こむ(籠・込イ)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ① ある場所いっぱいに人や物が入り合う。また、用事などが一度に重なり合う。 紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一一日「人げ多くこみては、いとど御心地も苦しうおはしますらむ」
家族会議(1935)〈横光利一〉「今仕事が込んでゐるから手のすき次第行くとの事だった」
込・籠
② 複雑に入り組む。精巧に作られる。 虎寛本狂言・子盗人(室町末‐近世初)「角(すみ)から角迄も手のこうだ能い普請じゃ」
③ 動詞の連用形に付けて用いる。
(イ) ( 自動詞に付けて ) あるものの中に入る。「上がりこむ」「溶けこむ」「逃げこむ」など。
(ロ) 十分にする。過度にする。また、長く続ける。「走りこむ」「老けこむ」「煮こむ」「寝こむ」など。
(ハ) 心がとざされ、他をうけつけない状態でする。「考えこむ」「ふさぎこむ」など。
他動詞 ① あるものの中に入れる。動詞の連用形に付けて用いられる場合も多い。「つめこむ」「流しこむ」「おしこむ」など。 宇津保物語(970‐999頃)蔵開上「白銀の雉子二、腹にりうなうこみて、雉子のかはをはぎて」
四河入海(17C前)二「箝はものを云はせじとて口にこみてをく物ぞ」
② 多くの矢を一か所に射込む。また、刀をぶすりとさし込む。 太平記(14C後)三四「武具の迦(はず)れ、内甲を散々にこみければ、つづく御方はなし」
③ 酒を無理じいして飲ませる。 四河入海(17C前)一五「大盃の太白を以て罰盃をこみ申すべきぞ」
④ 費用や日数を費やす。 浄瑠璃・三荘太夫五人嬢(1727)一「多人数の道中に日をこみ、京着延引に罷成れば」
⑤ ( のみこむ意 ) 承知する。心得る。 浄瑠璃・義経千本桜(1747)四「ヱヱ、込(コン)だ込だ。妾奉公(てかけぼうこう)にやらしゃるの」
滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「ヲット、皆までいはんすな。込(コン)でゐる」
[補注]四段活用の「こむ」は、[ 一 ]③や[ 二 ]①などのように他の動詞に下接して用いられることが多いが、「こみ合う」「こみ上げる」「こみ入る」「こみ乗る」など、他の動詞に上接して用いられることもある。
広辞苑 自動詞 内部へ内部へとものごとが入り組んで密度が高まる意。
①物が多く入り合う。混雑する。 輻湊 (ふくそう)する。
紫式部日記「人げ多く―・みては、いとど御心地もくるしうおはしますらむ」。
「―・んだ電車」「仕事が―・んで手が放せない」
混む・込む
②細密にわたる。複雑に入り組んでいる。ややこしい。 狂言、子盗人「どれからどれまでも手の―・うだよい普請でござる」。
「手の―・んだ芝居」
③《込》(他の動詞の連用形に付いて)
㋐何かの中に入る。または、入れる意を表す。
続猿蓑「煤はきや鼠追ひ―・む 黄楊 (つげ)の中」。
「飛び―・む」「金を振り―・む」
㋑すっかりそうなる意を表す。 「老い―・む」「信じ―・む」「ふさぎ―・む」
㋒みっちり、または十分にそうする意を表す。 「教え―・む」「鍛え―・む」「煮―・む」「だまり―・む」
④「のみ込む」の略。承知する。→こんだ 浮世風呂4「ヲツト、皆までいはんすな、―・んでゐる」
大言海 自動詞 〔込ノ字ハ、吾妻鏡ニ見ユ、入ニ 之繞 (シンネウ)カケタル造字〕
(一){繁ク入リ合フ。コモル
催馬樂、大宮「大宮ノ、西ノ 小路 (コンヂ)ニ、 菖蒲 (アヤメ) 己牟 (コム)ダリ、 直菖蒲 (サヤメ)己牟ダリ」
榮花物語、一、月宴「式部、民部ノ 官人 (ツカサ)、皆、參リこみタリ」
「込み入ル」入リこむ」
籠・込
(二) 手工 (タクミ)ヲ盡ス。 「手ノこみタル細工」
(三)他動詞ノ下ニ熟語トナレバ、他動ノ意味ヲナス。 「積ミ込む」押シ込む」打チこむ」()ギこむ」思ヒこむ」
動詞活用表
未然形 こま ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 こみ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 こむ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 こむ も、かも、こと、とき
已然形 こめ ども
命令形 こめ

検索用附箋:自動詞四段
検索用附箋:他動詞四段

附箋:他動詞 四段 自動詞

最終更新:2024年08月04日 19:56