たり(助動詞イ)

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日本国語大辞典 助動詞 ( 活用は「たら・たり・たり・たる・たれ・たれ」(ラ変型活用)。体言に付く。格助詞「と」に動詞「あり」の接した「とあり」の変化した語 ) 断定の助動詞。事物の資格をはっきりとさし示す意を表わす。…である。 西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)七「現の閻羅の長姉たりと、常に青色の野蚕の衣を著たり」
歌舞伎・今源氏六十帖(1695)一「親たる人は殺さぬ」
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一「自(みづか)ら助くるの精神は、凡そ人たるもの、才智の由て生ずるところの根源なり」
[語誌]断定の「たり」は平安朝の和文にはほとんど例がなく、漢文訓読文にもっぱら用いられた。中世以後は和漢混交文、抄物などに現われるが、室町中期以後はまれになり、江戸時代にかけて「何たる」のような複合語の用例に限定されて行く。なお江戸前期の上方文学では、「何たる」のほかに「親たる人」のように、身分を表わす名詞に付くものがほとんどである。ただし明治以後の文語文にはまた例が見え始める。
広辞苑 助動詞 ➊(格助詞トにアリが付いたトアリの約)(活用はラ変型。付録「助動詞活用表」参照。連用形に「と」があり、中止法は「として」となる)
①体言に付いて、物事を指定する意を表す。…だ。…である。(平安時代から漢文訓読文系に見られるもので、物語文学には少ない。口語では、連用形「と」は副詞として扱われ、連体形だけが、重々しい調子の文に用いられる)
玄奘表啓平安初期点「経たる(みち)たる万里なれども」。
平家物語2「君、君たらずといへども、臣以て臣たらざるべからず」。
「教師たる者の心得が書いてある」
②状態を表す漢語に付いて、その状態にあることを示す。タリ活用形容動詞の語尾とすることもある。 平家物語10「北には青山峨々として、松吹く風索々たり」。
「百花爛漫たり」「堂々たる風格の書だ」
➋(テアリの約)(活用はラ変型。付録「助動詞活用表」参照)動詞型活用の語の連用形に付いて、ある動作がなされて、その結果が今もあることを示す。平安末期から、動詞に付いた場合は単にその事態があったことを表すだけになった。時の助動詞の中で、平安時代までは使い分けた「き」「けり」「つ」「ぬ」「り」が徐々に衰えて行き、「たり」だけが残って現代語の「た」になる。
①動作・作用が完了し、その結果が現在もある意を表す。…てある。…ている。…た。
万葉集17「 羽咋 (はくい)の海朝凪ぎしたり船楫もがも」。
竹取物語「門たたきて、くらもちの皇子おはしたりと告ぐ」。
天草本平家物語「重盛が首の刎ねられたらうずるを見て仕れ」。
歌舞伎、鳴神「生まれてはじめてのんだれば、腹の内がひつくり返る」
②動作・作用が確かにあったと認める意を表す。…た。 源氏物語若紫「さて心安くてしもえ置きたらじをや」。
天草本平家物語「あはれ、その人が亡びたらば、その国は明かうず」
大言海 助動詞 〔と、ありノ約〕
物事ヲ指シ定ムル意ヲ云フ助動詞。常ニ、名詞、又ハ、漢語ニノミ付ク。
論語、顏淵篇「君( タリ)、臣( タリ)
中庸、第廿六章「天之所(タル) 一レ 天」
詩經、大雅、蕩之什、常武篇「赫( タリ)、明( タリ)
同、周南、葛覃篇「維葉莫( タリ)
同、衞風、淇奧篇「 瑟兮 (タリ) 僩兮 (タリ)
十訓抄、下、可懇望事「古今ノ歌たるニヨリテ限アリ」
平家物語、二、烽火事「君君たらズト云ヘドモ、臣以テ臣たらズンバアルベカラズ、父父たらズトイフトモ、子以テ子たらズンバアルベカラズ」

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最終更新:2025年02月24日 14:39