いと(最・甚・太)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 副詞 ① 程度のはなはだしいさま。
(イ) 肯定表現、または肯定的な気持で用いる。とても。たいへん。非常に。
※万葉(8C後)三・四一一「吾妹子(わぎもこ)が屋どの橘甚(いと)近く植ゑてしゆゑに成らずは止まじ」 最・甚
(ロ) 否定表現、または否定的な気持で用いる。あまり(…ではない)。それほど(…ではない)。 ※万葉(8C後)八・一五二四「天の河伊刀(イト)川波は立たねども伺候(さもら)ひ難し近きこの瀬を」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「いとやむごとなききはにはあらぬが」
② 事態が並々でない、常態以上の程度に出ることへの詠嘆、強調。
(イ) 肯定表現、または肯定的な気持で用いる。ほんとうに。まったく。
※源氏(1001‐14頃)桐壺「いとかうきびはなる程は、あげおとりや、と疑はしく思されつるを」
(ロ) 否定表現、または否定的な気持で用いる。あまりにも。(たださえ…なのに)いよいよ。まさか(…までのことはあるまい)。 ※万葉(8C後)四・七八六「春の雨はいやしきふるに梅の花いまだ咲かなく伊等(イト)若みかも」
[語誌](1)「いと」と同源の類義語に「いたく」の「いた」、「いちしろし」の「いち」がある。このうち「いと」と「いたく」については、前者が形容詞性の語、後者が動詞性の語を修飾するという機能分担があることが指摘されている。
(2)「いと」は上代から用例があるが、中古以降の漢文訓読語にはほとんど使用されず、「はなはだ」が使われた。そのかわり、和文特有語として、散文に愛用され、かなり長い期間にわたって使用された。
(3)平安時代には、重複形「いといと」、その変化した「いとど」などが派生している。→いとど
広辞苑 副詞 ①はなはだしく。極めて。大層。 万葉集18「ほととぎす―ねたけくは橘の花散る時に来鳴きとよむる」
②(程度・状態の副詞にかかる)全く。ほんとうに。 源氏物語桐壺「―かく思う給へましかばと、息も絶えつつ」
③(下に否定の語を伴って)それほどに。たいして。 万葉集8「天の河―川波は立たねども」
大言海 副詞 モットモイタク。ハナハダシク。 源、一、桐壺「いとヤンゴトナキ(キハ)ニハアラヌガ」
伊勢物語、初段「いとナマメイタル女」
古事記、上(イト)久難待」
遊仙窟「太無情」
最・甚・太

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最終更新:2024年05月06日 21:04