かふ(買)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ① あるものと他のものとを交換する。代価を払って品物等を受け取る。あがなう。⇔売る ※書紀(720)顕宗即位前・歌謡(図書寮本訓)「旨(むま)酒餌(ゑ)香の市に直以て買(カハ)不(ぬ)」
※万葉(8C後)七・一二六四「西の市にただひとり出でてめ並べず買(かひ)てし絹の商(あき)じこりかも」
買・代・換
② 抽象的な何かを求める。
(イ) 自分で招きよせる。多く、自分のしたことによって好ましくない結果を身に受けることにいう。
「怒りを買う」
※徒然草(1331頃)三八「財多ければ〈略〉害をかひ、累(わづらひ)を招く媒(なかだち)なり」
※小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉下「其物語のうちに加へて笑を買(カ)はまく望める事あり」
(ロ) 相手の望むことを進んで受け入れる。 ※雑俳・楊梅(1702)「買(カフ)からは其方の喧𠵅(けんくゎ)も我れが物」
③ 代金を払って遊女、芸者などをあげて遊ぶ。 ※仮名草子・仁勢物語(1639‐40頃)下「恋しやと見にこそ来たれ上銭(あげせん)の金は持たずもなりにけるかな、と云ひてなむ買ける」
④ 人を雇う。 ※あさぢが露(13C後)「大路(おほち)のかたにめのとかはんとてすぐる者あり」
⑤ 評価して価値を認める。 ※落語・性和善(1891)〈三代目春風亭柳枝〉「一つ俺の料簡を忖度(カッ)て呉れ」
広辞苑 他動詞 (「替ふ」と同源。交換する意)
①品物や金とひきかえに、自分の望みの品物を得る。
万葉集13「たらちねの母が形見とわがもてる 真澄 (ますみ)鏡に 蜻蛉領巾 (あきずひれ)負ひ並めもちて馬―・へ吾が背」。
竹取物語「値ひの金少なしとこくし使に申ししかばわうけいが物加へて―・ひたり」。
「家を―・う」「切符を―・う」
買ふ
②悪い結果を招く。 徒然草「財多ければ身を守るにまどし。害を―・ひ、累を招く媒なり」。
「人の恨みを―・う」「 顰蹙 (ひんしゅく)を―・う」
③進んで身に引き受ける。 「仕事を―・って出る」「売られたけんかを―・う」
揚代 (あげだい)を払って芸者・遊女などを招く。 好色一代女2「傾城ぐるひなされますかといへば、田舎大臣苦い顔をして、この人が―・はれますと革袋一つ投げ出せば」。
「飲む打つ―・う」
⑤人を雇う。 あさぢか露「大路のかたにめのと―・はんとてすぐる者あり」
⑥価値をみとめる。尊重する。 「彼の政治的手腕を―・う」「努力を―・う」
⑦(江戸語)欺かれる。口実を設けて欺くのを「売る」というのに対し、その口実に乗せられ欺かれるのを「買う」という。 誹風柳多留20「女房は紅葉を―・つて悔しがり」
⑧「盗む」の隠語。
大言海 他動詞 ()ふノ他動ノ意ノモノカ〕
(一){其價ヲ錢ヲ與ヘテ、我レニ受ク。錢ヲ以テ、()ヘ取ル。アガナフ購買
天治字鏡、六 廿四 「沽、買也、加布」
(二)()シトシテ、採ル。信用ス。 駿河土產「神祖、或時、本多正信ヲ召シテ、秀忠ハ、アマリ律儀過ギタリ、人ハ、律儀ノミニテハナラヌモノナリト仰セラレケルヲ、正信承リ、此由聞エアゲ、殿ニモ折折ハ、 虛誕 (ウソ)モ仰セラルルガヨシト申シケレバ、公、笑ハセラレ、父君ノ 御空事 (オソラゴト)ハ、イクラモ買ふ人ガアリ、我等ハ、何事モ 仕出 (シイダ)セシコトナケレバ、(ウソ)ツキテモ、買ふ者アルマジ、ト仰セラレシトゾ」(良將達德抄、六)
「心意氣ヲ買ふ」
(三)招キ求ム。 徒然草、三十八段「財多ケレバ、云云、害ヲかひ、煩ヒヲ招ク媒ナリ」
「歡心ヲ買ふ」禍ヲ買ふ」
(四)招キテ遊ブ。 「女郞ヲ買ふ」藝者ヲ買ふ」
動詞活用表
未然形 かは ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 かひ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 かふ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 かふ も、かも、こと、とき
已然形 かへ ども
命令形 かへ

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附箋:他動詞 四段

最終更新:2024年04月13日 18:27