いし(石)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 鉱物質のかけら、かたまり。普通、岩より小さくて、砂より大きいものをいう。広くは、岩石、鉱物を総称する。装飾的な庭石、置き石などにもいう。 ※万葉(8C後)五・八六九「帯日売(たらしひめ)神のみことの魚(な)釣らすとみ立たしせりし伊志(イシ)を誰見き」
〔十巻本和名抄(934頃)〕
② (①の一般的性質、状態から) 堅いもの、冷たいもの、無情なもの、つまらないもの、困難なこと、堅固なことなどのたとえに用いる。 ※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「黄金白玉をば瓦(かはら)石(イシ)と同じくせり 青(あをき)珠、赤珻(あかたま)をば沙(いさご)土(つち)と斉しくせり」
※浮世草子・立身大福帳(1703)四「別れし人の為に、永く一代身を石にするがってん」
③ 建造物の石材、または土台などの石。〔日本国考略(1523)〕
④ ①のうち、特定のものをさす。
(イ) めずらしい石。宝石。
※宇津保(970‐999頃)蔵開中「未(ま)だ革もつけでいしにて侍り」
※兵隊の宿(1915)〈上司小剣〉六「指輪もよそいきの石の入ったのを一つ」
(ロ) 時計の歯車の軸に用いる宝石。
(ハ) 火打ち石。 ※長秋詠藻(1178)上「いしをうつ光のうちによそふなるこの身の程をなに歎くらむ」
(ニ) ライターの発火用の合金。ライターいし。
⑤ 胆汁(たんじゅう)の成分などからできる、かたい物質。たん石。結石(けっせき)。 〔医語類聚(1872)〕
⑥ 囲碁や昔の双六(すごろく)などに用いた白と黒の石。碁石。 ※徒然草(1331頃)一三七「継子立(ままこだて)といふものを双六(すごろく)の石にて作りて」
墓石(はかいし)石碑(いしぶみ)のこと。 ※謡曲・定家(1470頃)「まことの姿はかげろふの、石に残す形だに、それとも見えぬ蔦葛」
⑧ 石炭、泥炭などのこと。 ※浮世草子・好色万金丹(1694)五「石(イシ)を薪にする在所、蛇を餠にする国もあり」
⑨ じゃんけん(石拳(いしけん))の手の一つ。ぐう。にぎりこぶしであらわす。 ※明治大正見聞史(1926)〈生方敏郎〉憲法発布と日清戦争「鋏や石や風呂敷(東京の児童のいふ紙)の形を出して決める」
⑩ 石御器(いしごき)のこと。茶わん。まれに杯のこと。 ※浄瑠璃・妹背山婦女庭訓(1771)四「これからは嘉例の騒ぎぢゃ、調子が合はいで面白ない。この石(イシ)できゅうっとやらんせ」
⑪ 道しるべのために置く石。道石(みちいし)。 ※雑俳・柳多留‐九八(1828)「不案内石に聞いてはまがって行」
⑫ 石だたみ、石がわらのこと。 ※馬鈴薯の花(1913)〈中村憲吉〉大正元年「舗石(イシ)の上に曇影(くもり)ふみつつたまたまに己(おの)が足(あ)の音(と)にさめ返るかな」
⑬ 陰毛を切るために、湯屋(ゆや)の流し場などにある石。湯屋の石。毛切り石。 ※雑俳・柳多留‐七(1772)「石で切るのをあぶながる女の気」
⑭ 能楽で用いる舞台道具の一つ。①の形に作り中央から二つに割れるもの。「殺生石」「一角仙人」などに用いる。
⑮ 「石(こく)」を訓よみにしたもの。米一石(こく)。 ※咄本・醒睡笑(1628)五「教月坊、例の狂歌を持たせ定家のもとへ、『教月がしはすのはてのそら印地(いんじ)としうち越さん石一つたべ』よねを五斗参らせられし」
⑯ 紋所(もんどころ)の名。石畳車、丸に一つ石、三つ石、四つ石などがある。
広辞苑 名詞 ①岩より小さく、砂より大きい鉱物質のかたまり。 「―のように固い」
②岩石・鉱石の俗称。また、石材の意にも用いる。 「―の地蔵」
③宝石、または特定の鉱物加工品。時計の軸受に使う宝石、ライターの発火合金、碁石、硯、墓石など。
石御器 (いしごき)の略。 浄瑠璃、妹背山婦女庭訓「此の―できゆつとやらんせ」
⑤胆石。結石。
⑥(じゃんけんで)にぎりこぶし。ぐう。
⑦方形の敷石の配置をかたどった紋所の名。「よついし」「いしだたみぐるま」「まるにひとついし」などがある。
⑧固いもの、無情なもの、融通のきかないもの、などを比喩的に表す語。 「―あたま」「―のような心」
大言海 名詞 (一){礦物ノ名。人ノ善ク知ルモノナリ、通俗ニハ(イハホ)ヨリハ小サク、砂ヨリハ大キナルモノヲ云フ。垣、橋、礎、ナド、建築ノ用、極メテ多シ。 古事記、上 三十四 「以火燒豬大石而轉落」
萬葉集、五 十三 長歌「眞玉(ナス)、二ツノ 伊斯 (イシ)
倭名抄、一「石、以之」
(二)碁石。 「白石」黑石」
(三) 石拳 (イシケン)ノ、(コブシ)

検索用附箋:名詞自然物

附箋:名詞 自然物

最終更新:2024年06月13日 17:17