さを(篙・棹)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 竹や木の枝葉を取り去った細長い幹。 古今著聞集(1254)一六「そのさほの下にこそあなは侍れ。さぐりてしたまへ」 竿・棹・桿
② 水底を突いて船を前進させる細長い棒。竹や木の棒を用いる。水棹(みさお)。水馴棹(みなれざお)。 古事記(712)中・歌謡「ちはやぶる宇治の渡りに佐袁(サヲ)取りに速けむ人しわが仲間(もこ)に来む」
③ 竹で作った衣紋(えもん)掛け。衣紋竿。衣紋竹。 今昔物語集(1120頃か)一四「御桿(さを)に係(かかり)たる御衣(おんぞ)を召て」
④ 検地などで土地を測量する際に用いた定規の棒。文祿~慶長(一五九二‐一六一五)の頃は六尺三寸のものを用いたが、江戸時代は主として六尺一分のものを用いた。検地の際は長さ二間のもの一本、一間のもの二本を要した。竿には一尺ごと、六尺の間に墨線を施してある。検地竿。間竿(けんざお)。 仮名草子・尤双紙(1632)上「田畠にさほをあてて検地をしては」
⑤ 三味線の胴から上の弦を張る長い柄の部分。また、転じて、三味線の称。 仮名草子・恨の介(1609‐17頃)上「さて、さほのくだりには、世の中は夢か現(うつつ)か現とも夢ともさらにありてなければ、といふ歌を、仮名字にぞ書きにける」
⑥ 飛行中の雁(かり)などが一列になった状態。→竿になる 随筆・守貞漫稿(1837‐53)二五「雁陣を見て男女児の云詞京坂にては、がんがとうりや、竿に乗てとうりや」
⑦ 歌舞伎で、役者が一例に並んだ状態。「さおに並ぶ」のかたちで用いられる。 歌舞伎・伊勢平氏栄花暦(1782)三立(暫)「いづれも花道へ竿(サヲ)にならぶ」
⑧ 舞楽の小道具の一つで、一丈ほどの細長い棒。 楽家録(1690)三八「持棹之舞、狛鉾之一曲也」
⑨ 能楽の小道具の一つで、六尺ほどの細い竹。舟の作り物を出す場合に、櫂(かい)または櫓(ろ)に擬して用いる。
⑩ 能楽用の太鼓(たいこ)の両方の椀形(わんけい)の部分を連絡する筒形の部分。
⑪ 石灯籠(いしどうろう)の円柱の部分。竿石。 浮世草子・諸商人世帯気質(1736)五「苔付の石燈籠、仁平二年壬申正月正辰日と棹(サホ)に彫付けあり」
⑫ 旧式の小銃に弾薬を込めるのに使う細長い鉄の棒。カルカ。込矢(こみや)。
⑬ 箪笥(たんす)や長持などの上に付けてかつぐのに用いる棒。
⑭ キセルの柄の部分。 俳諧・宗因千句(1673)上「墨染の袖枕にもきせる竿 火打の石の床に起ふし」
⑮ 秤竿(はかりざお)をいう。 古文真宝笑雲抄(1525)一「はかりをつくるにはまづをむしをつくり、其に合てさををつくるぞ」
⑯ 釣り竿をいう。 〔随筆・嬉遊笑覧(1830)〕
⑰ 物干し竿をいう。
⑱ 陰茎(いんけい)の俗語。
接尾辞 ① 旗を数えるのに用いる。 日本書紀(720)欽明二三年八月(北野本南北朝期訓)「五色幡(はた)二竿(サヲ)」
② 料紙などの束を数えるのに用いる。一棹は一〇束。 御湯殿上日記‐天正一一年(1583)三月五日「御かたの御所へも御たる、みのかみ一さを御しん上あり」
