こし(濃)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 形容詞 ① 色が深い。色の感じが強い。 日本書紀(720)持統四年四月(寛文版訓)「勤(こん)の八級には深緑。務(む)の八級には浅(うすき)(〈別訓〉あさ)緑。追(つい)の八級には深(コキ)縹(はなた)。進(しん)の八級には浅縹」
古今和歌集(905‐914)物名・四五〇「花の色はただひとさかりこけれども返す返すぞ露はそめける〈高向利春〉」
② 特に染色で、紫または紅の色の深いさまをいう。 大和物語(947‐957頃)一〇三「それなむいとこきかいねりきたりける」
③ 中に溶けているものの割合が高い。濃度が高い。 宇治拾遺物語(1221頃)三「沈・丁子をこく煎じて入れたり」
④ 味、においなどが強い。 西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)八「苦(にが)く渋(しぶ)くして滋(コキ)味無けむ」
古今和歌集(905‐914)雑上・八七六「蝉のはのよるの衣はうすけれどうつりがこくもにほひぬるかな〈紀友則〉」
⑤ 生え方、塗り方などが厚く密である。 西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)九「果実も並に滋(コク)繁(しげ)くして大地に充満せしめ」
滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「鼻ばかり別に白粉を濃(コ)く付たら」
⑥ 情交が密である。関係が密接である。 源氏物語(1001‐14頃)真木柱「などてかくはひあひがたき紫を心に深く思ひそめけむ、こくなりはつまじきにや」
苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉二「濃い親類を持たないことを思ひあはすと」
⑦ 疑いや可能性などの程度が大きい。よりその傾向が強い。 天城越え(1959)〈松本清張〉二「他殺の疑いが濃い」
[語誌]( 1 )「うすい」の密度・濃度を表わす用法と対義関係にある語。
( 2 )上代には語幹「こ」の複合語が見られるのみで、形容詞としての確例は見えない。中古以降は、主として色や味について用いられる。
広辞苑 形容詞 ①色が深い。 古今和歌集物名「花の色はただひとさかり―・けれども」。
「―・い緑色」
濃し
②染色(特に、紫・紅)の度合が強い。 土佐日記「船には紅―・く良き衣着ず」。
源氏物語空蟬「―・き綾の 単襲 (ひとえがさね)なめり」
③密度が高い。
㋐液体の濃度が高い。
宇治拾遺物語3「見れば沈・丁子を―・く煎じて入れたり」。
「茶を―・くいれる」
㋑(味・香・化粧などが)淡泊でない。濃厚である。 後撰和歌集春「なほざりに折りつるものを梅の花―・き香にわれや衣染めてむ」。
西大寺本最勝王経平安初期点「(コキ)味無けむ」。
「吸物の味が―・い」「―・い化粧」
㋒(分布状態などが)密である。厚い。 西大寺本最勝王経平安初期点「果実も並に(コク)繁くして」。「―・い眉」「霧が―・い」
㋓男女間の交情がこまやかである。つながりが密接である。 傾城禁短気「よくよく分別して―・うならぬ中に見事な事をして、止めるが至極の要なり」。
「―・い仲に水をさす」
④可能性・必然性などの程度が大である。 「敗色が―・い」「疲労の色が―・い」「詐欺の疑いが―・い」
大言海 形容詞 ()るト、語根、相、通ズルカ〕
(一){色、()ミテ、深シ。((ウス)し、(アハ)しノ反)
古今集、十、物名「花ノ色ハ、只一サカリ、こけれドモ、返ス返スゾ、露ハ染メケル」
(二)液類ノ成分、コマヤカナリ。 濃厚 宇治拾遺、三、第十八條「 樋洗 (ヒスマシ) 革籠 (カハゴ)、云云、(カウバ)シサ、譬ヘン方ナシ、見レバ、沈、丁子ヲ、こく煎ジテ入レタリ」
「酒、濃し」濃く、茶ヲ煎ズ」
(三)茂ク、多シ。厚シ。 「髮ノ毛濃し」

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最終更新:2024年07月20日 20:21