そで(袖)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 衣服で、身頃(みごろ)の左右にあって、腕をおおう部分。和服には、袂(たもと)の長さや形によって、大袖、小袖、広袖、丸袖、角袖、削(そぎ)袖、巻袖、元祿袖、振袖、留袖、筒袖などの種類があり、袂を含んでいうことがある。洋服には、長短により長袖、七分袖、半袖などの別があり、袖付や形によっても種々の名称がある。ころもで。衣袖(いしゅう)。 古事記(712)下・歌謡「白妙の 蘇弖(ソテ)着備ふ 手胼(たこむら)に 虻掻き着き」
源氏物語(1001‐14頃)夕顔「袖を御顔におしあてて泣きたまふ」
② 鎧(よろい)の付属具。綿上(わたがみ)に付けて、手楯(てたて)の代用とするもの。通常、袖の緒(お)で胴に結びとめる。左を射向(いむけ)の袖、右を馬手(めて)の袖という。その大小、形状により、大袖、中袖、小袖、広袖、壺袖(つぼそで)、丸袖、置袖、最上袖(もがみそで)などの種類がある。よろいのそで。鎧袖(がいしゅう)。 吾妻鏡‐文治五年(1189)八月一一日「義盛之所射箭、中于国衡訖、其箭孔者、甲射向之袖二三枚之程、定在之歟」
③ 牛車(ぎっしゃ)の部分の名。車の箱の出入り口の左右にあって、前方または後方に張り出した部分。前方にあるのを前袖、後方にあるのを後袖(あとそで)、また、表面を袖表(そでおもて)、あるいは外(そと)、内面を裏、あるいは内(うち)と呼ぶ。 栄花物語(1028‐92頃)日蔭のかづら「その車の有様言へばおろかなり。〈略〉そでには置口にて蒔絵をしたり」
④ 文書(もんじょ)や書巻の初めの端の余白となっている部分。後の端の部分は奥という。 江家次第(1111頃)四「申文等可付今夜拝任官於申文袖、其上合点」
⑤ 建造物、工作物の両わきの部分。翼。また、主要部のわきに付属する小型のもの。「袖石」「袖柱」「袖塀(そでべい)」「袖垣(そでがき)」など。
⑥ 鯨(くじら)の部分の名。鯨の子宮の両わきに①のようにはり出した部分。食用とする。 〔鯨肉調味方(1832)〕
⑦ 舞台の両わきの部分。歌舞伎の舞台では、左右の大臣柱より外の部分にあたり、その前方は、点床(ちょぼゆか)および下座(げざ)となる。また、ここは大道具の組み立てなどに使われるので、そこを観客の目からかくすための張り物、あるいは舞台正面の書割(かきわり)の両端が切れるのを防ぎ、連続感を与えるための張り物や切出しもいう。ふところ。囲(かこい)。あてもの。見切(みきり)。 浅草紅団(1929‐30)〈川端康成〉一一「踊子達は舞台の袖(ソデ)で、乳房を出して衣裳替へする程、あわただしい暗転だ」
⑧ 「そでかんばん(袖看板)」の略。 戯場訓蒙図彙(1803)一「大名だいかんばん出る。つづいてやぐら下 袖 まねき〈略〉役割其外出る」
⑨ 机の両わき、または片わきの引出しや開きの付いた物入れなどを作り付けた部分。
⑩ ( 身に対する付属物の意から ) おろそか。疎略。いいかげん。ないがしろ 堤中納言物語(11C中‐13C頃)虫めづる姫君「蝶になりぬれば、いともそでにて、あだになりぬるをや」
⑪ 富籤(とみくじ)などで当たり籤の前後の番号。本籤(ほんくじ)に対してこれも当たりとして少額の賞金が出ることがある。前後賞。 洒落本・契国策(1776)南方「上けしなに矢を二本落とした。こりゃゑいけんとくだとおもって半五郎を付けたら丸一がみに出て、袖にもはなにもならなんだ」
⑫ 小袖のこと。 俳諧・独吟一日千句(1675)四「うたひ初とてまかり立声 広蓋に匂ひをふくむ花の袖」
⑬ 振袖のこと。また特に、振袖新造(しんぞう)をいう。 雑俳・柳多留‐四八(1809)「本鬮が三歩で袖が一歩也」
⑭ 「そでとめ(袖留)」の略。 雑俳・柳多留‐三(1768)「しんぞうの袖も思へばこわいもの」
[補注]語源について、「そて(衣手)」とする説があるが、上代特殊仮名遣では、「そ(衣)」は乙類音で、「そで」の「そ」は甲類音であるから疑問。
広辞苑 名詞 ( 衣手 (そで)の意。奈良時代にはソテとも)
①衣服の身頃の左右にあって、両腕をおおう部分。
古事記下「白妙の―着備ふ」。
「―をまくる」
たもと 源氏物語花宴「ふと―をとらへたまふ」
(よろい)の付属品。左右一対から成り、肩の上をおおい、矢・刀剣を防ぐもの。 鎧袖 (がいしゅう)
牛車 (ぎっしゃ) 輿 (こし)などの前後の出入口の左右の部分。
⑤門・戸・垣・舞台などの、左右の端の部分。
⑥文書の初めの余白の所。奥に対していう。(はし)
⑦洋装本のカバーや帯の、表紙の内側に折り込んだ部分。
大言海 名詞 衣手 (ソデ)ノ義ト云フ、或ハ、()(イデ)ノ約カ〕
(一){衣ノ左右ノ、手ヲ入ルル所ノ總名。(上世ノ下民ハ、筒袖ナリ)(カヒナ)ニ當ル所ヲ、たもとトス。
倭名抄、十二 廿 衣服具「袖、曾天、所以受 一レ 手也」
字鏡 廿八 「袂、袖末也、曾氐」
名義抄「袂、ソデ、タモト」
續紀、四、和銅元年閏八月「制、自今以後、衣 褾口 (ソデグチ)、闊八寸已上、一尺已下、隨人大小之」
彈正臺式「凡、衣袖口闊、無高下、同作一尺二寸已下
(二)卷物、又、文書ノ、初ノ(ハシ)。(文書ノ初ニ白ク殘シタルハ、衣ノ端ナル袖ニ似タレバ、云フ) 倭名抄、五 廿四 文書具「褾帋、褾袖端也」
江家次第、四、除目直物「可付今夜拜任官於申文袖、其上合點」
「そで(ガキ)」そで判」
(三)鎧ノ具。頸ヨリ懸ケテ、肩ヲ被フモノ。肩甲 保元物語、一、軍評定事「淸盛ナドガへろへろ矢、何程ノ事カ候フベキ、鎧ノ袖ニテ拂ヒ、蹴散シテ捨テナン」
(四)牛車、輿ナドノ口ノ、左右、前後ノ所ノ名稱。前方ニアルヲ 前袖 (マヘソデ)、後方ニアルヲ 後袖 (アトソデ)ト云フ。又、袖ノ內面ヲ(ウラ)、又ハ(ウチ)ト云ヒ、其外面ヲ袖(オモテ)ト云フ。 榮花物語、十、日蔭蔓「車ノア サマ、云云、袖ニハ、置口ニテ蒔繪ヲシタリ」
(五)淚ヲ拭ヒテ、浸リタル袖。 新勅撰集、十六、雜、一「袖ノ波」
「そでノ雨」そでノ水」

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最終更新:2024年12月22日 17:21