こす(希望)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 助動詞 ( 活用は「こせ・〇・こす・〇・〇・こそ(こせ)」上代の特殊活用。動詞の連用形に付いて ) 相手の動作、状態が自分に利益を与えたり、影響を及ぼしたりすることを望む意を表わす。「…してくれ」「…してほしい」という、相手に対する希求、命令表現に用いられる。 古事記(712)上・歌謡「うれたくも 鳴くなる鳥か この鳥も 打ち止め許世(コセ)ね」
伊勢物語(10C前)四五「ゆく蛍雲のうへまでいぬべくは秋風吹くと雁につげこせ」
[語誌]( 1 )語源に関しては、( イ )寄こす意の下二段動詞「おこす」のオが脱落した、( ロ )カ変動詞「こ(来)」にサ変動詞「す」が付いた、( ハ )「く(来)」の他動詞形、などの説がある。また、命令形「こそ」を、係助詞「こそ」の一用法とする説もある。
( 2 )活用の種類についても、サ変の古活用の未然形「そ」を認めてサ変動詞とする説、下二段型とする説に分かれる。
( 3 )未然形「こせ」は、「こせね」「こせぬかも」のように、希求を表わす助詞などとともに用いられ、終止形「こす」は、「こすな」のように、禁止の終助詞「な」とともに用いられる。命令形「こそ」は最も多く見られる活用形で、これを独立させて終助詞とする説もある。
( 4 )平安時代以降、命令形に「こせ」の形が見られるようになる。
広辞苑 助動詞 (活用は下二段型。用例は、未然形「こせ」・終止形「こす」・命令形「こせ」だけ。誂えの終助詞「こそ」を命令形とする説もある)動詞の連用形に付き、その動作が自分に係わり及ぶ意を表す。自分のために…する。…てくれる。 万葉集5「梅の花咲ける如散り過ぎず我が家の園にありこせぬかも」。
万葉集11「我が後に生まれむ人は我が如く恋する道にあひこすなゆめ」。
催馬楽、我が駒「いで我が駒早く行きこせ」。
伊勢物語「ゆく蛍雲の上までいぬべくは秋風吹くと雁に告げこせ」
大言海 他動詞 〔おこす(送來)ト同意、おこすハ、此語ニ、おノ添ハリタルモノナルベシ(奈良朝文法史)おノ略セラルルハ、おこおこし、おここし(嚴)。(オモ)ふ、もふナドアリ、此語、終止形、未然形、命令形ノ外ハ、見エザレド、下二段活用ナルコト、明ラケシ〕
希望 (コヒネガ)フ意ヲ云フ語。
萬葉集、四 四十一 ()ヲト()ヲ、人ゾ()クナル、イデ 吾君 (ワギミ)、人ノ中言、 聞超 (キキコス)ナユメ」(ユメユメ聞カズアレカシ)
同、八 十七 「霞立ツ、春日ノ里ノ、梅ノ花、アラシノ風ニ、散リ 許須 (コス)ナユメ」
同、十一 三十四 「言疾クバ、中ハ淀マセ、 水無川 (ミナシガハ)(序)、絕ユト云フ事ヲ、 有超 (アリコス)ナユメ」
古事記、上 三十九 長歌「庭津鳥、(カケ)ハ鳴ク、ウレタクモ、鳴クナル鳥カ、此鳥モ、擊チ() 許世 (コセ)ネ」記傳「こせねハ、 戀望 (コヒネガフ)意ノ辭、云云、こす、こせ、皆、一辭ノ(ウツ)レルナリ、云云、ねモ、 乞望 (コヒネガフ)辭」
萬葉集、九()ノ國ニ、()マズ通ハム、妻ノ(モリ)(序)、 妻依 (ツマヨ) 來西 (コセ)ネ、妻ト云ヒナガラ」(寄セヨカシ)
聖德太子傳 曆謠 () 相見社根 (アヒミエコセネ)
萬葉集、五 十四 「梅ノ花、今咲ケル(ゴト)、散リ過ギズ、我ガ()ノ園ニ、アリ己世ヌカモ」(アリこせヌモノカハ、こせカシノ意ト云フ)
雅言考(橘守部)こせぬかも「 乞望 (コヒネガフ)ノ辭ニテ、こす、こせト活用セリ」
萬葉集、十 廿九 「月カサネ、吾ガ思ウ妹ニ、逢ヘル夜ハ、今シ七夜ノ、繼ギ巨勢ヌカモ」
伊勢物語、四十五段「ユク螢、雲ノ上マデ、()ヌベクバ、秋風吹クト、雁ニ吿ゲこせ」(こせよナリ、古言ニハ、よヲ添ヘズシテ、命令形ナリ)
希望
動詞活用表
未然形 こせ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 こせ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 こす べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 こする も、かも、こと、とき
已然形 こすれ ども
命令形 こせよ

検索用附箋:他動詞下二段
検索用附箋:助動詞

附箋:下二段 他動詞 助動詞

最終更新:2024年07月21日 13:45