そこ(底)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 海・池・川などくぼんだ地形の下の部分。また、器物などの下を構成する部分。その内側の面や下側の表面をいうこともある。 古事記(712)上「海塩(うしほ)に沈み溺れたまひき。故、其の底(そこ)に沈み居たまひし時の名を、底度久御魂〈度久の二字は音を以ゐる〉と謂ひ」
徒然草(1331頃)三「万にいみじくとも、色このまざらん男は、いとさうざうしく、玉の巵(さかづき)の当(そこ)なきここちぞすべき」
② 水などがたたえられているとき、また、物が積み重ねられたりしているとき、その下の方の部分。川や海などの下の方。 土左日記(935頃)承平五年二月一一日「あるひと、このやなぎのかげの、かはのそこにうつれるをみてよめるうた」
③ 天に対して、地をいう。また、地表より下の奥深い地中。上代では、この世(中つ国)をはさんで、天に対する、地中の国をいう称。 「底つ磐根」
源氏物語(1001‐14頃)明石「地のそことほるばかりの氷(ひ)降り」
④ きわまるところ。きわみはて。また、ぎりぎりのところ、限度。限界。また見通しや理解が及ぶ限度。 平家物語(13C前)一二「是は底もなき不覚仁にて候ぞ」
こゝろ(1914)〈夏目漱石〉上「此問答は私にとって頗る不得要領のものであったが、私は其時底迄押さずに帰って仕舞った」
⑤ 奥深いところ。 千載和歌集(1187)夏・一五七「郭公なほ初声をしのぶ山夕ゐる雲のそこに鳴くなり〈守覚法親王〉」
⑥ 奥深くて、外から容易にうかがうことのできない物事の極致。蘊奥(うんのう)。また、物事の奥にある本質的なもの。 今物語(1239頃)「近ごろ和歌の道ことにもてなされしかば、内裏仙洞摂政家何れもとりどりにそこをきはめさせ給へり」
⑦ 人に見せない、心の最も奥の部分。真実のひそむところ。しんてい。しんそこ。 源氏物語(1001‐14頃)若菜下「もてなしなど、気色ばみ恥づかしく、心のそこゆかしきさまして」
⑧ そのものが有する真実の力量、能力。 源平盛衰記(14C前)三六「義経が乗たる大鹿毛(かげ)は、〈略〉鎌倉殿のたびたる薄墨にも底(ソコ)はまさりてこそ在るらめ」
⑨ 取引市場で、相場の下落の極点をいう。 〔大坂繁花風土記(1814)〕
語素 名詞、形容詞などに付いて、表面的なものではなく、「真実の」「至上の」「奥底の」などの意を添える。「底意(そこい)」「底至(そこいたり)」「底寒い」「心底(しんそこ)」など。
広辞苑 名詞 ①凹んだものや容器の下の所。 万葉集1「浅き 阿胡根 (あごね)の浦の」。
「鍋の―」
②物体の下面。底面。また、集積したものの下層部。 「荷の―」
③天に対して地の称。また、地面より深い所。地底。 源氏物語明石「地の―とほるばかりの()降り」
④物事の極まる所。きわみはて。限り。 「―知れぬ知略」
⑤奥まって隠れたところ。心の奥。また、 蘊奥 (うんのう) 源氏物語若菜下「心の―ゆかしきさまして」。
「わが胸の―には」
⑥そのものの具有している実力。真の力量。 盛衰記36「鎌倉殿のたびたる薄墨にも―はまさりてこそあるらめ」
大言海 名詞 ()()ノ約、(ソコ)ハ、(トコ)ト通ズ、川(ソコ)、川(トコ)。心の(ソコ)、心の(トコ)ノ如シ〕
(一){(クボ)ミタル內ノ、下ニ當ル處。
竹取物語「楫取、答ヘテ申ス、 幾許 (ココラ)、船ニ乘リテ罷リ步クニ、マダ斯クワビシキ目ヲ見ズ、御船、海ノ底ニ入ラズハ、(カミ)、落チカカリヌベシ」
徒然草、三段「色好マザラン男ハ、云云、玉ノ杯ノ(ソコ)ナキ心地ゾスベキ」
(二){天ニ對シテ、地ノ稱。 平野祭祝詞「底津石根」
(三){上ニモ、下ニモ、橫ニモ、至リ極マル處。キハミソコヒソキヘ際涯 萬葉集、四 四十七 「思ヒ遣ル、 便 (スベ)ノ知ラネバ、 片椀 (カタモヒ)ノ、底ニゾ吾レハ、戀ヒナリニケル」
夫木抄、十八「老ノそこ」
(四)奧深ク、隱レタル處。祕奧。 千載集、三、夏「郭公、ナホ初聲ヲ、忍ブ山、夕居ル雲ノ、そこニ鳴クナリ」
今物語「近頃、和歌ノ道、殊ニモテナサレシカバ、內裏、仙洞、攝政家、イヅレモ、取リ取リニ、そこヲ極メサセ給ヘリ」
盛𮕩記、三、澄憲祈雨事「上ニハ(ワラヒ)ケレ共、底 苦苦 (ニガニガ)シキ景氣也」
同、十四、山門變改事「山門ノ衆徒、底耻シクコソ思ケメ」
「心ノそこ」考ヘノそこ」そこ()」そこ(シン)」そこ意地」そこ氣味」
(五)人ノ具有スル、實質ノ力量。ソコヂカラ 盛𮕩記、三十六、義經赴鵯越事、義經ノ乘馬「鎌倉殿ノ()ビタル薄墨ニモ、底ハ優リテコソアルラメ」

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最終更新:2024年12月21日 20:04