しむ(令・使)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 助動詞 ( 活用は「しめ・しめ・しむ・しむる・しむれ・しめよ」 活用語の未然形に付く )
[ 一 ] 使役の助動詞。他にその動作をさせる意、またはそのように誘発する意を表わす。…させる。
日本書紀(720)継体七年九月・歌謡「妹が手を 我に枕(ま)か斯毎(シメ) 我が手をば 妹に枕(ま)か絁毎(シメ)」
源氏物語(1001‐14頃)夢浮橋「法師にては勧めも申しつべき事にこそはとて、まことに出家(すけ)せしめ奉りてしに侍る」
[ 二 ] 敬意を表わす。
① ( 尊敬を表わす語の上に付いて ) 尊敬の意を強める。平安時代以後の用法。
宇津保物語(970‐999頃)俊蔭「帝大きに驚かせ給て、感ぜしめ聞こしめすこと限りなし」
② ( 謙譲を表わす語とともに用いて ) 謙譲の意を強める。…し申しあげる。 大鏡(12C前)五「家貧ならん折は、御寺に申文を奉らしめんとなん、いやしき童部とうちかたらひ侍る」
[語誌]( 1 )使役の助動詞として上代から一般に用いられていた。平安時代に入ると、男性語として、もっぱら漢文訓読系の文章に用いられるようになり、仮名文学作品の「す・さす」と対立するに至る。
( 2 )漢文訓読語としては[ 一 ]の使役の意に限られるのに対して、変体漢文や仮名文学作品においては、平安時代(特に末期以降)から、[ 二 ]の敬語の用法をも生じている。
( 3 )中世に入ると、尊敬の用法はやがて衰退し、文章語として、使役表現に用いられるようになった。一、二段活用の動詞に付くとき、「せ」を介して、「見せしむ」「得せしむ」のようにすることが、中世から生じた。
広辞苑 助動詞 (活用は下二段型。付録「女動詞活用表」参照)動詞およびある種の助動詞の未然形に付く。奈良時代に広く用いられ、平安時代以降は主に漢文訓読文や漢文調の文章に用いられた。→す・さす。
①使役を表す。…させる。
万葉集20「あしひきの山行きしかば山人のわれに得しめし山つとそこれ」。
父の終焉日記「とみに病人を見せしむるに」(中世以降「見しむる」に代わって慣用された)
②多く「給ふ」と共に用いられ、尊敬の意を強める。…なさる。 源氏物語早蕨「お前によみ申さしめ給へ」。
源氏物語浮舟「びんなきこともあらば、おもく勘当せしめ給ふべきよしなむ仰言侍りつれば」
③謙譲の意を含む動詞に付いて、その意を強める。平安後期の用法。 大鏡道長「御寺に申し文を奉らしめんとなん」「皇太后宮にいかで啓せしめんと思ひ侍れど」
大言海 助動詞 (一)他ヲ使役シテ、 動作 (ワザ)()サスル意ノ助動詞。サス。ス。 神代紀、上「性好殘害、故(シム)(シラセ)根國
同、同 廿一 「此則神性雄健、 使 (シムル)(ナリ)(シカラ)也」
神武紀「因案劒攣弓、逼(シム)(オヒイレ)
繼體紀、七年九月、長歌「妹ガ手ヲ、我レニ纏カ 絁每 (シメ)、吾ガ手ヲバ、妹ニ纏カ 絁每 (シメ)
萬葉集、十三長歌「月夜見ノ、()タル 越水 (ヲチミヅ)、イ取リ來テ、君ニ(マツ)リテ、(ヲチ) 得之牟 (エシム)モノ」
同、十四 廿八 「岩ノ上ニ、イ懸カル雲ノ、カヌマヅク、人ゾオタバフ、イザ寐 之賣 (シメ)トラ」
「行カしむ」取ラしむ」受ケしむ」()しむ」
令・使
(二)轉ジテ、敬語ニ云フ助動詞。サス。 神代紀、下(イマシ)皇孫、 就而治焉 (イデマシテシラシムマシ)
萬葉集、十四 十一 「信濃()ハ、今ノ()リ道、苅リバネニ、足踏マ之牟ナ、沓 穿 ()ケ吾ガセ」
宇津保物語、祭使 廿七 「娘ニ、男アハスル心ハ、ヤモメナル人ノ、貧シクタヨリナクテ、親ノワヅラヒトアルニヨリ、スルニハアラズヤ、殿ノセしめ給フ如クニテハ、壻取ノ本意ナシ」

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最終更新:2024年10月19日 23:14