づ(出)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ① ある限られた所から、その外へ進み動いて行く。また、外のある場所に位置を変える。いず。
(イ) (出発点に重点がおかれ、動作性が強い場合) 外へ行く。出かける。出発する。
※天草本伊曾保(1593)ネテナボ帝王イソポに御不審の条々「カノシマヲ zzuruni(ヅルニ) ノゾウデ」
※洒落本・卯地臭意(1783)「おのしゃア此ごろは、商売にゃア出(デ)るかへ」
※曠野(1964)〈庄野潤三〉六「トラックが一時間ほどしたら出るそうです」
(ロ) (行先に重点がおかれ、状態性が強い場合) ある場所に姿を現わす。行先がある働きを必要とする場所であるときには、出仕、出勤、出陣、出場、出演、出席などをする意になる。 ※古本説話集(1130頃か)四九「ただあきらも刀を抜きて、御だうざまにでたるに」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「御奉公に出(デ)る為の稽古だから」
(ハ) (ある働きをやめる事情が含まれている場合) そこから離れ去る。離職、離婚、卒業などをする。 ※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「片付た先から、出(デ)るの、引くのと」
※枯菊の影(1907)〈寺田寅彦〉「中学を出て高等学校に移った明けの春であった」
② (今まで隠れていた物やなかった物などが)表に現われる。いず
(イ) (隠れていた物、しまってあった物、ひっこんでいた物などが)現われる。出現する。
※万葉(8C後)一四・三三七六「恋しけば袖も振らむを武蔵野のうけらが花の色に豆(ヅ)なゆめ」
※雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉上「証拠の出たのと見える」
(ロ) (なかった物が)新しく生じる。発生する。また、ある土地から産出する。 ※玉塵抄(1563)三「火をきることは急にとどけてもまねば火がでぬぞ」
※人情本・英対暖語(1838)初「労症の病ひが発(デ)るだらうなんぞと」
(ハ) 表だった所に発表される。掲示、掲載、出版などされる。 ※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「合巻とやら申(もうす)草双帋が出(デ)るたびに買ますが」
③ 外に向かって張り出す。でっぱる。つきでる。 ※桑の実(1913)〈鈴木三重吉〉二六「棚の横木に釘が出てゐるのを」
④ 数量、力、値うちなどが加わる。 ※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「『暑い中は這入人(へゑりっと)が少へ』『これから湯も入(いり)が出(デ)て来る』」
⑤ ある限界、標準などを超える。 ※破垣(1901)〈内田魯庵〉一「漢江繻子だって此位なものは一両二分、片側の太織が爾うサ二両少(ちっ)と出るかナ」
※私小説の系譜(1948)〈中野好夫〉「すべて臆測を出ない」
⑥ あるもとから現われる。そこから起こる。 ※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「目のふちへ紅を付るのも一体は役者から出(デ)た事らしいネ」
⑦ 売れたり、支払ったりして品物や金銭が手もとからなくなってゆく。 ※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉老俗吏「世間の交際も気張らなければならず、〈略〉何かにつけて出ることが余計になるから」
⑧ 金品、食料、また、許可、暇などが与えられる。 ※日葡辞書(1603‐04)「イトマガ zzuru(ヅル)」
※銀の匙(1913‐15)〈中勘助〉後「腹を痛めないかぎりに許しがでるのを」
