かみ(神)

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日本国語大辞典 名詞 ① 宗教的、民俗的信仰の対象。世に禍福を降し、人に加護や罰を与えるという霊威。古代人が、天地万物に宿り、それを支配していると考えた存在。自然物や自然現象に神秘的な力を認めて畏怖し、信仰の対象にしたもの。 ※古事記(712)中「其の大后息長帯日売命(おきながたらしひめのみこと)は、当時(そのかみ)神(かみ)を帰(よ)せたまひき」
※徒然草(1331頃)二〇七「大きなる蛇、数も知らず凝りあつまりたる塚ありけり。この所の神なりといひてことのよし申しければ」
② 神話上の人格神。 ※古事記(712)上「天地(あめつち)初めて発(ひら)けし時、高天(たかま)の原に成りませる神(かみ)の名は、天之御中主神」
③ 天皇、または天皇の祖先。 ※万葉(8C後)二〇・四四六五「ひさかたの 天の戸開き 高千穂の 岳(たけ)に天降(あも)りし すめろきの 可未(カミ)の御代より」
④ 人為を越えて、人間に危害を及ぼす恐ろしいもの。特に蛇や猛獣。 ※書紀(720)神代上「素戔嗚尊、蛇(をろち)に勅(みことのり)して曰はく、汝は是れ畏(かしこ)き神(かみ)なり」
⑤ 神社。また、神社にまつられた信仰の対象。死後に神社などにまつられた霊や、死者の霊魂などをもいう。 ※枕(10C終)二八七「神は松の尾」
⑥ (God の訳語) キリスト教で、宇宙と人間の造主であり、すべての生命と知恵と力との源である絶対者をいう。 ※旧約全書(1888)創世紀「元始(はじめ)に神(カミ)天地を創造(つくり)たまへり」
⑦ 雷。なるかみいかずち ※古事記(712)中・歌謡「道の後(しり) 古波陀嬢子(こはだをとめ)を 迦微(カミ)の如(ごと) 聞えしかども 相枕まく」
⑧ (比喩的に) 恩恵を与え、助けてくれる人、ありがたいものなどをいう。 「救いの神」
⑨ 他人の費用で妓楼に上り遊興する者。とりまき。転じて、素人の太鼓持。江戸がみ。 ※雑俳・柳多留‐四(1769)「おやぶんの女房かみたち供につれ」
⑩ 六をいう青物市場の符丁。
[語誌](1)同音語である「上」と同一語源と考える説と、別語源と考える説がある。同一語源説は、カミの元来の意味は「上」であり、「上方」という方向性を指し示す語であったものが、カミの毛(髪)、カミの存在(神)、というように用いられ、それが、カミだけで表わされるようになったとする。別語源説は、上代特殊仮名遣いにおける仮名の違い(神のカミのミは乙類、上のカミのミは甲類)と、上代における意味の類縁性の希薄さを根拠に、同一語源とは考え難いとする。
(2)アイヌ語で「神」をさすカムイは、上代以前「カミ」が kamï の音をもっていた時代に日本語から借用したものか。
(3)⑥の英語 God の訳語としての近代語「神」の成立には、聖書翻訳の問題が関わっている。中国でのキリスト教宣教師たちの God の訳語に関する議論では、「上帝」と「神」とで意見が分かれ、それぞれの訳語による聖書翻訳が行なわれた。「神」を採用したブリッジマンおよびカルバートソン訳の中国語訳聖書が、明治初期に来日したアメリカ人宣教師によって日本に持ち込まれ、これが God をカミと和訳するのに、決定的な影響力を持った。
広辞苑 名詞 ①人間を超越した威力を持つ、かくれた存在。人知を以てはかることのできない能力を持ち、人間に禍福を降すと考えられる威霊。人間が畏怖し、また信仰の対象とするもの。 万葉集15「 天地 (あめつち)の―を()ひつつ(あれ)待たむ早来ませ君待たば苦しも」
