せむ(迫・逼)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ぎりぎりに近寄る。近づく。せまる。→せめて 日本霊異記(810‐824)中「高名華裔(くゎえい)に振ふと雖も、妖災窘(セムル)日には帰(よ)る所无く〈国会図書館本訓釈 窘 セムル〉」
山家集(12C後)中「山川のみなぎる水の音聞けばせむる命ぞおもひ知らるる」
迫・逼
[補注]( 1 )自動詞は「せまる」と同語源でほとんど同じように用いられたが、中世以降、もっぱら「せまる」に移行したかと思われる。なお、「色葉字類抄」には「逼 セム」と「迫 セマル」の両形が見える。
( 2 )他動詞は「せめる(責)」「せめる(攻)」の二項に示した。
広辞苑 自動詞 (「()し」と同源)
①近づき寄る。おしつまる。迫る。
源氏物語若菜下「月々とどこほることしげくて、かく年も―・めつれば」。
山家集「山川のみなぎる水の音きけば―・むる命ぞ思ひ知らるる」
迫む・逼む
つまる。窮屈になる 大鏡兼家「御前にて御したうづのいたう―・めさせ給ひけるに、心地もたがひて」
③入りこむ。 保元物語「下野守の冑の星を射けづりて、余る矢が法荘厳院の門の方立に 箆中 (のなか)―・めてぞ立つたりける」。
字鏡集「込、コモル・セム」
他動詞 間をせまくする。ぴったりしめつける。 平家物語2「黒糸縅の腹巻の白金物打つたる胸板―・めて」
大言海 自動詞 ()ヲ活用ス〕
セマル。セバマル。ツキツマル。
山家集(西行)、下「山川ノ、濁ル水ノ、音聞ケバ、せむる命ゾ、思ヒ知ラルル」
古事記、上 五十五 「逃去、故追往而、(セメ)(イタリ)科野國洲羽海
源、三十四、下、若菜、下 百二 「月月、滯ル事繁クテ、斯ク、年モせめツレバ、エ、思ヒノ如クモ 爲敢 (シア)ヘズ」
同、七、紅葉賀 廿三 「引キ放チテ出デ給フヲ、せめテ及ビテ」
古今集、十九、誹諧「枕ヨリ、(アト)ヨリ戀ノ、せめ來レバ、セムカタナミゾ、床中ニ居ル」
後撰集、七、秋、下「風ノ音ノ、限リト秋ヤ、せめツラム、吹キ來ル每ニ、聲ノワビシキ」
小町集「イトせめテ、戀シキ時ハ」
人丸集「人ヲ戀ヒ、せめテ淚ノ、コボルレバ」(せめてノ條、見合ハスベシ)
迫・逼
動詞活用表
未然形 せめ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 せめ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 せむ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 せむる も、かも、こと、とき
已然形 せむれ ども
命令形 せめよ

検索用附箋:自動詞下二段
検索用附箋:他動詞下二段

附箋:下二段 他動詞 自動詞

最終更新:2024年12月08日 18:35