辞書 | 品詞 | 解説 | 例文 | 漢字 |
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日本国語大辞典 | 助詞 |
〘副助〙 体言または体言に準ずるもの、およびそれらに助詞の付いたもの、副詞などを受ける。 ① 期待される最小限のものごと・状態を指示する。従って「だに」を含む句の述語は、命令・意志・願望・仮定あるいは否定・反語である事がほとんどである。せめて…だけでも。→語誌( 1 )( 2 )。 |
日本書紀(720)皇極二年一〇月・歌謡「岩の上に 小猿米焼く 米多儞(タニ)も 食(た)げて通らせ 山羊(かましし)の老翁(をぢ)」 万葉集(8C後)四・六六一「恋ひ恋ひて逢へる時谷(だに)うつくしき言(こと)つくしてよ長くと思はば」 |
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② 程度の甚だしい一事(軽重いずれの方向にも)を挙げて他を類推させる。類推される事柄が、「況や・まして」の語に導かれて示される場合もある。本来は「すら」の用法であったが、中古以後「すら」を圧倒する。…さえ。…までも。→語誌( 3 )( 4 )。 |
万葉集(8C後)四・五三七「言清くいたくもな言ひ一日(ひとひ)太爾(ダニ)君いし無くはあへかたきかも」 古今和歌集(905‐914)春下・一〇六「吹く風を鳴きて恨みよ鶯は我やは花に手だにふれたる〈よみ人しらず〉」 |
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[語誌]( 1 )①の否定・反語の表現に用いられた場合は「(せめて…だけでもと願っているのに、その)…さえも…せぬ」の意で、最小限の期待・希望が前提となっているが、その前提は言外に隠れ、「…さえも…せぬ」の意が前面に現われている。ここに、②へと転ずる契機がある。 ( 2 )上代においてはこの①が用法の主流であるが、中世以後は殆ど用いられなくなり、「さえ」がこれに代る。 ( 3 )②は上代にも「万葉集」に見えるが、わずかである。 ( 4 )中世前期において②は用法の主流を占めていたが、中世後期に至り、急速に勢力を失い、「さえ」に取ってかわられる。 ( 5 )語源については、「唯それ一つだけ」の意を表わす「唯に」の約とする説〔改撰標準日本文法=松下大三郎〕、「直に」の約音とする説〔万葉考・広日本文典別記=大槻文彦〕、デアルニの義とする説〔名言通〕などがある。 |
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広辞苑 | 助詞 |
(係助詞)今おかれている状態においてなしうる最小限のこと、あるいは可能性の考えうる範囲での最小限のことをあげ示して、他の重い事柄について類推させる語。体言およびそれに準ずる語、副詞、格助詞などを受ける。奈良時代には、否定・推量・仮定・反語・命令・意志・願望などの表現に呼応した。室町時代に「さへ」が代わった。 ①否定・反語との呼応。…だけでも。…すら。 |
天智紀「臣の子の八重の紐解く一重―いまだ解かねばみこの紐解く」。 万葉集2「玉桙の道―知らず」。 天草本平家物語「胸せきふさがつて、お箸を―も立てられなんだ」 |
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②推量・仮定との呼応。…ですらも。…だって。 |
万葉集10「恋しけく日長きものを逢ふべかる |
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③願望・意志・命令との呼応。せめて…だけでも。…なりと。 |
万葉集10「い向ひ立ちて恋ふらむに言―告げむ妻問ふまでは」。 万葉集12「人の見て言とがめせぬ夢に―やまず見えこそ」。 伊勢物語「馬のはなむけを―せむとて」 |
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④主に平安時代から、肯定判断の文にも用いられる。…さえも。…でも。 |
源氏物語帚木「はかなきこと―かくこそ侍れ。まして人の心の時にあたりて気色ばめらん」。 天草本平家物語「出さるる―あるに、座敷をさへ下げらるる事の恨めしさよ」 |
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⑤仮定策件と呼応。それだけで条件が満たされる意を示す。…さえ。曾我物語4「あはれ、父―ましまさば、わらはに心は尽くさせじ」 | ||||
大言海 | 天爾遠波 |
〔安齋隨筆、十二「だにト云フハ、ただにト云フヲ略シタルナリ、唯ノ字等ナリ」〕 第二類ノ天爾波。輕キヲ擧ゲテ、餘ノ重キヲ言外ニ引證スル意ノ語。(さへハ多キニツキテ、ソレガ上ニ添フルモノ、だにハ少キヲアゲテ、示スモノ)デモ。ナリトモ。 |
竹取物語「其 古今集、一、春、上「深山ニハ、松ノ雪だに、消エナクニ、都ハ野邊ノ、若菜ツミケリ」 新古今集、十二、戀、二「憂キ身ヲバ、我だに厭フ、厭ヘタダ、 |
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