しぬ(死ロ)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ① 息が絶える。命がなくなって、この世から去る。亡くなる。⇔生きる。 日本書紀(720)雄略一三年九月・歌謡「鞍(くら)着せば 命志儺(シナ)まし 甲斐の黒駒」
源氏物語(1001‐14頃)玉鬘「重き病して、しなむとする心地にも」
② ( 呼吸が途絶えて①のように見えるところから ) 気絶する。また、生きた心地がなくなる。 落窪物語(10C後)一「我を嫌疑の者とて、はや捕ふると思ひつるにこそしにたりつれ」
③ 女が性交で絶頂に達する。また、女が男に夢中になる。 洒落本・傾城買四十八手(1790)しっぽりとした手「こんがわるくなって一っぱい呑とぐっとねるから、これじゃア傾城がしなねへはづだ」
④ あるはずの活気がなくなる。生き生きしなくなる。また、うごきがなくなる。 「眼が死んでいる」
潮風(1920‐21)〈里見弴〉二「風が死んで、あたりは不気味なほど静かだった」
⑤ 期待される効力がはたらかなくなる。持たせた利用価値が活用されなくなる。 竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の家「智恵になってゐない思想は死んだ概念の帳簿にすぎない」
⑥ 囲碁で、敵に石を囲まれて取られる。目(もく)が無くなる。 壒嚢鈔(1445‐46)一「黒の死る時は黒業煩悩の失る事を喜び、白の死る時は白法善根の滅す事を悲て、無上菩提を観念する也と」
⑦ 野球で、打者や走者がアウトになる。
[語誌]( 1 )室町時代頃から四段活用への変化がみられ、「始と云は死ぬさきのことぞ」〔蒙求抄(京大七冊本)四〕、「ただ死ねば、今迄の扶持方が失墜に成べい程に」〔雑兵物語‐上〕などの例がある。
( 2 )一方では近代に至るまでナ行変格活用もみられ、「死ぬる心でござります」〔人情・仮名文章娘節用‐前〕、「セガンチニの死(シ)ぬるところが書いてある」〔青年〈森鴎外〉五〕などの例がある。
広辞苑 自動詞 (シ(息)イヌ(去)の約か)
①生命を失う。息が絶える。
万葉集17「鶯の鳴くくら谷にうちはめて焼けは―・ぬとも君をし待たむ」。
竹取物語「命―・なばいかがはせむ」。
平家物語9「いかに源太、―・ぬるとも敵のうしろを見すな」。
「飼い犬が―・ぬ」
②その事物の生命とするものがなくなる。生気・活気がなくなる。 「この絵は―・んでいる」
③そのもののもつ力が活用されない。利用されない。 「―・んだ金」
④囲碁で敵に石を囲まれて取られる。また野球でアウトになる。 「この隅の石は―・んだ」
大言海 自動詞 (一){(イノチ)()ス。息、絕ユ。ミマカル。死ス。 萬葉集、五 廿八 「家ニアリテ、母ガ取リ見バ、慰ムル、心ハアラマシ、 斯奈 (シナ) 斯農 (シヌ)トモ」
死ヌレバ、天ニ(ノボ)ルト傳フルハ、
萬葉集、二 三十七 (オホギミ)ハ、神ニシマセバ、天雲ノ、五百重ノ(シタ)ニ、(カク)リタマヒヌ」
同、五 四十 「布施オキテ、吾レハ乞ヒ()ム、欺カズ、(タダ)()行キテ、 天道 (アマヂ)知ラシメ」
死ヌレバ、黃泉ニ行クト傳フルハ、
萬葉集、五 四十 男子、 古日 (フルヒ)ノ死ヲ悲シメル歌「(ワカ)ケレバ、道行キ知ラジ、(マヒ)ハセム、(シタ)部ノ使、負ヒテ通ラセ」
同、九 三十六 長歌「丈夫ノ、爭フ見レバ、生ケリトモ、會フベキアレヤ、シシクシロ、 黃泉 (ヨミ)ニ待タムト」
(二){死入ルホド、堪ヘカヌ。 源、廿九、行幸 三十一 「御几帳ノ後ナドニテ聞ク女房、しぬベク覺ユ」(可笑シサニ)同、十七、繪合 十三 「淺ハカナル若人ドモハ、しにカヘリ(ユカ)シガレド」
(三)物事ニ、 活用 (ハタラキ) 神采 (イキホヒ)、無クナル。 「手際ガ死ぬ」畫ノ勢ガ死ぬ」 金遣 (カネヅカヒ)ガ死ぬ」
(四)碁ニ、石ヲ圍マレテ、取ラル。
動詞活用表
未然形 しな ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 しに たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 しぬ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 しぬる も、かも、こと、とき
已然形 しぬれ ども
命令形 しね

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最終更新:2024年10月13日 21:17