たむ(訛)

日本国語大辞典 自動詞 ( 古くは「たむ」か。活用は一般にマ行四段とするが、マ行上二段か。→補注 )
① ( 迂 ) ことば、文などがまわりくどいさまである。屈折する。また、動作などがものなれない。だぶ。
大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃)「其の迂(タミタル)辞、瑋(あやし)き説は、多く翦弃に従かへり」
浮世草子・新竹斎(1687)四「だみたる恋を柴や町やかるるたねと知ながら」
訛・迂
② ( 訛 ) ことばがなまる。また、音声がにごる。だぶ。 拾遺和歌集(1005‐07頃か)物名・四一三「吾妻にて養はれたる人の子は舌だみてこそ物はいひけれ〈よみ人しらず〉」
浄瑠璃・国性爺後日合戦(1717)三「奥山家辺土は詞だみたるに」
③ 天候などがくずれる。くもる。 浄瑠璃・持統天皇歌軍法(1713)四「空さへ泥(ダミ)てふくる夜の、月をむかふに更たれば」
[補注]語源は「たむ(回)」で、ここから、文などの屈折する意、さらにことばがなまる意が生じたものか。とすれば、活用は本来上二段だっただろうと思われる。
辞書 品詞 解説 例文 漢字
広辞苑 自動詞 (後には「だむ」「だぶ」とも)言葉がなまる。発音がにごる。 源氏物語常夏「こはごはしく、言葉―・みて」 訛む
大言海 自動詞 〔舌たむノ略、故ニ濁ル〕
物言ヒ(ナマ)ル。コトバダム。
字類抄「訛、タミタリ」
源、廿二、玉鬘「ヲカシク書キタリト思ヒタル詞ゾ、イト、たみタリケル」
同、四十四、橋姬 十七 氣色 (ケハヒ)卑シク、詞たみテ」
山家集、下「鶯ハ、田舍ノ谷ノ、巢ナレドモ、たみタル聲ハ、鳴カヌナリケリ」
今、專ラ、濁リテ、だむト云フ。 拾遺集、七、物名「(アヅマ)ニテ、養ハレタル、人ノ子ハ、舌だみテコソ、物ハイヒケレ」
風雅集、序「だみタル言ノ葉ニテ、思得タル心バカリヲ言ヒアラハス」
動詞活用表
未然形 たま ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 たみ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 たむ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 たむ も、かも、こと、とき
已然形 ため ども
命令形 ため

又、「だむ(訛)」も参照。

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附箋:四段 自動詞

最終更新:2025年02月16日 16:28