な(莫・勿)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 副詞 禁止の意を表わす。次の三つの型がある。→語誌(3)。
① 下に動詞の連用形を伴って用いる。
※万葉(8C後)一一・二六六九「吾(わが)背子が振り放(さ)け見つつ嘆くらむ清き月夜(つくよ)に雲莫(な)たなびき」
② 下に「動詞の連用形+そ」を伴って用いる。→な…そ。
③ 下に「動詞の連用形+そね(そよ)」を伴って用いる。 ※播磨風土記(715頃)賀毛・歌謡「愛(うつく)しき 小目(をめ)の小竹葉に 霰降り 霜降るとも 奈(ナ)枯れそね」
※万葉(8C後)一〇・二〇九七「雁がねの来鳴かむ日まで見つつあらむ此の萩原に雨勿(な)降りそね」
※万葉(8C後)一七・四〇一一「奈(ナ)恋ひそよとそ 夢(いま)に告げつる」
[語誌](1)語源に関しては、ク活用形容詞「なし」の語幹、あるいは打消の助動詞「ず」の未然形に想定される「な」につながる否定の語といわれる。従って右の諸形式にみられる命令的性格は、下にくる動詞の連用形によるものと考えられる。また「な」を「なかれ」との関係において考える説もある。
(2)品詞については副詞とするのが一般であるが、他に係助詞説、副助詞説、助動詞説などがある。
(3)三つの型のうち、①および③は中古には見られなくなり、②の「な…そ」の型と、終助詞による「…な」の形が中古以後に引き継がれる。
広辞苑 副詞 ①動詞の連用形(カ変・サ変では古い命令形の「こ」「せ」)の上に付けて禁止の意を表す。…するな。 万葉集4「吾が背子は物―思ほし事しあらば火にも水にも吾なけなくに」
②「な…そ」の形で動詞の連用形(カ変・サ変では古い命令形の「こ」「せ」)を挟んで、相手に懇願してその行動を制する意を表す。禁止の終助詞「な」よりも意味が婉曲である。どうか…しないでおくれ。 万葉集2「放ち鳥荒び―行きそ君まさずとも」。
源氏物語夕顔「あが君、生きいで給へ。いみじき目―見せ給ひそ」
大言海 副詞 動作ヲ禁ジ止ムル語。用法、二樣アリ。動詞ノ下ニ用ヰルモノ。 古今集、十三、戀、三「戀シクバ、シタニヲ思ヘ、紫ノ、根ズリノ衣、色ニ出ヅなユメ」
同、十四、戀、四「忘レナン、我ヲ恨ムな、時鳥、人ノアキニハ、アハムトモセズ」
拾遺集、十六、雜、春「殿守ノ、トモノ宮ツコ、心アラバ、コノ春バカリ、朝ギヨメスな」
(カク)ト思フな」恩ヲ忘ルな」
莫・勿
又、そト云フ語ト共ニ、他ノ動詞ヲ挾ミテ用ヰルモノ。 萬葉集、三 十七 (ウマ)ナイタク、打チテ莫行キそ、氣ナラベテ、見テモワガユク、志賀ニアラナクニ」
同、十 十三 「春去レバ、先ヅサキクサノ、サキクアラバ、後ニモアハム、 莫戀 (ナコヒソ) 吾妹 (ワギモ)
同、十一 廿七 「ヲハリ田ノ、坂田ノ橋ノ、クヅレナバ、ケタヨリ行カム、 莫戀 (ナコヒソ) 吾妹 (ワギモ)
鎭火祭祝詞「(ヨハ)七夜、(ヒル)七日、吾ヲ奈見タマヒそ」
「な忘レそ」な恨ミそ」な思ヒそ」

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最終更新:2024年05月10日 21:03