かつ(且(副詞))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 副詞 ① ある行為や心情が、他の行為や心情と並んで存在する関係にあることを表わす。一方で。他面で。
(イ) 「かつ」が一方にだけ用いられる場合。
※万葉(8C後)三・四七二「世の中し常かくのみと可都(カツ)知れど痛き心は忍びかねつも」
※古今(905‐914)離別・三七二「別れてはほどをへだつと思へばやかつ見ながらにかねて恋ひしき〈在原滋春〉」
(ロ) 「かつ」が両方に用いられる場合。 ※書紀(720)神代下(兼方本訓)「則ち、衣(ころも)帯(ひも)に攀(と)り牽(かか)り且(カツ)喜(よろこ)び且(カツ)慟(まと)ふ」
※方丈記(1212)「淀みに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたる例なし」
② ある行為や心情が、他の行為や心情(特にしばしばこれと矛盾するような行為や心情)に、直ちに移ることを表わす。…する間もなく。…するとすぐ。たちまちすぐに ※古今(905‐914)春下・七三「うつせみの世にもにたるか花ざくら咲くと見しまにかつちりにけり〈よみ人しらず〉」
③ ある行為や心情が、本格的でない形で、短時間だけ、またはかりそめに成り立つことを表わす。とりあえず。ついちょっと。わずかに。 ※万葉(8C後)一三・三三一〇「さ夜は明け この夜は明けぬ 入りて且(かつ)寝む この戸開かせ」
④ ある行為や心情が、他の行為や心情に先立って成り立つことを表わす。あらかじめ。前もって。事前に。先に。以前に。 ※平家(13C前)八「是は怨敵のゆゑなれば、後世の苦しみかつ思ふこそかなしけれ」
接続詞 先行の事柄に、後行の事柄が並列添加される関係にあることを示す。それとともに。同時に。その上に。加えて。かつうは ※金刀比羅本保元(1220頃か)上「又御許(ゆるし)候はぬ間、かつ今まで白髪をいただきてまかりすぎ候事も、ただこの先途をや遂げむと存ずるゆゑにて候へば」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「お勢さんも非常に心配してお出でなさるし、且つ君だってもなにも遊んでゐて食へると云ふ身分でも有るまいしするから」
広辞苑 副詞 ①(二つの動作・状態が並行して同時に存在することを表す。二つの「かつ」が相対して用いられる場合と、一方にのみ「かつ」が用いられる場合とがある)一方では。同時に。 後撰和歌集恋「恋のごとわりなきものはなかりけり―むつれつつ―ぞ恋しき」。
古今和歌集別「―こえてわかれも行くか逢坂は人だのめなる名にこそありけれ」。
「―歌い―踊る」
且つ
②ある動作・状態の上に他が加わることを表す。そのうえ。なおまた。 万葉集8「秋風のさむき此頃したにきむいもがかたみと―もしのばむ」
すぐに 徒然草「―あらはるるをも顧みず、口に任せて言ひ散らすは」
ちょっとかりに 源氏物語明石「―見るにだにあかぬ御様をいかで隔てつる年月ぞ」
⑤(「知る」「見る」「聞く」などの動詞の上にきて)すでにもう 万葉集3「世の中し常かくのみと―知れどいたき心は忍びかねつも」。
平家物語10「―聞し召されても候ふらん」
接続詞 (漢文の「且」の訓読から)二つの動作または状態を表す表現を接続して、それが並行して成り立つことを表す。そのうえに。それとともに。 「飲み―食う」「必要―十分な条件」
大言海 副詞 (カタ)ト通ズ、((カタマ)、かつみ。(アツ)()、あたみ)(ムカ)ヒタルモノノ片方ノ意(鐘の響、中)〕
片一方 (カタイツパウ)ヨリ。
神代紀、下「且喜、且慟」
古今集、序「かつハ人ノ耳ニ恐リ、かつハ歌ノ心ニ恥ヂ思ヘド」(此用法、かつうはトモナル、其條ヲ見ヨ)
同、二、春、下「ウツセミノ、世ニモ偲ビタルカ、花櫻、咲クト見シ閒ニ、かつ散リニケリ」
同、五、秋、下「霜ノ(タテ)、露ノ(ヌキ)コソ、弱カラシ、山ノ綿ノ、織レバかつ取ル」
千載集、六、冬「駒ノ痕ハ、かつ降ル雪ニ、ウヅモレテ、オクルル人ヤ、路惑フラム」
かつがつ重ネテ云フ時ハ、片ノ又片トナリ、イヨイヨチヂマリテ、わ()かにノ意トナル。ハツハツ 拾遺集、五、賀「君ガ()ム、八百萬代ヲ、數フレバ、かつがつ今日ゾ、七日ナリケル」
源、十三、明石 廿三 「思フコト、かつがつカナヒヌル心地シテ」
「かつがつ閒ニ合フ」

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最終更新:2024年04月03日 17:36