③ ( [ 一 ]⑬で箪笥などをかつぐところから ) 箪笥や長持などを数えるのに用いる。 義演准后日記‐慶長三年(1598)八月二〇日「出仕䉼荷物、長櫃九さを遣之了」
④ 羊羹(ようかん)やそれに類した棹物(さおもの)菓子を数えるのに用いる。 咄本・笑府衿裂米(1793)長者「此もちにかぎって、一さを二さをと申ます」
⑤ 竿金(さおがね)を数えるのに用いる。
広辞苑 名詞 ①枝葉を取り去った竹の幹。 「旗―」「物干し―」 竿・棹
②船を進めるに用いる長い棒。 水棹 (みさお) 万葉集18「船に乗り川の瀬ごとに―さしのぼれ」
秤竿 (はかりざお)の略。→棹秤 (さおばかり)
間竿 (けんざお)の略。 日葡辞書「サヲヲウツ」
⑤三味線の胴から上の、弦を張った長い部分。転じて、三味線。
⑥「つりざお」の略。
⑦卵塔・石灯籠などの柱状の部分。竿石 (さおいし)
簞笥 (たんす) 長持 (ながもち)などにさしてかつぐ棒。また、簞笥・長持を数えるのに用いる語。 「簞笥一―」
⑨真っ直ぐに長い物のたとえ。 「雁が―になる」
⑩陰茎。
⑪旗を数えるのに用いる語。 欽明紀「五色幡二―」
羊羹 (ようかん) 洲浜 (すはま)などの棹物菓子を数えるのに用いる語。
大言海 名詞 〔さハ、刺すノ語根、をハ、 水脈 (ミヲ)ノ、をニテモアルベキカ、尙、考フベシ〕
(一){舟ヲ遣ルニ用ヰル、細長キ具、竹、又ハ、木ナリ。舟子、 背向 (ウシロムキ)ニ、舟ノ上ニテ、コレヲ、水底ニ突キ張リテ步メバ、舟、前ヘ進ム。又、 () (サヲ)。水馴棹。
字鏡 五十 「㰏、佐乎」
倭名抄、十一舟具「㰏、篙、棹竿也、刺船也、佐乎」
神武紀「有一漁人、乘艇而至、云云、天皇勅、授漁人 椎㰏 (ニシヒサヲ)、令執而牽納於皇舟、以爲海導者
夫木抄、八、鵜河「舟端ニ、さを打チナラシ、笧火ノ、イカナル淵ヲ、行キカヘルラム」
篙・棹
(二)細ソキ竹ノ幹ヲ、種種ノ用トスルモノ。サヲダケ。タケザヲ。 物干 (モノホシ)()、鳥さ()、釣さ()ノ類、各條ヲ見ヨ。竿
(三)簞笥、長持ナドノ上ニ附ケテ、(カタ)グルニ用ヰル、木ノ棒。ソレラヲ數フルニ、幾棹ト云フ。
(四)雁行ノ、一列トナレルモノ。(コト)()ニ股ノ形ニナレルヲ、(カギ)ト云フ。子供ノ、雁行ヲ見テ、興ジテ叫ブ 口遊 (クチズサビ)ニ「竿ニナレ、鈎ニナレ」又「(コト)()ニナアレ」ナド云フ。 犬子 (ヱノコ)集(寬永)一、春、上「舟ニ乘レ、棹ニナリツツ、歸ル雁」
卜養狂歌集(寬永)春「春ノ頃、鷹ノ、雁ヲ、多クさほニ懸ケ通ルヲ見テ「 寒雁 (カンガリ)ヤ、ウッカリガネト、 鷂鷹 (ハシタカ)ニ、捕ラレテ後モ、棹ニナレナレ」
永久四年百首、箏「空ノ色ニ、ヨソヘル琴ノ、(コト)()ヲバ、(ツラ)ナル雁ト、思ヒケルカナ」
(五)秤竿 (ハカリザヲ) 閒竿 (ケンザヲ)竿金 (サヲガネ)棹物 (サヲモノ)、等ノ各條ヲ見ヨ。

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附箋:助数詞 名詞 接尾辞 物品

最終更新:2024年11月17日 22:01