すく(透(自動詞))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 [ 一 ] 空間的、または時間的に、すきが生じる。
① すきまができる。空間的な余裕ができる。
今昔物語集(1120頃か)二六「能も不埋ければ、穴の底は透たる様にて」 透・空
② そなわっていたり、つまっていたりしたものが欠けてまばらになる。希少になる。 源氏物語(1001‐14頃)総角「歯はうちすきて、愛敬なげにいひなす女あり」
家(1910‐11)〈島崎藤村〉下「空(ス)いたところへ行って腰掛けた」
③ 肉がおちる。頬がたるむ。 京大二十冊本毛詩抄(1535頃)四「顔の上のひろさ程に頬も有を云ぞ〈略〉上へは広けれども頬がすいたれば悪ぞ」
④ 時間のあきができる。ひまになる。 恋を恋する人(1907)〈国木田独歩〉二「女中の手もすいたので或夕、大友は宿の娘のお正を占領して飲んで居たが」
⑤ 手抜かりがある。油断をする。 浮世草子・日本永代蔵(1688)三「観音信仰にはあらず是をすべき手だてさてもすかぬ男」
滑稽本・浮世床(1813‐23)二「女の事と欲ばりにゃア五分も透(スカ)ねへ」
⑥ つかえていたものがとれる。さっぱりする。 驟雨(1900)〈国木田独歩〉上「晴れゆく雨の名残を見送るほど胸のすくものはなく」
⑦ 空腹になる。 閑居友(1222頃)上「田かへしになんまかれりけるに、れいよりも、げにすきいりぬべくおぼえければ」
女難(1903)〈国木田独歩〉三「お前腹が減(ス)きはせんか」
[ 二 ] ( 透 ) 物のすきまからとおる。
① 物をとおして見える。すける。
宇津保物語(970‐999頃)内侍督「今さへやすきて見ゆらん夏衣ぬぎもかふべき秋の暮には」
源氏物語(1001‐14頃)若菜下「色はさをに白く美しげに、すきたるやうに見ゆる御膚つきなど」
② 物の間をとおる。 更級日記(1059頃)「風すくまじくひきわたしなどしたるに」
広辞苑 自動詞 ①ものの間にあきが生ずる。
㋐すきまができる。
源氏物語絵合「艶に―・きたる(じん)の箱に」。
「壁と柱の間が―・いている」
透く・空く
㋑欠けてまばらになる。 源氏物語総角「歯はうち―・きて愛敬なげに言ひなす女あり」
㋒内部のものが少なくなる。また、からになる。 玉塵抄14「露を吸うて腹中の―・いて空虚なをみてたぞ」。
「車内が―・いている」「腹が―・く」
㋓肉が落ちる。 玉塵抄18「人も足の裏の中ほどの―・いたが道をようあるくぞ」
㋔つかえがなくなる。さっぱりする、 「胸が―・く」
②《空》時間的・精神的にすきが生ずる。
㋐仕事がなくなる。ひまになる。
「じきに手が―・く」
㋑油断する。手ぬかりをする。 日本永代蔵3「さても―・かぬ男」
③《透》物のすきまから通る。
㋐光・風などが通りぬける。
源氏物語夕顔「みあかしの影、ほのかに―・きて見ゆ」。
宇治拾遺物語1「けはひにくからねばかきふせて風の―・く所にふせたり」
㋑物を通して向うのものが見える。すき通る。すける。 源氏物語賢木「(うすもの)の直衣、単衣を着給へるに―・き給へる肌つきましていみじう見ゆるを」。
「中が―・いて見える」
大言海 自動詞 (一)物ニ、(ヒマ)、生ズ。空隙、生ズ。(スキ)アリ。生罅 (アヒダ)、すく」
(二){物ヲ(トホ)リテ、影、見ユ。(光ニ、色ニ)透徹 源、三十四、下、若菜、下 七十七 「色ハ、 眞靑 (サヲ)ニ白ク、美シゲニ、すきタルヤウニ見ユル御肌ツキナド、世ニナク、ラウタゲナリ」
萬代集、十四、雜、一「鹽竈ノ、ウラ悲シクモ、見ユルカナ、霞ニすけル、蜑ノ釣舟」
(三){(マバラ)ニナル。稀疎 源、四十六、總角 廿八 「オソロシキ神ゾ()キ奉リツラント、齒ハ、打チすきテ、愛敬ナゲニ云ヒナス女アリ」
「枝ガすく」人込ミガすく」
(四)滯リナクナル。クツログ。明ク。 「腹ガすく」胸ガすく」
(五)(ヒマ)、生ズ。生暇 「仕事ガすく」手ガすく」
動詞活用表
未然形 すか ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 すき たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 すく べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 すく も、かも、こと、とき
已然形 すけ ども
命令形 すけ

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最終更新:2024年11月04日 18:22