たる(足)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ① 十分である。満ち整っている。不足がない。欠けたところがない。たりる。 古事記(712)中・歌謡「千葉の 葛野を見れば 百千(ももち)陀流(ダル) 家庭も見ゆ 国の秀も見ゆ」
落窪物語(10C後)四「かくたりて、あかぬ事なくよく仕うまつれば」
② 分に相応する。分にふさわしい。資格がある。また、価値がある。たりる。 源氏物語(1001‐14頃)松風「たをやぎたるけはひ、御子たちといはむにもたりぬべし」
花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二四「其の行状の端正なるは人の亀鑑と為すに足る」
③ 満足する。安心する。 万葉集(8C後)二・二二〇「天地 日月と共に 満(たり)行かむ 神の御面と」
④ 一定の数量に達する。また、長ずる。 万葉集(8C後)一六・三八四一「仏造る真朱(まそほ)足(たら)ずは水渟る池田の朝臣(あそ)が鼻の上を穿れ」
源氏物語(1001‐14頃)薄雲「やうやう御よはひたりおはしまして、何事もわきまへさせ給ふべき時に至りて」
⑤ 頭の働きがすぐれている。たりる。下に打消の語を伴って用いる。→たらぬ 慶長見聞集(1614)六「此者万にたらざりけるゆへ、皆人ばか山田と名をよべば」
広辞苑 自動詞 必要な範囲の量・程度に達している意。
①必要な数量がある。十分である。
万葉集16「仏造る 真朱 (まそほ)―・らずは水たまる池田の 朝臣 (あそ)が鼻の上をほれ」。
源氏物語若菜下「院の御よはひ―・り給ふ年なり」。
天草本平家物語「備中の瀬尾と備前の有木の別所の間は、わづかに五十町に―・らぬ所であれば」。
「努力が―・らぬ」
足る
②物事の状態が満ちととのう。満ち足りる。 万葉集2「天地日月と共に一・りゆかむ神の御面と」。
「―・ることを知る」
③するだけの価値がある。 源氏物語松風「いみじうなまめいて由ありたをやぎたるけはひ、 親王 (みこ)逹といはむにも―・りぬべし」。
徒然草「万事は皆非なり。言ふに―・らず、願ふに―・らず」。「一見するに―・る」「国民の代表というに―・る人物」
④(「―・らぬ」の形で)頭の働きが悪い。 鹿の子餅「日頃は―・らぬやつと思うてゐたが」
⑤間に合う。役に立つ。 「用が―・る」
大言海 自動詞 (一)十分ナリ。滿チ調フ。缺ケタルコト無クテアリ。不足ナシ。(タラ)フ。 源、十九、薄雲 廿四 「ヤウヤウ御ヨハヒたりオハシマシテ、何事モワキマヘサセ給フベキ時ニ至リ」
(二)其分際ニ堪フ。 源、十八、松風 十九 「タヲヤギタル 氣色 (ケハヒ)、御子タチト言ハムニモ足りヌベシ」
「用ヰルニ足る」
動詞活用表
未然形 たら ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 たり たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 たる べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 たる も、かも、こと、とき
已然形 たれ ども
命令形 たれ

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附箋:四段 自動詞

最終更新:2025年02月22日 18:00