力]:身体の半分以上を占めている機械&兵器の数々
[時間軸]:ケインブラッディに拘束されて霞の目博士のもとに連れて行かれる直前
[状態]:健康。見た目は初登場時の物(顔も正常、髪の毛は後ろで束ねている状態)です
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~2(未確認)、ポルポのライター
[思考・状況]
基本行動方針:生き残り、且つ成績を残して霞の目博士からの処刑をまぬがれたい
1.コレ(ライター)を誰かに拾わせる
2.地図の東端を南下して杜王駅に向かう

[備考]
  • 支給品は未確認です。オエコモバの基本支給品はありません(6話『    』を参照)
  • ドルドの移動経路は以下の通りです
ミステリーサークル中央にてオエコモバを見る(第6話『    』)その後飛行して移動、ワムウを見かける(第48話虚言者の宴)、A-9到着、思考して現在に至る
  • ゲームはドレスの仕業だと思っています。





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最終更新:2012年07月19日 22:11