うぢ(姓・氏)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 古代において、血縁あるいは擬制的血縁集団の成員が大王への貢納奉仕を前提に他と区別するために唱える名称。 ※万葉(8C後)二〇・四四六五「大伴の 宇治(ウヂ)と名に負へる ますらをの伴」
② 家の名称。姓。名字。 ※史記抄(1477)一一「いた処を氏にしたぞ。日本に、なに殿か殿と、いた処の在名を云と同也」
③ 家柄。家系。 ※宇津保(970‐999頃)あて宮「かどをもひろげ、うぢをもつへきしも」
※十訓抄(1252)一〇「芸をろかにして氏をつがぬ類あり」
接尾辞 名字に添えて敬意を表わす。 ※歌舞伎・東海道四谷怪談(1825)三幕「ヤア、民谷氏(ウヂ)。爰にござったか」
[語誌](1)(一)①が元来の「うじ」で、氏の上(かみ)は氏神を奉祀する祭司者であり、氏人を統率し氏を代表して朝政に参与し、その地位により姓(かばね)を与えられた。
(2)大化の改新以降の社会制度の変化により、その勢力は次第に衰えて形骸化し、中世には地名を称する②が登場する。中世以降は③のような意を表わすようになり、また(二)の用法も現われる。
(3)特に、近世においては武士階級が同輩以下の相手あるいは第三者を呼ぶのに姓・姓名の後に「うじ」を添えることもあった。
(4)近代になり、「氏」を音読した「し」にも同様の接尾用法が登場したため、次第に接尾語の「うじ」は用いられなくなっていった。→氏(し)
広辞苑 名詞 ①血縁関係のある家族群で構成された集団。氏族。 万葉集20「大伴の―と名に負へる 大夫 (ますらお)(とも)
②古代、氏族に擬制しながら実は祭祀・居住地・官職などを通じて結合した政治的集団。その内部は、(かばね)を異にする家族群に分かれ、上級の姓を持つ家族群が下級の姓の家族群を支配し、最下層には 部民 (べみん)および 奴婢 (ぬひ)がある。
③家々の血統に従って伝えて称する名。また、家の称号。
④家がら。
⑤近世、武士階級の間で、多く同輩以下に対して苗字に添えて用いた敬称。
⑥姓・苗字の現行法上の呼称。
大言海 名詞 (ウミ)()ノ略ナラムカ、(生ノ(スヂ) 子孫 (ウミノコ))うみから、うがら。(族)或ハ、(イデ)ノ轉、 出自 (シユツジ)ノ意カトモ思ヘド、イカガ〕
(一){家家ノ 系統 (スヂ)ニ隨ヒテ、一族、子孫、相傳ヘテ稱スル()。卽チ、人ノ名ノ外ニ立ツル家ノ名ニテ、人民繁殖スルニ因リテノ識別ナルナリ。但シ、我ガ皇室ニハ姓オハシマサズ、神代ヨリ一系ニシテ、紛ルルヤウナケレバナリ、萬國ニ冠タルコト知ルベシ。上古ヨリアル姓ハ、大伴、物部等ニテ、職掌ナリシガ、姓トナレリ。
別ニ、朝廷ヨリ賜ハレルハ、源、平、藤原、橘等ナリ。(別ニ、かばねアリ、其條ヲ見ヨ)後ニ、子孫益延蔓スルニ及ビ、別ニ、北條、足利、織田、德川等、地名ナドヲ採リ、(トナヘ)ヲ作リテ分テリ、コレヲ 名字 (ミヤウジ)(メウ)()(メウ)()ナド云ヒ、亦、相繼ギテ、家ノ名ニ用ヰル、然レドモ、(ウヂ)ハ尙變ハラザルナリ。今多クハ、源、平等ニ姓ノ字ヲ當テ、苗字ニ氏ノ字ヲ當ツ。
萬葉集、廿 五十一 長歌「 祖先 (オヤ)(ツカサ)ト、事立テテ、云云、 子孫 (ウミノコ)ノ、彌繼繼ニ、云云、大伴ノ宇治ト、名ニ負ヘル、 丈夫 (マスラヲ)(トモ) 姓・氏
(二)人ノ苗字ノ下ニ添ヘテ、稍、敬意ヲアラハスニ用ヰル語。 「加藤(ウヂ)」鈴木(ウヂ)
音讀シ、苗字名ノ下ニ添ヘテ、「石部金吉()」ナドトモ用ヰル。

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最終更新:2024年05月08日 19:10