②日本の神話に登場する人格神。 古事記上「天地初めて(ひら)けし時、 高天 (たかま)の原に成れる―の名は」
③最高の支配者。天皇。 万葉集3「大君は―にし()せば天雲の(いかずち)の上に(いお)らせるかも」
④神社などに奉祀される霊。
⑤人間に危害を及ぼし、怖れられているもの。
㋐雷。なるかみ
万葉集14「伊香保()に―な鳴りそね」
㋑虎・狼・蛇など。 万葉集16「 韓国 (からくに)の虎とふ―を 生取 (いけと)りに」
⑥キリスト教で、宇宙を創造して歴史を司る、全知全能の絶対者。上帝。天帝。→三位一体
大言海 名詞 隱身 (カクリミ)ノ意ナリト云フ、(かくばかり、かばかり。 探女 (サグリメ)、さぐめ) 現身 (ウツシミ)ニ對ス、( 隱世 (カクリヨ) 現世 (ウツシヨ))古事記、開卷「天御中(主神)、云云、 獨神成坐 (ヒトリガミナリマシテ)、而 隱身也 (カクリミニマシマス)」靈異記、上、第四緣、聖德太子、神人ヲ看破シタマヒシヲ「聖人之通眼、見隱身」〕
(一)形ハ、目ニ見エズシテ、(ミタマ)アリ、 幽事 (カンゴト)(シロ)シテ、 奇靈 (クシビ)ニマシマスモノノ稱。後ニハ、無上自在ノ 威靈 (イキホヒ)アリテ、世ノ禍福ヲ(シロ)シ、人ノ善惡ノ行爲ニ、加護、懲罰シタマフトテ、崇ムベキモノノ意トス。耶蘇敎ニテハ、宇宙ヲ創造シ支配スト云フモノ。
續古今集、七、神祇「仕フベキ、我レヲモ捨ツナ、スベラギノ、百代ヲ守ル、神トコソ聞ケ」
(二){御歷代ノ天皇ノ尊稱。 現人神 (アラヒトガミ)ニマシマセバナリ。 萬葉集、十八 廿七 長歌「 皇祖 (スメロギ)ノ、 可見 (カミ)ノ大御代ニ、 田道閒 (タヂマ)(モリ)、常世ニ渡リ、云云」(垂仁天皇)
同卷 廿二 芳野離宮長歌「皇祖ノ、 可未 (カミ)ノミコトノ、(カシコ)クモ、始メタマヒテ、云云、此大宮ニ、云云」(應神天皇)
(三)スベテ、人智ニテ測リ知ラレザルコト。 (カミ)ノ如シ」 神事 (カミゴト)
(四)(カミ)()ニ、スベテ、功德アリシ方方ノ稱。何ノ(ミコト)(ソレ)ノ命ト申ス、是レナリ。
(五)聖餐、英雄ナドノ、逝去ノ後ニ、其 靈魂 (タマシヒ)ヲ祀ルコトノ稱。 大鏡、上、時平「今日、神(菅原道眞)トナリ給フトモ、コノ世ニハ、我レニ所オキ給フベシ」
(六){スベテ、荒ブル者、(オソロ)シキ龍蛇、豺狼、虎豹ナドノ稱。 景行紀、四十年七月「東國不安、 暴神 (アラブルカミ)多起、亦蝦夷悉叛」
神代紀、上 三十七 八岐大蛇 (ヤマタノヲロチ)、云云、素戔嗚尊勅蛇曰、汝是 可畏之神 (カシコキカミナリ)
常陸國風土記、 行方 (ナメカタ)郡「謂蛇爲 夜刀神 (ヤトノ )」((ヤツ)ノ神)
豐後國風土記、直入郡、球覃鄕「蛇龗、謂 於箇美 (オカミ)
欽明紀、六年十一月、(カシハデノオミ) 巴提便 (ハテヒ)、虎ニ向ヒ「汝 威神 (ハカシコキカミ)
倭名抄、十八 二十 「豹、奈賀豆可美」( 中之神 (ナカツカミ)
欽明卽位前紀、 秦大津父 (ハタノオホツチ)、狼ニ逢ヒ「汝(ハ レ) 貴神而 (カシコキカミニシテ)(コノム)(キ ヲ)
「オホかみ」
(七){鳴雷 (ナルカミ)ノ略。イカヅチカミナリ 萬葉集、十二 十九 「神ノゴト、聞ユル瀧ノ、白狼ノ」
拾遺集、十九、雜戀「かみイタク鳴リハベリケル(アシタ)ニ」

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最終更新:2024年11月17日 21:56