こけ(苔・蘚)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① コケ植物に属する蘚類(せんるい)、苔類(たいるい)、地衣類およびそれらに似たシダ植物(クラマゴケの種類)の通称。 伊勢物語(10C前)七八「あをきこけをきざみて、蒔絵のかたにこの歌をつけて奉りける」
太平記(14C後)四「縦愁刑の下に死て、龍門原上の苔(コケ)に埋る共」
苔・蘚・蘿
② ( 比喩的に ) 体表に付いた垢(あか)、また①のような状態のものをいう。 御伽草子・物くさ太郎(室町末)「あし手のあかがり、のみ、しらみ、ひぢの苔(コケ)にいたるまで」
③ 植物「さるおがせ(猿麻桛)」の異名。 万葉集(8C後)七・一二一四「あてへ行くをすての山の真木の葉も久しく見ねば蘿(こけ)生(む)しにけり」
[補注]敷物に見立てその美しさをいう「苔筵(こけむしろ)」もあるが、和歌では万葉以来、多くは長い時間の経過や古めかしい状態の形容に用いられる。→苔むす
広辞苑 名詞 ①コケ植物に同じ。 苔・蘚・蘿
②木の幹や枝、岩、時に水中の石の上に見られる花の咲かない小形の植物の俗称。コケ植物・地衣類・藻類などが含まれる。コケ植物の胞子体または雄の生殖器官を「苔の花」という。〈[季]夏〉。 古今和歌集賀「さざれ石のいはほとなりて―のむすまで」
きのこ
大言海 名詞 〔和訓栞ニ、 木毛 (コケ)ノ義ナルベシトアリ、古クハ、木ノこけヲ云ヒシガ多ケレバ、木ナルガ元ニテ、他ニモ言ヒ及ボシ、スベテ、毛ノ如ク()エツキタルモノノ總名トナレルナラムト云フ、物類稱呼(安永)ニ、美濃、尾張、北國ニテハ、きのこヲ、こけト云フトアリ〕
(一){下等ノ植物ノ名。極メテ小サク、毛ノ如ク、物ニ着キテ密生シテ、ソレヲ包ムコト、衣ノ如キモノ、形、色、種類、甚ダ多シ。古樹ノ幹、古キ瓦屋ノ上、陰地ノ地面、石面ナドニ生ズ、瓦ナルヲ 屋上 (ヤノヘ)のこけ(屋遊)、地ナルヲ()ごけ、(アヲ)ごけ(地衣草)ナド云フ。
古事記、上 廿八 八股大蛇「其身、生(コケ)()(スギ)
萬葉集、二 四十三 「妹ガ名ハ、千代ニ流レム、姬島ノ、小松ガ(ウレ)ニ、 蘿產 (コケム)スマデニ」
同、三 十六 「イツノマモ、神サビケルカ、 香山 (カグヤマ)ノ、 鉾杉 (ムスギ)ガ本ニ、 薜產 (コケム)スマデニ」
同、十一 十四 (コケ)
本草和名、上 三十五 「垣衣、一名、靑苔衣、古介」
倭名抄、廿 廿三 苔類「苔、古介」
苔・蘚
(二){苔ノ、()シタルコト。 「苔ノ岩橋」苔ノ通路」苔ノ下路」
(三)古クナリタルコト。フルビルコト。( (コケ) ()ノ條ヲ見ヨ) 新六帖、六「マダキヨリ、枕モ袖モ、苔ニノミ、ナル身ノハテヲ、イカデ(ウヅ)マム」
(四){樹下、石上ヲ住處トシテ佛道ヲ修行スト云フ意ヨリ、僧ノ衣服ナドヲ、苔の衣、苔の袂、苔の袖ナド云ヒ、又、閑居ノ(テイ)ニ、苔の庵、苔の戶、苔の(トボソ)ナド云フ。 古今集、十六、哀傷、僧正遍昭「皆人ハ、花ノ衣ニ、ナリヌナリ、苔の袂ヨ、(カワ)キダニセヨ」(諒闇果テテ、衆人、喪服ヲ、吉服ニ着カヘタルヲ云フ)
宇津保物語、嵯峨院 七十五 「山伏ノ、こけの衣ヲヌギ、松ノ葉ヲツツミテ、深キ山ヨリ、トブラヒハベルモ、云云」
(五)苔ヲ、他物ニ見立テテ云フ語。 堀河百首、雜「年經レバ、苔の(ミヅラ)ヲ、結ヒカケテ、岩ノ姿ゾ、神サビニケル」(和漢朗詠集ニ「氷消波洗舊苔鬚」トアルニ因レルナリト云フ)
師氏集「奧山ノ、苔のころもニ、比ベ見ヨ、イヅレカ露ノ、オキマサルラム」
「苔ノ筵」苔ノ床」
(六)苔の(シタ)ト云フハ、地下、 黃泉 (ヨミヂ)ヲ云フ。 千載集、十七、雜、中「鳥邊山、君尋ヌトモ、朽チハテテ、苔の下ニハ、答ヘザラマシ」
拾遺愚草、中「立チカヘリ、思フコソナホ、悲シケレ、名ハ殘ルナル、苔ノ行方ニ」(苔の下ノ行方ナリ)
(七){日蔭葛 (ヒカゲカヅラ)松蘿 倭名抄、廿 廿三 苔類「松蘿、萬豆乃古介」
新勅撰集、十二、戀、二「君ニ逢ハム、其日ヲイツト、松ノ木ノ、こけノ(如ク)亂レテ、物ヲコソ思ヘ」
源、五十、浮舟 六十三 「宮ヨリハ、イカニイカニト、こけノ(如ク)亂ルルワリナサヲ宣フ」

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附箋:名詞 植物

最終更新:2024年11月17日 21:59