けし(異)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 形容詞 ( 「け(異)」に形容詞語尾の付いたもの )
① あるべき状態と異なっているさま。非難すべきである。よくないさま。
万葉集(8C後)一四・三四八二「韓衣裾のうちかへ会はねども家思吉(ケシキ)心を吾が思(も)はなくに」 怪・異
② 変わっていることに対して不審に思うさま。あやしげである。異様である。 伊勢物語(10C前)二一「この女かくかきをきたるをけしう心をくべきこともおぼえぬをなにによりてかかからむといといたうなきて」
③ 怪しいまでに程度がはなはだしいさま。ひどい。病気などが重い。劣っている。通常、「けしうはあらず」「けしうはあらじ」の形で用いられることが多い。 蜻蛉日記(974頃)下「けしうつつましきことなれど、尼にとうけ給はるには、むつまじきかたにてもおもひはなち給ふやとてなん」
宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院「さるまじらひせんにも、けしうは人におとらじ」
[語誌]( 1 )形容動詞「けなり」と同根。
( 2 )中古になると連用形のケシクとその音便形ケシウが②の意味で用いられることが多くなる。またケシウは③のように打消を伴い、「たいして良くない」「たいして悪くない」「格別なことはない」の意味で使用されることが多くなる。
( 3 )さらに「けし」を否定した形の「けしからず」が意味的には肯定に使われることが多くなり、近世以降はこの「けしからず」が「けし」にとって替わった。→けしかる・けしからず
広辞苑 形容詞 (普通と異なった状態、または、それに対して不審に思う感じを表す)
①普通と違っている。異様である。特別である。
古事記中「吾は―・しき夢見つ」 異し・怪し
②とがむべきだ。けしからぬ。 万葉集14「韓衣裾のうち交へ合はねども―・しき心を吾が思はなくに」
③解せない。変である。 伊勢物語「この女かくかき置きたるを―・しう心おくべき事も覚えぬを」
④(性向・容色・身分・病状などの程度が)あやしいまでにはなはだしい。普通、「けしうはあらず」など打消を伴った形で使われ、それほど悪くはない、そう不自然ではない、などの意となる。 源氏物語帚木「心も―・しうはあらず侍りしかど」「中の品の―・しうはあらぬえり出でつべき頃ほひなり」。
大鏡序「―・しうはさぶらはぬとしなりな」
⑤(連用形を副詞的に用いて)ひどく。 蜻蛉日記下「―・しうつつましき事なれど」
大言海 形容詞 ()ヲ活用セシム(其條ヲ見ヨ)()しト通ズ〕
(一)常ニ異ナリ。 異樣 (コトヤウ)ナリ。
萬葉集、十四 廿三 「韓衣、裾ノ 打交 (ウチカヘ)、合ハネドモ、 家思吉 (ケシキ)心ヲ、吾ガ()ハナクニ」
同、十五「遙遙ニ、オモホユルカモ、然レドモ、 異情 (ケシキココロ)ヲ、吾ガ思ハナクニ」
(二)轉ジテ、(アヤ)シ。希有ナリ。(ヘン)ナリ。 宇津保物語、藏開、下 五十五 「けしう物シタマハズバ、イカニ嬉シカラム」
古事談、一、王道后宮「花山院御出家之時、天下騷動、有人、申大入道殿、仰云、けしうハアラジ、能ク求メヨ、不騷給」(花山天皇、宮中ヲ脫シタマヒシコトナリ)

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最終更新:2024年06月29日 20:05