辞書 | 品詞 | 解説 | 例文 | 漢字 |
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日本国語大辞典 | 助動詞 |
( 活用は「(たく)、たから・たく、たかり・たし・たき、たかる・たけれ」。動詞および助動詞「れる」「られる」「せる」「させる」(文語は「る」「らる」「す」「さす」)の連用形に下接する ) ① 話し手の願望を表わす。 (イ) 話し手自身の行動や状態の実現に対する願望を表わす。…すること、または、…であることを望んでいる。 |
栄花物語(1028‐92頃)浅緑「今朝はなどやがて寝暮し起きずして起きては寝たく暮るるまを待つ」 千五百番歌合(1202‐03頃)七七一番「いざいかに深山の奥にしをれても心知りたき秋の夜の月〈藤原季能〉〈略〉左は知りたきといへる雖 レ 聞 二 俗人之語 一 未 レ 詠 二 和歌之詞 一 歟」 |
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(ロ) 話し手を中心として、第三者をも含めた人々の願望を表わす。誰もが…すること、…であることは望ましい。 | 平松家本平家(13C前)一「同じ遊びの者と成らば誰もみな阿の様にこそ有りたけれ」 | |||
② 聞き手または第三者の願望を表わす。間接的な引用や推定などの形をとることもある。…すること、または、…であることを望んでいる。 |
梁塵秘抄(1179頃)二「琴(きむ)のことの音聴きたくは、北の岡の上に松を植ゑよ」 歌舞伎・一心二河白道(1698)一「おれを地獄へやりたいか極楽へやりたいか、こなた次第ぢゃ」 |
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③ 聞き手の行為に対する願望を表わす。「れ・られ」「なされ」など敬語に下接する。文章語の用法。…してほしい。…であってほしい。 | 「この件について再検討されたい」 | |||
[語誌]( 1 )語源は「いたし(甚)」であるといわれ、「飽きいたし」が「飽きたし」、「眠(ねぶ)りいたし」が「眠たし」というように動詞連用形と熟合したものや、「労(らう)いたし」が「労たし」というように名詞と熟合したものなどの語尾が独立したものとされる。 ( 2 )上代にも存在したともいわれるが、疑わしい。最古の例とされる「万葉‐九六五」の「凡(おほ)ならばかもかもせむを畏(かしこ)みと振り痛(たき)袖を忍びてあるかも」の「たし」は、振ることが甚しいとも解釈できる。 ( 3 )中古末期から、それまでの「まほし」に代わって用いられるようになった。その時期には、「まほし」が雅語的で、「たし」が俗語的なものと感じられていたようで、①(イ)の挙例「千五百番歌合」の定家の判詞などにも、この意識がうかがわれる。 ( 4 )口語「たい」の連用形「たく」の音便形「とう(たう)」は、中世から盛んに用いられているが、一般的な現代口語では「…とうございます」「…とう存じます」など、慣用的な用法に限られる。 ( 5 )願望の対象を表わす表現として、口語では「…が…たい」と「…を…たい」という二つが併用されている。この二つの形はすでに室町時代に見られる。 |
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広辞苑 | 助動詞 | (活用は形容詞型。付録「助動詞活用表」参照)動詞型に活用する語の連用形に接続して、願望を表す。平安時代後期に使われ出した語。鎌倉時代以降は徐々に「まほし」と代わって行った。 |
千五百番歌合「いさいかに深山の奥にしほれても心知りたき秋の夜の月…左知りたきといへる、俗人の語に聞くといへども、未だ和歌の詞に詠まざるか」。 徒然草「家にありたき木は、松、さくら」。 平家物語10「御返りごとをも承りたう候ひしかども」 |
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大言海 | 形容詞 |
動詞ニ |
月詣集「キキたしヤ、宿ヲタドリテ、ナクナミダ、ワスレ水トヤ、ナガレユクラン」 萬葉集、六 廿三 「オホナラバ、カモカモセムヲ、 千五百番歌合「イザ如何ニ、深山ノ奧ヲ、尋ネテモ、心知リたき、秋ノ夜ノ月」 徒然草、第一段「アリたき事ハ、マコトシキ文ノ道、作文、和歌」 忠見集「夢ヲコソ、寐覺ノ程ニ、語リケメ、見たくマデニモ、ナリニケルカナ」 |
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