たく(綰)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ① 髪をかきあげたばねる。 万葉集(8C後)二・一二三「多気(タケ)ばぬれ多香(タか)ねば長き妹が髪この頃見ぬに掻きれつらむか」
② 力いっぱい舟を漕ぐ。全力で漕ぐ。 万葉集(8C後)七・一二六六「大船を荒海(あるみ)に漕ぎ出でや船多気(タケ)吾が見し子らがまみはしるしも」
③ 網などをたぐりあげる。 古今和歌集(905‐914)雑下・九六一「思ひきやひなのわかれにおとろへてあまのなはたきいさりせんとは〈小野篁〉」
④ ( 「だく」とも ) 馬の手綱(たづな)をあやつる。手綱をとる。 万葉集(8C後)一九・四一五四「石瀬野に 馬太伎(ダキ)行きて 遠近(おちこち)に」
[補注]手(て)を動詞化した語で、手を用いて何かをする意を表わすと考えられる。「頂髪(たきふさ)の中より、設(ま)けし弦を採り出して」〔古事記‐中〕、「四天王の像を作て、頂髪(たきふさ)に置て、誓を発て言」〔書紀‐崇峻即位前〕の「たきふさ」は、手を用いて髪をあげて束ねたものの意。また、「未通女(をとめ)らが織る機の上をま櫛もち掻上(かか)げ栲嶋(たくしま)波の間ゆ見ゆ」〔万葉‐一二三三〕は、機を織る時乱れた糸を櫛で整える意か。なお「手寸十名相植ゑしく著(しる)く出で見ればやどの初萩咲きにけるかも」〔万葉‐二一一三〕の「手寸十名相」には定訓がないが、「たきそなへ」と訓み「たく」の一例と見る説もある。
広辞苑 他動詞 ①髪を掻き上げる。 万葉集2「―・けばぬれ―・かねば長き妹が髪」 綰く
②手綱をあやつる。 万葉集19「 石瀬野 (いわせの)に馬だき行きて」
③舟を漕ぐ。 万葉集7「大船を 荒海 (あるみ)に漕ぎ出 弥船 (やふね)―・けわが見し児らが 目見 (まみ)(しる)しも」
大言海 他動詞 ()ヲ活用セル語カ〕
(一)手ヲ上下左右前後ニ、一定ノ動作ニ搔キ動カス。取リ上グ。(タガ)ネ搔キ上グ。
萬葉集、十一 十七 「振別ノ、髮ヲ短ミ、若草ヲ、髮ニ 多久 (タク)ラム、妹ヲシゾ思フ」
同、九 三十五 長歌「 小放 (ヲバナリ)ニ、髮 多久 (タク)マデニ、並ビ居ル」
同、二 十六 多氣 (タケ)バヌレ、 多香 (タカ)ネバ長キ、妹ガ髮、 此來 (コノゴロ)見ヌニ、ミダリツラムカ」(梳ルトテ手ヲ動カス)
同、二 廿六 「人皆ハ、今ハ長シト、 多計 (タケ)トイヘド、君ガ見シ髮、亂レタリトモ」
古事記、上 四十一 (ムナ)見ル時、 袖多藝 (ハタタキ)モ、()(フサ)ハズ」
(二)手綱ヲ搔イ繰リテ()ル。 六帖、三「伊勢ノ海ノ、海人ノたく繩、繰リシアヘバ、人ニ讓ラムト、我ハ思ハナクニ」
萬葉集、十九 十一 長歌「 石瀨野 (イハセノ)ニ、馬 太伎 (タキ)行キテ、ヲチコチニ」(手綱シテ、馬頭ヲ引上グ)
古今集、十八、雜、下「思ヒキヤ、鄙ノ別ニ、オトロヘテ、海人ノ繩たき、(イサリ)セムトハ」(手繰ルトテ手ヲ動カス)
(三)骨折リテ漕ギテ()ル。 土佐日記、二月五日「住吉ノワタリヲ漕ギ行ク、云云、ユクリナク風吹キテ、たけドモたけドモ、シリヘシゾキニシゾキテ」(漕グトテ手ヲ動カス)
(四)掘ル。 萬葉集、十 三十六 手寸 (タキ)備ヘ、植ヱシモシルク、出デ見レバ、宿ノワサ萩、咲キニケルカモ」(掘ルトテ手ヲ動カス)
動詞活用表
未然形 たか ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 たき たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 たく べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 たく も、かも、こと、とき
已然形 たけ ども
命令形 たけ

検索用附箋:他動詞四段

附箋:他動詞 四段

最終更新:2025年01月19日 16:34