辞書 | 品詞 | 解説 | 例文 | 漢字 |
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日本国語大辞典 | 助詞 |
[1] 〘係助〙 (「そ」とも。→語誌) [一] 文末用法。 ① 体言、活用語の連体形、副助詞などを受けて、指定的に強調し、聞き手に働きかける。 |
※古事記(712)上・歌謡「八千矛の 神の命 萎(ぬ)え草の 女にしあれば 我が心 浦渚(うらす)の鳥叙(ゾ)」 ※万葉(8C後)一〇・二一〇一「吾が衣摺れるにはあらず高松の野辺行きしかば萩の摺れる曾(ソ)」 ※伊勢物語(10C前)六「かれは何ぞとなんをとこに問ひける」 |
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② 一体言だけからなる文を受けて指定的に強調する。同様の構造のものを畳みかける場合は、並列効果が生ずる。中世以後の用法。 |
※百座法談(1110)三月二七日「年をいひて年にしたがひて、太郎そ次郎そ、わかきを五郎とさだめてちぎりをなしていふやう」 ※仮名草子・伊曾保物語(1639頃)中「その音におそれて、狐狸ぞなどいふ物、ここかしこより逃げ去りぬ」 |
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[二] 文中の連用語や条件句を受け、指示強調する。結びの活用語は連体形となる。 |
※古事記(712)中・歌謡「畝火山 昼は雲とゐ 夕されば 風吹かむと曾(ソ) 木の葉さやげる」 ※万葉(8C後)二〇・四三二三「時々の花は咲けども何すれ曾(ソ)母とふ花の咲き出来ずけむ」 ※古今(905‐914)雑体・一〇二三「枕よりあとより恋のせめくればせんかたなみぞとこなかにをる〈よみ人しらず〉」 ※土左(935頃)承平五年一月九日「女は舟底にかしらをつきあてて、音(ね)をのみぞ泣く」 |
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[2] 〘副助〙 文中の疑問語を受けて不定の意を表わす。中世以後の用法。 |
※史記抄(1477)四「何事そかあって、にげて秦へきたものでぞあるらうぞ」 ※寛永刊本蒙求抄(1529頃)六「どこへぞよめ入りがしたう候が」 ※洒落本・無駄酸辛甘(1785)「なんぞ思ひ付が有るならば、言ってみなせへ」 |
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[3] 〘終助〙 文末にあって聞き手に強く働きかける。中世以後の用法。 |
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)陳勝項籍第一「別将・別は音は清でよむそ」 ※歌舞伎・一心二河白道(1698)一「そんなら討つぞ」 ※夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第一部「こいつがまた一仕事ですぞ」 |
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[語誌]((一)について) 上代には濁音仮名も見られるが、清音仮名によるものの方が多い。従って、古くは清音であったが、上代から中古にかけて濁音化したものと考えられる。語源については、指示詞「其(ソ)」とするもの、「シ・ソ」と変化する指定辞とするもの、などがある。 | ||||
広辞苑 | 助詞 |
(奈良時代には多くは清音) ➊(係助詞)幾つかの中から特に取り立てて強調する。幾つかから選ぶために、強調したものについて述べる語は、それ以外への思いをこめて言い切りにならず、活用語の時は連体形となり、係結びの関係が生ずる。院政期に終止形・連体形の機能が同一化するに伴い、連体形終止の独自性が失われ、係結びに乱れが生じた。 ①一つの事柄を特に指定し強調する。 |
古事記中「夕されば風吹かむと―木の葉さやげる」。 万葉集15「時待つと我は思へど月―経にける」。 源氏物語帚木「およすげたることは言はぬ―良き」 |
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②助詞「も」と接合し、「もぞ」の形で危惧・懸念の意を表す。…するといけないから。→こそ。 | 伊勢物語「思ひも―つくとてこの女をほかへ追ひやらむとす」 | |||
③(文末に用い)事柄全体を説き聞かせ、強く断定して示す。…だ。…である。…なのだ。 |
万葉集1「国原は 源氏物語紅葉賀「いぬきがこれをこぼち侍りにければつくろひ侍る―」 |
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④疑問の語と共に用いて相手に問いただす意を表す。…であるか。…か。 |
万葉集5「いづくより来りしもの―」。 伊勢物語「かれは何―となん男に問ひける」 |
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⑤助詞「と」と接合し、「とぞ」の形で文末に用いて伝え聞いた意を表す。…ということだ。 |
伊勢物語「世の聞えありければ |
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➋(副助詞)疑問の語と共に用いて不定・不明の意を強調する。中世以後の用法。「…か」の意。 |
天草本伊曾保物語「さらば誰― 「どこ―へ行ったらしい」 |
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➌(終助詞)聞き手に対して自分の発言を強調する。体言には「だ」を介して付く。江戸後期以後の用法。 |
浮世風呂前「二人ながらおれが対手だ―」。 「決して許さない―」「もう9時だ―、起きろ」 |
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大言海 | 天爾遠波 | 第二類ノ天爾乎波。多クノ中ニテ、一ツヲ指ス意ノ語。 |
古事記、中(神武)
十三
「畝傍山、晝ハ雲ト居、夕サレバ、風吹カムト曾、木ノ葉 萬葉集、四 四十五 「戀ハ今ハ、アラジト我レハ、思ヒシヲ、イヅクノ戀 「彼レぞ善キ」コレぞ惡シキ」行キぞワヅラフ」恨ミぞスベキ」 |
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又、意ハ同ジケレドモ、言語ノ末ニ居テ、指シ示シ、又ハ、問ヒ掛クル意トナル、アリ。 |
古事記、上
五十三
長歌「三谷、 「思フバカリぞ」鳴キワタラムぞ」世ノ常ぞ」誰ガ子ぞ」如何ニぞ」 |
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