たる(垂(自動詞イ))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ① 物の端が下にさがる。ぶらさがる。たれさがる。 源氏物語(1001‐14頃)末摘花「あさましう、高うのびらかにさきの方少したりて、色つきたる事」
② 血、汁、涙など、液状のものがしたたる。流れ落ちる。 万葉集(8C後)二〇・四四〇八「ちちのみの 父の命(みこと)は たくづのの 白鬚の上ゆ 涙多利(タリ) 嘆きのたばく」
徒然草(1331頃)五三「頸のまはりかけて血たり」
[語誌]( 1 )奈良時代には自動詞がラ行四段活用、他動詞がラ行下二段活用であったが、平安時代の用法は、「血たり」「鼻たり」のように、大部分が連用中止法に固定しているところから、すでにこの時代、四段活用には衰退のきざしが見える。
( 2 )のち、本来は他動詞である下二段活用が自・他兼用となる。これは同じ四段活用の「足る」との同音衝突を避けたためである。
( 3 )「浪花聞書」に「たる 水がたる、乳がたるなどいふ。江戸でたれるといふ也」とあるところから、上方方言では江戸時代末期まで四段活用が用いられていたことがわかる。
広辞苑 自動詞 (四段活用は奈良時代から鎌倉時代頃まで行われ、のち自動詞としても下二段活用が行われた)
①重みで下にだらりとさがる。ぶらさがる。
源氏物語蓬生「柳もいたう―・りて 築地 (ついじ)にもさはらねば」 垂る
②液状のものが筋をひいて、また、しずくになっておちる。 万葉集20「涙―・りなげきのたばく」
③力が失せてぐったりする。へなへなとなる。 今昔物語集16「その人歩びこうじてただ―・りに―・り居たるを見れば」
大言海 自動詞 (一)物ノ端、下ヘオモムク。サガル。ブラサガル。 萬葉集、五長歌「紅ノ、(オモテ)ノ上ニ、イヅクユカ、(シワ)カキ垂りシ、マスラヲノ」
源、六、末摘花 廿五 「御鼻、云云、サキノ方スコシたりテ色ヅキタル」
(二)滴ル。 夫木抄、廿六、井「我袖ノ、(シヅク)ニイカガ、比ベ見ム、マレニたる井ノ、水ノスクナキ」
萬葉集、廿 三十七 長歌「父ノミコトハ、タクヅヌノ、白髭ノ上ユ、淚多利」
動詞活用表
未然形 たら ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 たり たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 たる べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 たる も、かも、こと、とき
已然形 たれ ども
命令形 たれ

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附箋:四段 自動詞

最終更新:2025年02月22日 18:05