せく(塞)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ① 水の流れをせきとめる。 播磨風土記(715頃)揖保「指櫛を以て其の流るる水を塞(せき)て」
古今和歌集(905‐914)哀傷・八三六「瀬をせけば淵となりてもよどみけりわかれをとむるしがらみぞ無き〈壬生忠岑〉」
塞・堰
② 涙の出るのをおしとどめる。涙をこらえる。 源氏物語(1001‐14頃)玉鬘「御方ははやうせ給にきと言ふままに二三人ながらむせかへりいとむつかしくせきかねたり」
苔の衣(1271頃)四「こぼれそめぬる涙はえとめもあへず、せきがたげなり」
③ 物事の進行や人などの行動を妨げる。 播磨風土記(715頃)神前「勢賀(せか)と云ふ所以は、品太天皇此の川内に狩したまひき。猪・鹿を多く此処(ここ)に約(せき)出だして殺しき。故、勢賀(せか)と曰ふ」
大川端(1911‐12)〈小山内薫〉三〇「俺のやうな者を客にしたって、どうせ碌な事はないとか何とか思ったんだ。あいつが俺を堰(せ)いたんだ」
④ 男女の仲を妨げる。互いに思い合う男女の仲を故意にさえぎりへだてる。 評判記・寝物語(1656)一八「其上、あまりせけば。せきてのぶげんより、せかれてふけんなれば。此けいせい、みかへ申物也」
浄瑠璃・心中天の網島(1720)上「紙屋治兵衛ゆへぢゃとせくほどにせくほどに、文の便も叶(かな)はぬやうに成やした」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「他でも無い、此頃叔母がお勢と文三との間を関(セク)やうな容子が徐々(そろそろ)見え出した一事で」
広辞苑 他動詞 ①さえぎりへだてる。ふさぎとめる。せきとめる。 落窪物語2「牛苦しげにて、え上らねば、しりの御車共―・かれて、とどまりがちなれば」。
平家物語4「馬や人に―・かれて、さばかり早き宇治河の水は上にぞ湛へたる」
塞く・堰く
②相思の仲を妨げて逢わせないようにする。 万葉集14「ゐ寝てましもの―・くと知りせば」
大言海 他動詞 ()ヲ活用ス〕
(一)狹クシテ、トホス。(關モ、往來ノ人ヲ、徑ニ(アフ)レサセズ、其所ノミ通ス意ナリ)
眞名本、伊勢物語「 水堰川 (ミヅセクカハ)ノ、蜘蛛手ナレバ」
(二)閉ヂ塞グ。防ギトドム。フサグフタグササフセギル 萬葉集、二 三十三 「飛鳥川、(シガラミ)渡シ、 塞益 (セカマセ)バ、流ルル水モ、ノドニカアラマシ」
源、十五、蓬生「狐、云云、人氣ニコソ、サヤウノモノモせかレテ、影隱シケレ」
古今集、十一、戀、一「足引ノ、山下水ノ、木隱レテ、(タギ)ツ心ヲ、せきゾカネツル」
(三)遮リテ、人ニ會ハシメズ。 枕草子、六、五十八段、あはれなる物「思ヒカハシタル若キ人ノ中ニ、せく方アリテ、心ニシモ任セヌ」
「思ヒアヒタル仲ヲせく」
動詞活用表
未然形 せか ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 せき たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 せく べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 せく も、かも、こと、とき
已然形 せけ ども
命令形 せけ

検索用附箋:他動詞四段

附箋:他動詞 四段

最終更新:2024年12月01日 16:31