すむ(澄・清)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞
四段
① 空気や液体などに濁りがなくなってきれいになる。和歌では「住む」にかけて用いることが多い。 続日本紀‐宝亀元年(770)三月・歌謡「淵も瀬も清くさやけし博多川千歳を待ちて須売(スメ)る川かも」
拾遺和歌集(1005‐07頃か)雑恋・一二五四「世とともに雨ふるやどの庭たつみすまぬに影は見ゆる物かは〈よみ人しらず〉」
澄・清
② 月の曇りが消えてはっきりする。 和泉式部日記(11C前)「その夜の月のいみじう明かくすみて」
③ 音や声がよく響きとおる。さえる。 彌勒上生経賛平安初期点(850頃)「世尊の声を発したまふときは〈略〉明かに朗かにして清(スミ)徹れり」
宇津保物語(970‐999頃)楼上下「ひびきすみ、声高きことすぐれたる琴(きん)なれば」
④ 邪念が消えて、心にけがれがなくなる。心に迷いがなくなって落ち着く。 源氏物語(1001‐14頃)帚木「思ひ立つほどは、いと心すめるやうにて世にかへりみすべくも思へらず」
⑤ 不正なことがなくなる。正義が行なわれる。 日蓮遺文‐南条兵衛七郎殿御書(1264)「清世と申してすめる世には、直縄のまがれる木をけづらするやうに、非をすて是を用る也」
⑥ 人柄、書体、色合いなど、落ち着いた品格をもつ。すっきりと、あかぬける。 源氏物語(1001‐14頃)梅枝「いといたう筆すみたるけしきありて、書きなし給へり」
増鏡(1368‐76頃)七「こまやかになまめかしう、すみたるさまして、あてにうつくし」
⑦ ひとけがなくなって静まる。また、気まずくてしんとする。 今昔物語集(1120頃か)三〇「家も澄(すみ)て人も無かりければ」
⑧ 筋道が明らかになる。 史記抄(1477)四「さらば以金受免とようだらば、義がすまうぞ」
⑨ 清音に発する。清音である。「濁る」に対していう。 徒然草(1331頃)一六〇「行法も、ほふの字をすみていふ、わろし。濁りていふ」
他動詞
下二段
① けがれをなくす。濁りを去ってきれいにする。 ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「モシ カタチヲ ヤツシ、ココロヲ sumete(スメテ)、ヨノ チリニ ケガサレザル ヒト スラ〔発心集〕」
② 筋道を明らかにする。 日葡辞書(1603‐04)「リヲ sumuru(スムル)〈訳〉道理を明らかにする」
広辞苑 自動詞
四段
浮遊物などがすっかり沈んで静止し、液体・気体などが透明になる意。
①にごりがなくなる。清くなる。
宇津保物語国譲中「行く水と今日見るどちのこの宿にいずれ久しと―・み(「住み」と掛ける)くらべなむ」。
「川の水が―・む」
澄む・清む
②曇りがなく明るく見える。 源氏物語槿「月いよいよ―・みて静かに面白し」。
源氏物語明石「をやみなかりし空のけしき名残なく―・みわたりて」。
「―・んだひとみ」
③楽器の音がさえて聞こえる。 宇津保物語楼上下「響―・み音高きことすぐれたる琴なれば」。
「―・んだ音」
④騒がしい動きなどがおさまって落ち着く。また、しらけてしんとなる。 今昔物語集28「人―・みて後、三人ながら車よりおりぬれば」。
著聞集4「満座興醒めてけり。あまりに―・みて侍りければ、有安が座の末にありけるに、入道朗詠すべきよしをすすめければ」
⑤けばけばしくなく落ち着いた感じである。 源氏物語常夏「この御さまは…いとあてに―・みたるものの、なつかしきさま添ひて」。
源氏物語梅枝「いといたう筆―・みたる気色ありて書きなし給へり」
⑥迷いや汚れがない。いさぎよい。悟っている。 源氏物語帚木「思ひ立つほどはいと心―・めるやうにて、世にかへりみすべくも思へらず」
⑦平然とする。すましこむ。 更級日記「舟も寄せず、うそぶいて見まはし、いといみじう―・みたるさまなり」
⑧条理がはっきりしている。道理が明らかである。 玉塵抄8「理の―・みかね心得がたい所をときわくるを分疏と云ふぞ」。
日葡辞書「リ(理)ノスマヌコトヂャ」
⑨(濁音を「にごる」というのに対して) 清音 (せいおん)である。 玉塵抄11「上界…経文には上をにごるぞ。詩文では上を―・むなり」
他動詞
下二段
①にごり・よごれをなくす。
②条理をはっきりさせる。道理を明らかにする。 日葡辞書「リ(理)ヲスムル」
大言海 自動詞
四段
(スズ)しき意〕
(一){濁、無クナル。(ゴミ)ナク、淨ク、 透明 (スキトホ)ルヤウニナル。((ニゴ)るニ對ス)
源、廿六、常夏「底淸クすまヌ水ニ宿レル月ハ、曇無キヤウノ、イカデカ有ラン」
「水、すむ」酒、すむ」
澄・淸
(二){曇ナク明ラカナリ。 源、十三、明石 廿 「月モ、入ル方ニナルママニ、すみマサリテ」
同、同 十四 小止 (ヲヤミ)ナカリシ空ノ 氣色 (ケシキ)、名殘無クすみワタリテ」
(三){他ノ音ヲ雜ヘズ、冱エテ聞ユ。 源、四十五、椎本「物ノ音、すみマサル心チシテ」
永久百首「笛竹ノ、ヨヲサヘ月ヤ、照ラスラム、空ニモ聲ノ、すみノボル哉」
(四){物靜カニ、落チ着ク。クスム。 源、三十五、柏木 三十八 「物深ウナリヌル人ノ、すみ過ギテ」
同、廿八、野分 十?二 「ケダカク、すみタル 氣色 (ケハヒ)、アリサマヲ見ルニモ」
同、廿六、常夏 十九 「イト(アテ)ニ、すみタル物ノ、ナツカシキ狀、添ヒテ」
同、二、帚木 十三 「思ヒ立ツ程ハ、イト、心すめルヤウニテ、世ニ、カヘリミスベクモ思ヘラズ」
(五)假名ノ音ニ、淸音ナリ。卽チ、濁音、半濁音ナラズ。(語法指南ノ、假名ノ條ヲ見ヨ)
動詞活用表
未然形 すま ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 すみ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 すむ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 すむ も、かも、こと、とき
已然形 すめ ども
命令形 すめ
動詞活用表
未然形 すめ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 すめ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 すむ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 すむる も、かも、こと、とき
已然形 すむれ ども
命令形 すめよ

検索用附箋:自動詞四段
検索用附箋:他動詞下二段

附箋:下二段 他動詞 四段 自動詞

最終更新:2024年11月17日 21:06