広辞苑 | ||||
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辞書 | 品詞 | 解説 | 例文 | 漢字 |
日本国語大辞典 | 名詞 |
(「かげ(影)」と同語源) [一] 光線や風雨の当たらないところ。 ① 物の下や後になって、光や風にさらされない空間。 |
※古事記(712)下・歌謡「大前 小前宿禰が 金門(かなと)加宜(カゲ) かく寄り来ね 雨立ちやめむ」 ※平家(13C前)三「旅人が一村雨の過行くに、一樹の陰に立よって」 |
陰・蔭・翳 |
② 物のうしろ。後方。 |
※源氏(1001‐14頃)夕霧「御消息聞こえつたへにゐざりいる人のかげにつきて入り給ひぬ」 ※徒然草(1331頃)一七一「よそを見渡して、人の袖のかげ、膝の下まで目をくばるまに」 |
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③ 人目にかからない、隠れた場所。表立たない所。また、その人の居合わせない場所。 |
※更級日記(1059頃)「父(てて)はただ我をおとなにしすゑて、我は世にも出で交らはず、かげに隠れたらむやうにてゐたるを見るも、頼もしげなく」 ※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「仍(よっ)て蔭(カゲ)ではめの字を添て、三馬めがと人皆鄙(いや)しむ」 ※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「今迄どほり、をさなく、愛度気(あどけ)なく待遇(あしら)はうと、影では思ふが」 |
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④ 人間関係や世間の及ぼす被害からの庇護。また、助力したり守ってくれたりする人。めぐみ。おかげ。 |
※古今(905‐914)東歌・一〇九五「つくばねのこのもかのもに影はあれど君がみかげにます影はなし〈ひたちうた〉」 ※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉四「此処を出る様にならしめたのも、元はと云へば彼西内氏の蔭である」 |
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⑤ 物事の裏面。 |
「犯罪のかげに女あり」 ※小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉下「曲亭翁の弓張月に彼の保元の軍の摸様をただ陰影(カゲ)にのみ叙しおりしは外伝の旨趣を得たるにちかく」 |
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⑥ (翳) 何か暗さを感じさせるような、人の性格や雰囲気。また、人の心や一生に立ちあらわれる、暗い、重苦しい感覚など。 | ※黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉五「最後の句は、敬二の心に暗い翳(カゲ)を作った」 | |||
[二] 特殊な対象に限った用法。 ① 内密に出す祝儀などの心づけ。 |
※洒落本・仕懸文庫(1791)三「相談ができたら、かけをばちっと付てくんなせへ かげとはかけにてもうける事なり」 | |||
② 歌舞伎の舞台や寄席の高座の陰で演奏する音楽。下座音楽。 | ||||
③ 歌舞伎で、付(つけ)(一)⑦のこと。 | ||||
④ 輪郭だけを描いたり、縫ったりした模様や紋所。 | ※洒落本・一向不通替善運(1788)「半七は木綿太織をのろま色に染て、紋所はさくら草をかげにつけ」 | |||
⑤ まだ正式に舞台に立たない少年の歌舞伎俳優。 | ※評判記・難波の㒵は伊勢の白粉(1683頃)二「あの上村千之介が未(いまだ)かげなる時の事」 | |||
⑥ 「かげまつり(陰祭)」の略。 | ||||
⑦ (その期間中は人前に出ないようにするところから) 月経をいう。 | 〔日葡辞書(1603‐04)〕 | |||
大言海 | 名詞 |
〔影ニ當ル處ノ意〕 (一) |
續古今集、六、冬「朝嵐、山ノかげナル、河ノ瀨ニ、波寄ル蘆ノ、音ノ寒ケサ」 「家ノ陰」樹ノ陰」 |
陰・蔭 |
(二)人目ニ |
「陰ニテ誹ル」陰ナガラ憂フ」陰 |
広辞苑は同じ見出し語の扱い。「かげ(景)」を参照。
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