こふ(恋)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ① 人・土地・植物・季節などを思い慕う。また、めでいつくしむ。 日本書紀(720)斉明七年一〇月・歌謡「君が目の恋(こほ)しきからに泊(は)てて居てかくや姑悲(コヒ)むも君が目を欲(ほ)り」
観智院本三宝絵(984)下「恩を思ふ人いかでか昔をこひざらむ」
② 異性(時には同性)に特別の愛情を感じて思い慕う。恋する。恋慕する。 古事記(712)上・歌謡「股長(ももなが)に 寝(い)は寝(な)さむを あやに な古斐(コヒ)聞こし 八千矛の 神の命(みこと)」
万葉集(8C後)一五・三七五〇「天地(あめつち)の極(そこひ)のうらにあが如く君に故布(コフ)らむ人はさねあらじ」
[語誌]( 1 )上代では、ふつう「に」を上に伴う。「を」を伴うようになるのは中古からである。
( 2 )特殊な活用の例として、「中華若木詩抄‐中」の「天下を中興せんと思た風を恋ふこと」、「歌謡・松の葉‐三・のんやほぶし」の「千々のあはれは妻こふ鹿の音」などのように、四段活用型の連体形の用例も散見する。
( 3 )現代では、まれに「改正増補和英語林集成」の「オンナヲ koiru(コイル)」や「小鳥の巣〈鈴木三重吉〉上」の「自分がこの祖母を恋ひる事を忘れて出てゐる間に」のように、上一段活用化した用例が見られる。
広辞苑 他動詞 (本来、上二段動詞。室町期頃から四段にも活用。現代語では主に終止形が用いられる。また、上二段の用例も見られる)あるひとりの異性に身も心もひかれる意が原義で、奈良時代、「君に恋う」のように、助詞「に」をうけたが、平安時代から助詞「を」をうけるのが一般となった。
①心ひかれる相手に会いたいと強く思う。亡くなった人などを慕い思う。慕い求める。恋い慕う。
万葉集6「わがせこに―・ふれば苦し」。
宇津保物語嵯峨院「若君達、父君を―・ひつつ打ち泣きて居給へるを」。
「亡き母を―・う」
恋ふ
②(場所・事物などを)遠くから慕い思う。こがれる 万葉集15「いつしかも見むと思ひし粟島を(よそ)にや―・ひむ行くよしを無み」。
「故郷を―・う」「過ぎた昔を―・う」
めでる。めでいつくしむ。 万葉集3「 石竹 (なでしこ)のその花にもが朝な()な手に取り持ちて―・ひぬ日無けむ」
大言海 他動詞 〔乞ふニ通ズ、他ノ意中ヲ求ムル意〕
(一)(シタ)ヒ思フ。シノブ思慕
齊明紀、七年十月「天皇之喪、歸就海、於是皇太子泊一所、哀慕天皇、乃口號曰、君ガ日ノ、(コホ)シキカラニ、()テテ居テ、斯クヤ 姑悲 (コヒ)ムモ、君ガ目ヲ()リ」
萬葉集、二 十四 額田王御歌「古ヘニ、(コフ)ラム鳥ハ、ホトトギス、(ケダシ)シヤ鳴キシ、吾ガ 戀流 (コフル)ゴト」(御父天皇ヲ戀ヒタマフナリ)
古今集、十五、戀、五「又ノ年ノ春、梅ノ花盛リニ、月ノ面白カリケル夜、 去年 (コゾ)ヲこひテ、カノ西ノ對ニ()キテ」
(二) () (ウツクシ)賞愛 萬葉集、三 四十三 「撫子ノ、其花ニモガ、朝ナサナ、手ニ取持チテ、 不戀 (コヒヌ)日無ケム」
同、十「雪ヲ()キテ、梅ヲ 莫戀 (ナコ)ひソ、アシビキノ、山 偏就 (カタツ)キテ、家居スル君」
(三)男女、相、慕ヒ思フ。戀慕 萬葉集、十五 三十三 吾妹子 (ワギモコ)ニ、古布流ニアレバ、タマキハル、短キ命モ、惜シケクモナシ」
同、十一 廿七 小墾田 (ヲハリダ)ノ、板田ノ橋ノ、(コボ)レナバ、(ケタ)ヨリ行カム、 莫戀 (ナコ)ひソ 吾妹 (ワギモ)
動詞活用表
未然形 こひ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 こひ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 こふ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 こふる も、かも、こと、とき
已然形 こふれ ども
命令形 こひよ

検索用附箋:他動詞上二段

附箋:上二段 他動詞

最終更新:2024年07月28日 18:30