かい(櫂)

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日本国語大辞典 名詞 ① 船の推進具の一種。普通、樫(かし)の木で作り、上半部を丸く、下半部を扁平に削り出し、頂部にツクという短い横棒をつける。一般に櫓(ろ)が海船用なのに対して川船や伝馬船に主用されるが、日本海方面では海船にも重用された。なお、船尾側面に設ける舵(かじ)用の大型の櫂(かい)を特に練櫂(ねりがい)と呼ぶ。 ※書紀(720)神功摂政前(北野本訓)「則ち大なる風順吹(なひかせにふ)き、帆(ほ)舶(つむ)波の随(まにま)に櫨(カイ)楫(かち)を労(ねきら)はず便(すなは)ち新羅に到りたまふ」 櫂・棹
② しょうゆや食酢を造る際に、樽の中の原料をかき混ぜる木製の用具。
③ 紋所の名。櫂をいろいろに組み合わせたもの。三違櫂(みつちがいがい)、五違櫂、三追重櫂(みつおいがさねがい)、三折櫂(みつおりがい)など種々ある。
[補注]古代語の中で、語中語尾に母音が位置する単純語では唯一の例である。これについては諸説あって(1)「掻く」の連用形のイ音便、と解する説が有力であるが、音便としては時代的に早すぎ、また、語と語の融合を示す音便のさきがけが名詞の語末であるというのは考えにくい、といった問題がある。ほかに、(2)被覆形「カ」に語的独立のための接尾語〔i〕のついた露出形、という説もあるが、なぜ母音融合を起こさなかったのかという疑問が残る。(3)ヤ行上二段動詞の連用形、という想定は「カユ」の語が文献上確認できない、(4)「𭬐」の字音、という説も、稀字に属する「𭬐」字が日本語に採り入れられたことになり疑わしい。「𭬐」字は、中世以降は「械」に取ってかわられるところから、むしろ「カイ」という語に当てるために形声によって造られた字と考えるべきであろう。
広辞苑 名詞 (「掻キ」の音便から)船具の一つ。棒の半ばから上を丸く、下を平たく削ったもので、櫓ろに似て小さく、水を掻いて船を進める具。 万葉集2「沖つ―」
大言海 名詞 ()きノ音便、水ヲ搔きヤル意ナラム〕
船ノ具。細長キ材ノ端ヲ(ヒラ)タクシタルヲ、(フナバタ)ノ繩ニカケ、本ヲ握リ、端ニテ水ヲ搔キテ、舟ヲ()ルモノ。古ヘニ云ヘル加伊モ、其製、今ノ物ト異ナラザルベシ。又、(カヂ)アリ。
字鏡 四十四 「櫂、船乃加伊」
倭名抄、十一「在(ハラフヲ) 水曰 ()櫂、加伊」
萬葉集、二 廿四 長歌「澳津加伊、痛クナハネソ、邊津加伊、痛クナハネソ」

検索用附箋:名詞物品

附箋:名詞 物品

最終更新:2024年05月08日 20:10