ちる

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ① はなればなれになって落ちたり、飛んだりする。特に、花や葉が草木から離れ去る。 万葉集(8C後)五・七九八「妹が見し楝(あふち)の花は知利(チリ)ぬべしわが泣く涙いまだ干(ひ)なくに」
② あちこちに、はなればなれになる。ちらばる 枕草子(10C終)一八四「殿まゐらせ給ふなりとて、ちりたるものとりやりなどするに」
③ わかれわかれに立ち去る。 今昔物語集(1120頃か)二七「打蒔の米を多らかに掻爴(かきつかみ)て打投たりければ、此の渡る者共散(さ)と散(ちり)て失にけり」
④ 世間に広まって知れる。外にもれ伝わる。 枕草子(10C終)一三七「見ぐるしきことちるがわびしければ、御文はいみじう隠して、人につゆ見せ侍らず」
⑤ あれこれと気が移って落ち着かなくなる。気持が集中できなくなる。 源氏物語(1001‐14頃)若菜下「色々目うつろひ心ちりて」
雪国(1935‐47)〈川端康成〉「あたりが騒々しいから、気が散るのね」
⑥ 酒が杯からこぼれる。 滑稽本・酩酊気質(1806)上「オートトトトトちりますちります」
⑦ 墨やインクなどがにじんでひろがる。
⑧ 雲、霧などがうすれて消える。
⑨ ( ①の比喩的用法 ) いさぎよく死ぬ。多く戦死することをいう。 滝口入道(1894)〈高山樗牛〉二七「盛りの花と人に惜しまれ、世に歌はれて、春の真中に散りにし人の羨まるる哉」
広辞苑 自動詞 一つのものとして秩序のあるものが、ばらばらの細かい破片になる意。
①離れ離れになって落ちる。断片となって方々に飛ぶ。ちらばる
万葉集5「妹が見し(おうち)の花は―・りぬべし」。
源氏物語藤裏葉「ありつる御手習どもの―・りたるを御覧じつけて」
散る
②ちりぢりに別れ去る。離散する。 源氏物語蓬生「さてありぬべき人々は、おのづから参りつきてありしを、みな次々にしたがひて行き―・りぬ」。
今昔物語集27「この渡る者どもさと―・りて失せにけり」。
「群衆は三々五々―・っていった」
③(心が)まとまらない。おちつかない。 源氏物語若菜下「いろいろ目移ろひ心―・りて限りこそ侍れ」。
「気が―・る」
④世間に知れわたる。外へ漏れきこえる。 源氏物語梅枝「同じ法こそはいづくにも―・りつつ広ごるべかめるを」
⑤酒が杯からこぼれる。 滑稽本、七偏人「此度は手じやくでやらう。ああ―・ります―・ります」
⑥にじみひろがる。また、あたりにひろがり、薄れて消える。 「紙が悪くてインクが―・る」「霧が―・る」「痛みが―・る」
⑦(比喩的に)人がいさぎよく死ぬ。多く、戦死にいう。 「戦いに―・った友をしのぶ」
大言海 自動詞 (一){別レ行ク。離レ去ル。バラバラニナル。 源、十四、澪標 廿三 「スベテ見シ人人、ヒキカヘ、花ヤカニ何事オモフラムト見エテ、打チちりタルニ」
「人散る」
(二){落チ亂レ飛ブ。 萬葉集、三 四十二 「梅ノ花、サキテ()りヌト、人ハイヘド、ワガシメ結ヒシ、枝ナラメヤモ」
「花散る」紅葉散る」
(三){亂レテアリ。チラバル。(調度ナド)散亂 枕草子、九、九十一段「殿マヰラセ給フナリトテ、ちりタルモノドモ、取リヤリナドス」
(四){外ヘ漏レ聞ユ。 源、二、帚木 四十七 「心ヨリ外ニちりモセバ、輕輕シキ名サヘ取添ヘム」
(五)(ニジ)ミヒロガル。 「墨ガ散る」
(六)頭ヘ逆上ス。(血ニ云フ)ちりけ(身柱)ノ條ヲ見ヨ。
動詞活用表
未然形 ちら ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 ちり たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 ちる べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 ちる も、かも、こと、とき
已然形 ちれ ども
命令形 ちれ

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附箋:四段 自動詞

最終更新:2025年03月08日 15:57