いし(美・好)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 形容詞 よい。好ましい。 ※栂尾明恵上人遺訓(1238)「人の甚だ信仰して威徳ある事あり。其をいしき事と思ふべからず」
※弁内侍(1278頃)建長元年「鞠はいしいものかな。あれほど左衛門督をはしらすることよ」
② 立派だ、みごとだ、けなげだ、神妙だなどと、感心したり、感嘆したりする時にいう。→いしくも
(イ) じょうずだ。巧みである。うまい
※中務内侍(1292頃か)「馬をよく相して、この御馬はかさ驚きやし侍らんと申せば、いしく相したりとて」
(ロ) けなげである。殊勝である。神妙である。 ※平治(1220頃か)上「汝いしくまゐりたり。春日山のおく、しかじかの所也とをしへて」
③ (多く女性が用い、のち接頭語「お」を付けて「おいしい」となる) 美味だ。おいしいうまい ※太平記(14C後)二三「いしかりしときは夢窓にくらはれて周済(しゅさい)計(ばかり)ぞ皿に残れる」
※女重宝記(元禄五年)(1692)一「むまいといふを、いしい」
④ 驚くべき事態である。大変だ。重大だ。 ※梵舜本沙石集(1283)七「あらいしの、のみのおほきさやと云ひけり」
⑤ (本来の意味を逆に用いて) 荒々しい。粗暴である。また、わるい。よくない。 ※梵舜本沙石集(1283)八「いしい悪口(あくこう)仕りて候」
※浄瑠璃・加増曾我(1706頃)一「身代もいしくなって、わんぼ一枚にはなったれ共(ども)」
広辞苑 形容詞 (中世・近世には口語形「いしい」も用いた)
よい。好ましい。
宇津保物語吹上上「―・しき盃など」 美し
②見事である。たくみである。 中務内侍日記「―・しく相したりとて」
③殊勝である。けなげである。神妙である。 平治物語「汝―・しく参りたり」
④味がよい。 太平記23「―・しかりし時は夢窓にくらはれて」。
狂言、比丘貞「いしい酒でおりやる」
大言海 形容詞 ()し、()し(形、一ノ轉ナラム、( 日吉 (ヒエ)、ひよし。 住吉 (スミノエ)、すみよし。さざえ、さざい)東京ニテ、()しヲ、いいト云ヒ、(關西ニテ、えい)女詞ニ、味旨キヲ、おいしいト云フ、((ダン)()ヲ、いしいし)形、一ノ活用ノ、形、二トナルコト、あつき、あつしき。(篤)かまびすき、かまびすしき。(喧)ナドノ例アリ〕
(一){ ()イミジ 美事 (ミゴト)ナリ。
綏靖卽位前紀「 不能致 (イシキナ)()」(此語ノ條ヲ見ヨ)
宇津保物語、吹上、下 十三 「いしき盃ナド、イトメヅラシク、(コト)ナリ」
美・好
(二)(タクミ)ナリ。上手ナリ。巧妙 盛𮕩記、十七、祇王、祇女 佛前 (ホトケノマヘノ)事、白拍子佛御前、入道淸盛ノ前ニテ歌舞ス「君ヲ始メテ、見ル時ハ、千代モ經ヌベシ、姬小松、御前ノ池ナル、龜ガ岡ニ、鶴コソ()レ居テ、遊ブナレ」ト折返シ、折返シ、三度歌ヒケレバ、云云、歌ノ音ノヨサヨ、いししいししト()メラレタリ」(いししハ、破格ナリ、惡しし、惜ししナド、皆不可ナリ)
(三) (ウマ)。味、()シ。甜美 太平記、廿三、土岐賴遠參合御幸狼籍事、賴遠、醉ヒテ御幸ニ行合ヒ、御車ニ矢ヲ射懸ク、大逆ニ因リテ斬首セラル、何者カ狂歌一首「いしかリシ、時ハ夢窓ニ、(クラ)ハレテ、すさいバカリゾ、皿ニ殘レル」(賴遠、足利氏ニ軍功アリ、恩祿モ他ニ異ナリ、天龍寺ノ夢窓和尙ニ賴ミテ、赦命ヲ乞ヒシガ、()カレザリシナリ、賴遠ノ弟 周濟 (スサイ)房ハ赦サル、いしかリシ時トハ、好運ナリシ、((ウマ)カリシ)時メキシヲ云フ、すさいハ、 酢菜 (スサイ)ニテ、周濟ニカケタリ)
永正五年正月二日、狂歌合、 判詞 () 花片 (ハナビラ)餅ノ、いしゲナル氣味」(いただきもちヲ見ヨ)

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最終更新:2023年11月23日 16:18