とぶ

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ① 空をかける。鳥や飛行機などが空中を行く。空中を舞う。高く舞いあがる。とむ。 古事記(712)下・歌謡「天登夫(トブ) 鳥も使そ 鶴が音の 聞えむ時は 我が名問はさね」 飛・跳
② 空を切って行く。比喩的に勢いよく対象に向かって動作がしかけられたり、言葉が発せられたりする。 行人(1912‐13)〈夏目漱石〉兄「兄の鉄拳の飛(ト)んで来るのを待ってゐた」
湯葉(1960)〈芝木好子〉「激しい剥きだしの呪詛の声がとんできたし」
はねる。跳躍する。おどる 日本書紀(720)雄略九年七月(前田本訓)「其の馬、時に濩略(もことか)にして龍のごとくに翥(トフ)」
④ 空中に散る。空(くう)に散乱する。飛散する。 万葉集(8C後)四・五四三「待乳山 越ゆらむ君は もみち葉の 散り飛(とぶ)見つつ」
⑤ ( 宙にはね上がるようにして落ちる意から ) 切れる。切られる。 「首が飛ぶ」「ヒューズが飛ぶ」
女工哀史(1925)〈細井和喜蔵〉九「プラット式力織機などには杼の飛ぶことを防ぐ為めのオートマチック・シャットル・ガードを」
⑥ 走る。かける。速く行く。走りまわる。 浄瑠璃・傾城反魂香(1708頃)中「思ふ願ひがかなはずは、西所川原か舟岡へすぐとばふと思ふ気で」
⑦ ( 多く「飛んで行く」「飛んで来る」「飛んで出る」などの形で用いて ) 急いで移動する。あわててやる。 銀の匙(1913‐15)〈中勘助〉前「番頭や女中たちがとんできて」
⑧ 飛行機などに乗って目的地へ行く。 肌色の仮面(1962)〈高木彬光〉翡翠の女「富岡はあいにく〈略〉大事な調査がありまして、九州の方へ飛んでおります」
⑨ 視線や気持などが離れたところにすばやく向く。 黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉五「と云ふ句は、敬二の心を西に飛(ト)ばせた」
⑩ すぐになくなる。消えてしまう。 歌舞伎・東海道四谷怪談(1825)四幕「たった一まひのどてらは、大家がたて催促に飛(ト)んでしまふし」
⑪ 間を越えて先へ移る。間を省略して次に行く。また、順序に従わずへだたる。他に移る。はなれる。 社会百面相(1902)〈内田魯庵〉古物家「時にお話は飛びますが」
⑫ ひろまる。あまねく伝わる。早く普及する。世間に伝わる。伝播(でんぱ)する。 ごりがん(1920)〈上司小剣〉一「隆法の葉書が、方々へ飛んだ」
⑬ 常識からはずれる。普通一般とかけはなれる。→とんだとんだる 唐獅子株式会社(1978)〈小林信彦〉唐獅子意識革命「これを〈翔んでる女〉と呼ぶ」
⑭ 取引市場で、相場が急に、大幅に騰貴することをいう。
⑮ 逃亡する、行方をくらます意をいう、盗人・てきや仲間の隠語。 〔日本隠語集(1892)〕
或殺人(1962)〈森茉莉〉「李は其後又何か間違ひをやって、シンガポオルに飛び、コックなぞをして四五年潜んでゐました」
広辞苑 自動詞 ①大地から離れ空に上がる。高く舞いあがる。空中を移動する。 古事記下「天―・ぶ鳥も使そ」。
万葉集「真土山越ゆらむ君は 黄葉 (もみちば)の散り―・ぶ見つつ」。
新古今和歌集夏「蛍―・ぶ野沢に茂る葦のねの」。
「―・び来る弾をかいくぐる」「滴が―・ぶ」
飛ぶ・跳ぶ
②空中にはねる。跳躍する。 平家物語11「能登殿は早業や劣られたりけん、やがて続いても―・び給はず」。
「溝を―・ぶ」
③空中を通り、離れた所に達する。動き出す時の強い力で遠い所までゆく。 「球は場外まで―・んだ」「野次が―・んだ」
④順序を経ないで、間をこして先へ進む。 「ページが―・んでいる」「話がとんでもない所に―・んだ」
⑤急いで行く。急行する。 枕草子95「追ひてゆけど、すのもとにとまりて見たる心地こそ、―・びも出でぬべきここちすれ」。
「記者が現場へ―・ぶ」
⑥走る。
⑦世間にひろがる。世間に伝わる。 「流言が―・ぶ」
⑧行方をくらまして遠くへ逃亡する。 「犯人は海外へ―・んだらしい」
⑨消え失せる。 「賞与の半分が―・ぶ」
大言海 自動詞 ()ヲ活用セル語カ〕
(一){翼ヲ動カシテ、空ヲ行ク。翔ル。
宇治拾遺、三、十六條「飼フホドニ、とぶホドニナリニケリ、云云、アハレとびてイヌルヨ」
古今集、四、秋、上「白雲ニ、ハネウチカハシ、とぶ雁ノ、數サヘミユル、秋ノ夜ノ月」仁德紀、四十年三月「ハヤブサハ、天ニノボリ、 等弭 (トビ)カケリ」
「鳥飛ぶ」
(二){吹キ上ゲラレテ散リ行ク。 萬葉集、四 廿三 長歌「モミヂ葉ノ、散リ飛ぶ見ツツ」
同、十七「ミ園生ノ、モモキノ梅ノ、散ル花ノ、天ニ 登妣 (トビ)アガリ、雪トフリケム」
「紙飛ぶ」塵飛ぶ」
(三)ヲドル () 「蟲飛ぶ」
(四)(アヒ)、隔タル。閒ヲ置ク。 「二三枚飛んデ畫アリ」
(五){走ル。カク。馳ス。 枕草子、五、四十七段「追ヒテユケド、スノモトニトマリテ見ルコソ、とびモ出デヌベキココチスレ」
動詞活用表
未然形 とば ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 とび たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 とぶ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 とぶ も、かも、こと、とき
已然形 とべ ども
命令形 とべ

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附箋:四段 自動詞

最終更新:2025年07月13日 15:33