⑨ ある態度をとって相手に対する。 ※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「足下のやうに、さう意地わるく出(デ)られては」
※夜の雪(1898)〈幸田露伴〉下「助は喜悦(よろこび)意外に出(デ)しが」
⑩ 道をたどって行ってそこに至る。 ※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「大森の橋の際へ出(デ)たが」
⑪ 性交する。 ※雑俳・末摘花(1776‐1801)二「うじゃくひがしへとんでから一つ出る」
※咄本・落噺年中行事(1836)上「『下女にしてはいい女だ、ちらとでたい』『べらぼうめ、下女といろをするなら〈略〉』」
[語誌]古くは「いづ」が普通に用いられたが、その頭音「い」の落ちた「づ」もすでに「万葉集」に見られる。ただし、「漕ぎづ」、また、名詞形の「思ひで」「門で」など、他の語と複合した場合に多く見られ、単独で使われているのは東歌と防人歌だけである。しかし、「名語記‐四」には「出はいづ也。ただづるとばかりいへり、如何。いづるのいをいはざること例おほき也」とあるので、鎌倉時代ごろには相当広く「い」の落ちた形が使われていたと見られる。
広辞苑 自動詞 (文語「いづ」から)
➊現れる。姿を現す。
①現れる。
「月が出る」「悪い結果が出る」「お茶が出る」「答えが出る」
②出席する。出場する。出勤する。出演する。 「会議に出る」「テレビに出る」
③のり出す。登場する。立候補する。 「実業界に出る」「選挙に出る」
④ある態度をとる。 「攻撃に出る」「 下手 (したて)に出る」
⑤芸者などになる。
⑥出版物に載る。 「その話が新聞に出た」
⑦出版される。 「新年号はまだ出ない」
⑧売れる。 「これはよく出る品だ」
⑨見つかる。 「とられた財布が出た」
➋内から外に移る。
①外部に行く。去る。
鹿の子餅「そこから出る所ぢゃない」。
「庭に出る」「家を出る」
②出発する。出立する。 「ずっと前に船は出てしまった」
③余った部分がはみ出す。 「足が出る」「三日を出ずに仕上げます」
④卒業する。 「学校を出る」
⑤行き着く。 「この道を行けば駅に出る」
➌源から起こる。
①発生する。
「火が出る」
②わき出る。 「温泉が出る」
③産出される。 「静岡では茶が出る」
④系統を引いている。 「この言葉は中国語から出ている」「あの人は近衛の一族から出た人だ」
⑤吹きはじめる。 「風が出て来た」
⑥洪水になる。 「水が出る」
⑦与えられる。 「お暇が出る」「許しが出る」
➍(東北地方などで)出来る。
大言海 自動詞 ()ノ約〕
出ヅ。デル。
武烈卽位前紀「(シビ)(人名)ノ 若子 (ワクゴ)ヲ、 阿娑理逗 (アサリヅ)(求食出ヅ)ナ猪ノ子(鮪ヲ葬リタルナリ)」
萬葉集、十四「戀シケバ、袖モ振ラムヲ、武藏野ノ、ウケラガ花ノ、色ニ()ナユメ」
同卷 廿 眞憐 (マガナ)シミ、()レバ言ニ()、サ()ナヘバ、心ノ()口ニ、乘リテカナシモ」
同、七 三十九 「磯ニ立チ、沖ベヲ見レバ、 海藻刈 (メカリ)舟、海人(コギ)()ラシ、鴨翔ル見ユ」
同、廿 十九 「防人ノ、堀江漕 豆流 (ヅル)、伊豆手船、舵トル閒ナク、戀ハシゲケム」
古事記、中(應神) 七十八 「モトヘハ、君ヲ思ヒ()、末ヘハ、イモヲ思ヒ()
孝德紀、大化五年三月「(モト)每ニ、花ハ咲ケドモ、何トカモ、(ウツク)シ妹ガ、復タ咲キ()來ヌ」
萬葉集、十四 廿五 「河上ノ、根白 高草 (タカカヤ)、アヤニアヤニ、サ寐サネテコソ、言ニ()ニシカ」
同、十八 廿七 長歌「ヤホコロモ、舞ヒ()コシトキ」
繼體紀、七年九月「 水下 (ミナシタ)()、魚モ、(ウヘ)()テナゲク」
動詞活用表
未然形 ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 づる も、かも、こと、とき
已然形 づれ ども
命令形 でよ

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最終更新:2024年05月10日 20:10